2019 Fiscal Year Annual Research Report
多核クラスター錯体を用いた小分子変換のための学理創出
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19H00903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
正岡 重行 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20404048)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 錯体化学 / 多核金属錯体 / 電子移動反応 / 小分子変換 / 多電子酸化還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高効率かつ高選択的に多電子酸化還元反応を進行させることが可能な革新的な触媒の創出に取り組む。生体酵素の活性中心の構造ならびに申請者のこれまでの研究(Nature, 2016 等)から得た着想に従い,「多電子移動能」と「結合組み換え能」を併せ持つ多核クラスター錯体を研究開発の中心に据える。金属イオンの種類・数ならびに配位子の電子構造が異なる多様な多核クラスター錯体を合成し,様々な多電子酸化還元反応に対する触媒機能を評価する。更に,触媒反応機構を反応中間体の電子状態まで深く分析・考察し,触媒能の向上に向けた分子設計指針を得ることで触媒の構造最適化へと繋げる。以上の研究により得られた知見を基に,多電子酸化還元を伴う小分子変換反応を自在に操ることが可能な触媒を創出するための指導原理の確立を目指すこととした。 本年度は,「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する新規多核クラスター錯体の自在合成手法の確立を行った。まず,単一種類の金属イオンを用いて,有機架橋配位子と反応させることにより,様々な多核クラスター錯体を網羅的に合成した。得られた多核クラスター錯体は元素分析,エレクトロスプレーイオン化質量分析,単結晶X線構造解析により同定した。また,複数種の金属イオンを含む多核クラスター錯体の合成についても検討した。合成に当たっては,構造内での金属イオンのスクランブリングを抑制する為,段階的な合成法を駆使した。これらの異種金属多核クラスター錯体はいずれも単一種金属多核クラスター錯体と同様の手法で同定し,構造並びに金属イオン配置を確認した。以上の研究の遂行により,「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する種々の多核クラスター錯体の合理的な合成手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する新規多核クラスター錯体の自在合成手法の確立を目指し、研究を展開した。まず,単一種類の金属イオンを用いて,有機架橋配位子と反応させることにより,様々な多核クラスター錯体の合成に成功した。また,段階的な錯形成手法を用いることで複数種の金属イオンを含む多核クラスター錯体の合成にも成功した。したがって、「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する種々の多核クラスター錯体の合理的な合成手法を確立したと言えることから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、これまでに「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する種々の多核クラスター錯体の合理的に合成する手法の確立に成功した。そこで今後は、これら得られた多核クラスター錯体の物性探索に焦点を当てた研究を展開する。特に錯体の多電子酸化還元反応に対する触媒能ならびに多電子移動に立脚した新規機能性材料の開発に注力することを目標とする。より具体的には触媒反応としては、遍在小分子を活用した有用化合物合成反応の創出をターゲットとし、機能性材料の開発に当たっては、光あるいは電気化学刺激をトリガーとする分子認識材料の創製に注力する予定である。
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Research Products
(8 results)