2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H00897
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
侯 召民 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (10261158)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 希土類触媒 / スカンジウム / C-H結合活性化 / ヒドリドクラスター / 有機金属化学 / 高分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、優れた物性や新機能を持つ高分子材料の合成や高効率な物質変換反応を目指して、希土類や4族金属錯体の特異な性質を利用した高活性、高選択的な錯体触媒の開発を行っている。本年度は、スカンジウム触媒を用いることにより、エーテルユニットやチオエーテルユニットを有する1,6ヘプタジエン類の重合を行ったところ、エチレンシクロペンタン骨格を有するポリマーが高いイソタクチック選択性(95%mmm)で得られ、位置および立体選択的な環化重合を初めて達成した。スカンジウム錯体触媒を用いて、1,1-二置換アルケンユニットを有するイミダゾール類を反応させることにより、エキソ選択的に分子内C-Hアルキル化反応が進行し、4置換炭素の構築を初めて達成した。また、キラルハーフサンドイッチ型スカンジウム触媒を用いることにより、不斉環化反応に成功した。PNP3座配位子を有するチタンアルキル錯体は、窒素と水素の混合ガスと速やかに反応し、窒素、ヒドリド配位子を有するチタン二核錯体が生成することを見出した。この錯体は、水素や他の還元剤を加えることなく、N2結合の切断と水素化反応が進行することが明らかとなった。さらに、この窒素ヒドリド錯体にトリメチルアルミニウムを反応させると、脱水素反応とともに、N2結合が切断され、二つのアルミニウムと2つのニトリド配位子からなる4員環メタラサイクルユニットが構築されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
)本研究では、スカンジウム触媒系を用いることにより、エーテルやチオエーテル官能基を有する1,6-ヘプタジエン類の位置および立体選択的な環化重合を初めて達成した。また、キラルハーフサンドイッチ型スカンジウム錯体触媒を用いて、1,1-二置換アルケンユニットを有するイミダゾール類を反応させることにより、エキソ選択的な不斉分子内C-Hアルキル化反応に初めて成功した。さらに、PNP配位子を有する窒素/ジヒドリドチタン錯体は、ほかの還元剤なしで、N2結合の切断と水素化が進行することが明らかとなった。 以上のように、立体選択的なヘプタジエンの環化重合やチタン二核窒素錯体の多様な反応性など、当初の目標を上回る成果を得ることができ、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、応募者の独自の知見に基づき、希土類元素の特性を最大限に活用した新規錯体触媒を開発するとともに、それらを基盤として、従来では実現困難であった、高効率・高選択的な有機合成反応や精密重合反応の開発、新機能性材料の創製などを行い、物質創製化学の新領域開拓や技術革新を目指す。具体的には、希土類錯体触媒の特性を生かしたC-H結合の活性化と不斉変換や機能性ポリマー創製への活用、希土類金属中心とヘテロ原子との相互作用特性を生かした極性オレフィンと非極性オレフィンとの精密共重合反応の開発と新規機能性ポリマーの創製など、触媒の設計・合成から、新反応・新機能性材料の開発まで一括して統合的に研究を進める。
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Research Products
(42 results)