2019 Fiscal Year Annual Research Report
リピート配列を特異的に化学修飾するリピート結合分子の創成
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19H00924
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 和彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (70237303)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リピート / 結合分子 / 異常伸長 / 短縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、異常伸長した(CXG)nリピート の短縮誘導を加速する新規リピート結合分子の開発を目的として、異常伸長リピートに特異的に結合し、リピート配列が形成す るヘアピン内のシトシンをウラシルへ化学的に変換する反応を加速する分子の創成を目指している。 2019年度は、1)求電子性置換基を有するリピート結合分子の合成と 2)NA-epoを用いたCAGリピートのシトシンN3位アルキル化反応を計画した。計画1)の予備的な研究として、リピート結合分子にCGGリピートに結合するNCDを選び、NCD結合部位近傍での化学反応の加速効果を、ビピリジンー四酸化オスミウムによる酸化反応で検討した。NCDにビピリジン環を共有結合により結合させたNCD-Bpyを合成し、CGG/CGG, 5mCGG/CGG, TGG/CGG等に結合することを確認した後に、四酸化オスミウム存在化でのフリップアウトしたシトシン、5mシトシン、チミンの酸化反応をHPLCにより追跡した。その結果、NCD-Bpyはこれらの配列に結合することを確認するとともに、四酸化オスミウム存在化に、TGG/CGG配列のフリップアウトしたTを速やかにチミングリコールに酸化した。チミングリコールの生成は、チミングリコールを含むオリゴマーをピペリジン存在下に加熱して、DNA鎖を切断したのち、末端のリン酸基をアルカリフォスファターゼ処理により除いた後に、質量分析ならびに標品のオリゴマーとの比較により確認した。一方、シトシンや5-メチルシトシンでは、酸化反応は非常に遅く、酸化生成物を確認することはできなかった。これにより、NCDの結合によりフリップアウトした塩基が、近傍の反応剤との反応が加速されていることを明らかにした。この結果に基づいて、フリップアウトしたシトシンをアルキル化するエポキシを有するNCD-epoxyの合成を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に示したとおり、NCD-epoxyの合成に着手し、化合物の合成はほぼ達成されている。細かい合成プロセス、化学収率の改善、向上などの課題は、今後鋭意検討する予定である。合成により入手された少量のNCD-epoxyを用いて、その化合物自身の化学的安定性を評価したところ、反応性の高いエポキシ基を有すること、また、エポキシ基と三級アミノ基との距離(原子数1)であることなどから、化合物自身が非常に化学反応性が高く安定性が低いことが明らかとなった。実際に、DNA二本鎖との反応もパイロット的に検討したところ、pH7.0のバッファー溶液中の化合物自身の分解半減期の間に、標的のCGG/CGG配列との化学反応が生じた可能性は低い可能性が示唆されている。pH条件などによる影響を引き続き検討するとともに、化学的不安定性の原因解明を行っている。考えられる原因は、三級アミンによるエポキシ基の求核攻撃であると推測される。当初この三級アミノ基については、生理的条件においてプロトン付加を受けてアンモニウム塩となっているため、求核性は喪失していると考えていたが、分子内の求核的エポキシ基の開環反応が進行している可能性がある。現在、この対応を検討している。研究計画が予定より遅れている理由として、新型コロナウイルス感染拡大による研究室の閉鎖期間があったことなども影響していることは否定できない。
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Strategy for Future Research Activity |
1)NCD-epoxyの合成法確立と化学反応性の検証 NCD-epoxyの合成ルートを完成させ、NCD-epoxyの化学的反応性を明らかにする。すでに、自己分解反応がかなり早いことがパイロット実験によりわかってきているところであるが、純度の高いNCD-epoxyを比較的大量に合成し、自己分解半減期のpH依存性や標的DNAの存在による半減期への影響、自己分解物などを確認し、化学的不安定性の理由を明らかにする 2)化学的不安定性に及ぼす、epoxy基とNCDの三級アミノ基の原子数の考察 第1世代のNCD-epoxyでは原子数1しか、窒素原子とエポキシ基が離れていなかったため自己分解反応が進行した可能性があるため、原子数を徐々に増やした第二世代のNCD-epoxyの設計と合成を検討する。そのために、まず、epoxy基とフリップアウトしたシトシン、もしくは結合部位に存在するグアニンとの反応の可能性が向上するかどうかを推定するために、シトシンの3位窒素、もしくはグアニンの7位窒素との付加反応の遷移状態を、量子化学計算もしくは分子力学、分子動力学計算を用いて導出し、原子数を変化察せた場合、その遷移状態を対シトシン、グアニンで取りうるかどうかをシミュレーションする。原子数を増やした場合、遷移状態に近い角度での衝突確率が減少することが予想されるため、逆にエポキシ基の化学反応性を上昇させる必要も考えられる。その際には、エポキシ基に対する求核攻撃を加速させるために、ビニル基やアリル基の導入を第二世代分子に対して検討を行う。 3)1,2)の計画のバックアップとして、リピート結合分子に求電子剤を直接結合させるのではなく、生体内での酵素反応とリピート結合分子の組み合わせによる、リピート結合分子結合近傍における塩基の化学修飾、切断反応についても、文献調査をすすめる。
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