2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of supramolecular organic semiconductors
Project/Area Number |
19H00906
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀧宮 和男 東北大学, 理学研究科, 教授 (40263735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Bulgarevich Kirill 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (60880268)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 結晶構造制御 / 超分子化 / 有機熱電変換材料 / 有機太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
①従来のヘリンボーン構造に加え、今年度は新たに一次元π積層型や二量化ヘリンボーン型構造など、異なる母構造を有する有機半導体系で結晶構造制御を試みた。その結果、前者からは新規な二量化傾斜型π積層構造が、また後者からはレンガ積み型構造が出現することを見出した。後者の有機半導体の単結晶トランジスタで30cm2/Vsを超える超高移動度が実現でき、5V以下の低電圧駆動も可能であったことから、この材料が極めて優れた有機半導体であることを実証できた。 ②昨年度確立した高光学純度の2-エチルヘキシル基の化学を独自の高移動度半導体骨格であるDNTTに適用することで単結晶を得ることに成功した。結晶構造中でかさ高い2-エチルヘキシルは折畳み構造を持ち規則的に充填することにより、 DNTT誘導体に特徴的なヘリンボーン構造を維持できることが分かった。一方、光学活性体を用い蒸着法やスピンコート法より作製した薄膜のX線回折の結果は、ラセミ体と大きな変化はなく単結晶中と微妙に異なる構造であることも分かった。即ち、薄膜作製のような核形成律速の成膜法はアルキル基の立体効果が限定的である一方、溶液からの結晶化のような熱力学的過程ではアルキル基が重要な役割を果たすことを示している。 ③昨年度に引き続き、チオフェン縮合サブフタロシアニンの構造および光学異性体の構造解析を行い、ラセミ体では多形が存在する一方で光学活性体は対称性により構造が異なることを確認した。これらの変化は、分子周辺部の構造の違いにより分子配列が影響を受けることが原因であると考えられる。 ④NDTI骨格を有するn型半導体ポリマーの熱電材料への展開では、最適化により非常に高い特性を得ることに成功した。また、この部分構造を持つn型オリゴマー分子合成、更に新規な電子ドーパント分子の開発を行いこれらの組み合わせによる、分子間相互作用を最適化するための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始時当初計画していた以下の項目、 1) 多様な有機半導体骨格への位置選択的置換基導入による結晶構造制御と超高移動度材料の発見、2) 光学活性エチルヘキシル基を導入した有機半導体の評価による、光学活性置換基の効果の検証、3) ボウル型構造をもつ有機半導体分子の分子集合体形成における異性体の影響4) 有機熱電材料開発の進展について、上記のように化合物合成と解析、デバイス応用などについて成果を得た。これらに加え、新たな高効率単結晶育成法の開発と得られた結晶をシームレスに構造解析、単結晶トランジスタによる輸送特性評価に結びつける方法を確立できている。 さらに構造解析情報を利用し分子間相互作用の解析、移動積分計算、バンド計算にも展開できており、構造物性相関を詳細に解析できる体制を立ち上げており、これらは十分な進捗であると考えている。中でも超高移動度有機半導体の発見は、従来の有機半導体材料の中でも出色の特性であり、今後の分子設計やデバイス研究に大きな影響を与えると考えている。これらの成果と進捗状況を総合的に判断し、研究は予定以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の目標は以下の通りである。 これまで、1)分子性有機半導体の結晶構造制御と高移動度化合物の探索、2)分岐アルキル基やポリエーテル基の導入による分子集合体構造への影響、3) 非平面有機半導体の開発、4) n型低分子半導体の開発と応用の四点に重点を置き研究を進めてきた。1)では、移動度が30 cm2/Vsを超える材料を見出すとともに、構造解析や単結晶トランジスタに適した結晶を与える新規な育成法も確立しつつある。今年度はこれらの発展と並行して、分子動力学を導入し分子間相互作用、軌道間相互作用、さらに分子のダイナミクスを考慮し材料評価を取り入れた研究展開を目指す。具体的には以下の項目について検討を進める。 1)構造制御の母体として用いる半導体骨格と導入する置換基を広げ、結晶構造制御の一般性を検討する。また、相対位置の異なる仮想的な二量体モデルを用いて分子間相互作用と分子軌道の重なりを二次元マッピングし、これらの相対的な関係から高移動度半導体のための望ましい分子を探索する。2) 高光学純度2-エチルヘキシル基の有機半導体への簡便導入法を活用し、導入数による影響を検証する。またポリエーテル基では、BTBT骨格上への導入数により結晶性への影響がm明確になった為、今年度は半導体骨格を変化させ新規材料を開発する。3) 結晶構造の異なるチオフェン縮合サブフタロシアニンの異性体が物性に与える影響を検討する。また、他のヘテロ環が縮合した分子の合成を検討しボウルの深さや周辺ヘテロ原子がもたらす影響を明らかにする。4) n型低分子半導体開発のための合理的骨格構築プロトコルが確立できたので、溶解性置換基、π電子系骨格を系統的に変化させ、分子集合体での構造と分子構造の関連を検証しつつ、太陽電池、熱電変換材料へと応用する。これに加え、今年度開発したn型ドーパントとの組み合わせにより物性の改善を目指す。
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Research Products
(12 results)