2019 Fiscal Year Annual Research Report
生分解開始機能を有し、生分解速度も制御された高性能バイオマスプラスチックの創製
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19H00908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 忠久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30281661)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生分解性プラスチック / ポリ乳酸 / 高分子多糖類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生分解性プラスチックに焦点を当て、使用中は分解せず、廃棄されたときに分解が開始する「生分解性開始機能」の付与と、「生分解性の速度を自在にコントロール」するための構造的因子の解明と材料設計を行うことを目的とした。 (1)「生分解開始機能付与」に関する研究として、酵素内包生分解性プラスチックの創製を行った。ポリ乳酸は通常の環境である土壌や河川水などでは分解せず、コンポストの条件下でのみ分解する。これは自然環境中にポリ乳酸を分解する微生物(および分泌する分解酵素)が存在しないからである。そこでポリ乳酸に、ポリ乳酸を分解する能力を有するカビ由来のアラニン分解酵素であるProteinase-Kをポリ乳酸内部に包埋させた分解酵素内包ポリ乳酸を創製した。その際、溶融混錬法により材料成形を行うことを想定し、あらかじめProteinase-Kを高分子樹脂に包埋し、耐熱性をあげることを検討した。その結果、ポリ乳酸の溶融温度である約200℃で10分間処理しても失活しない固定化酵素の開発に成功した。この固定化酵素をポリ乳酸内部に熱混錬内包させ、分解実験を行ったところ、約20日間で約15%近く分解させられることがわかった。 (2)「生分解性の速度の制御」に関する研究として、高分子多糖類エステル誘導体の脱エステル化に着目した材料設計を行った。多糖類は、分子鎖中に存在する水酸基をエステル基などで化学修飾することにより熱可塑性を発現するが、化学修飾の割合が増すと置換基の立体障害により生分解性が消失する。しかし、化学修飾されたエステル基を、塩基やアルカリなどにより脱離させれば、再度生分解性は復活する。今年度は、予備実験として様々な置換度を有する多糖類エステル誘導体を合成し、環境水を用いたBOD試験を行った。その結果、置換度により生分解性の速度がコントロールできることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生分解性開始機能の開発として試みた酵素内包生分解性プラスチックの開発については、本当に熱に強い酵素が作れるかどうかが最大のポイントであった。今年度、高分子樹脂に酵素を固定化することにより耐熱性に優れた酵素を開発することができ、当初考えていた計画をはるかに超える成果を得ることができるとともに、今後の発展性に寄与できる様々な基礎的知見を得すことができた
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Strategy for Future Research Activity |
「生分解性開始機能」については、ポリ乳酸以外に他の生分解性プラスチックと分解酵素を用いて、様々な酵素内包生分解性プラスチックを検討する。さらに、pHスイッチなどを検討する。一方、「生分解性速度の制御」については、結晶の配列を中心とした高次構造に焦点を当て、研究を遂行する。
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Research Products
(6 results)