2019 Fiscal Year Annual Research Report
Liquid-crystalline nano space as novel reaction fields
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19H00902
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 健太郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40281589)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ空間 / 液晶 / 反応場 / 超分子 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、液晶の中に構築したナノ空間を利用した、今までに例を見ない反応場を構築すること、その反応場を利用し、精密選択的合成、新規機能性材料合成、分子・イオン輸送反応を行うこと、また液晶への外部刺激による反応制御、ナノ空間内反応によるマクロ材料特性の変換を行うことを目的としてる。まず、反応場となるナノ空間を内包する液晶物質のデザインを拡張するために、大環状液晶分子の新規合成法を確立した。共有結合型の液晶性大環状化合物は、安定な分子骨格を持つ。一方、環状分子骨格の形成手段として自己組織的な可逆的な結合に基づく自由度を与えることにより、分子デザインの幅が広がり、ナノ空間形成の多様性を得ることができる。そこで環構造形性に適したビスバイデンテート骨格の金属配位子と平面四配位型金属イオンにより形成される大環状化合物による液晶の構築を行った。自己組織型環状物質をメソゲンとしたカラムナー液晶の組織構造を明らかにした例をはじめて論文として報告した。一方、25 nmの内孔を持つ共有結合型の液晶性巨大大環状化合物が、ナノ空間での反応を触媒することが期待されるポルフィリンを内包できることを明らかにした。ポルフィリンは、触媒としてだけでなく、様々な金属イオンとの錯体を形成することで、磁性などの機能を持つことができる。本研究では、ソフトマテリアルの中に、ポルフィリン金属錯体を組織化させることにも成功した。一方、ナノ空間内での新規有用反応への展開を見据え、ポルフィリン類を触媒として用いるための検討も行い、酸化触媒としての高い有用性を見出すことに成功した。これらの成果は、論文や国際会議における招待講演において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究構想は、液晶性のナノ空間の多様性の拡張、ナノ空間の特異性に根ざした新しい反応の創出・制御法の確立、反応と連動したソフトマテリアルとしての機能の創出の各段階を達成することにある。初年度目は、新規液晶性分子の合成法を見出すことにより第一段階目の検討を行った。また、ナノ空間内反応の基点となる内包分子との結合性およびその特異的な触媒活性の評価を行うことにより、第二段階目の検討項目についても手がけることができた。よって、研究は、順調に進捗していると考える事ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
溶媒に反応性溶質が無配向に溶解することとは異なり、カラム方向に沿った一次元的な空間内で内包された分子は配向整列化されるため、立体規則性重合やイオン輸送など、それにもとづいた分子間反応が起こることが期待できる。多孔性固体とは異なり、流動性やダイナミックな相転移性を示すため、反応前に系を任意に流動配向させたり、反応後に液晶マトリックスと合わせて生成物を配向化することも可能である。また、温度による液晶-結晶相転移によって配向構造の固定化や、液晶-等方性液体相転移によって配向構造のリセットをすることも期待できる。これらが、本研究で開発を目指す、液晶性ナノ空間内に構築する新奇反応場の特徴である。そこで、引き続き反応場となる液晶性大環状化合物のライブラリー拡張を行う。既に、複数多種類の大環状化合物を液晶化することで確立した方法論を基に、それらの骨格構造をベースに官能基修飾することで効率的に研究に資する。液晶性大環状化合物の分子設計として、二種類の機能部位、平面性大環状部位と外側に伸びる側鎖によって構成されている。これらを適切に選択することで、目的に最適なナノ空間を合成する。次に、ナノ空間内での機能性小分子の包接による異方的配列化を検討する。磁性金属錯体の配列化による磁気特性の発現を達成させると共に、イオン伝導性材料の創製を行う。、本液晶性ナノ空間は、前述の通り、液晶相の相転移によって内部環境を変換することが出来るため、相転移を介した反応スイッチングを制御できると考えられる。よって、機能の動的スイッチング特性開発を行う。
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Research Products
(8 results)