2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rational control of gene expressions by chemically regulating topologies of nucleic acid structures
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19H00928
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
杉本 直己 甲南大学, 先端生命工学研究所, 教授 (60206430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
建石 寿枝 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (20593495)
高橋 俊太郎 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (40456257)
遠藤 玉樹 甲南大学, 先端生命工学研究所, 准教授 (90550236)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子環境 / 核酸構造 / トポロジー / 遺伝子発現制御 / 人工分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、核酸構造の幾何学的特徴が遺伝子発現に与える影響を化学的かつ定量的手法を用いて解明し、遺伝子発現制御に関する新たな概念として核酸構造の多次元性(Structural Multidimensionality of Polynucleotides; SMPs)を提唱する。 本年度は、核酸トポロジーによる遺伝子発現制御メカニズムを 【知る】研究を中心に進めた。 1) 分子クラウディング実験系を活用した細胞外での定量的解析: 分子クラウディング環境でDNA二重鎖の安定性を網羅的に解析し、二重らせん構造の熱安定性が最近接塩基対モデルに従うことを見出した(Nucleic Acids Res., 23, 3284 (2019))。また、グアニン四重らせん構造のトポロジー、あるいはカチオン濃度と三重らせん構造の安定性の相関に対する、共存溶質の化学構造による影響を明らかにした(Biochem. Biophys. Res. Commun, 525, 177 (2020)、J. Phys. Chem. B., 123, 7687 (2019)、Molecules, 25, 387 (2020))。 2) 核酸トポロジー依存的な遺伝子発現反応の定量的解析: 複製反応では、i-motif構造の熱安定性に依存したDNAの鎖伸長反応の速度定数との相関を明らかにし(Sci. Rep., 10, 2504 (2020))、鎖伸長反応の定量的な解析の方法論をまとめた(Methods Mol. Biol., Springer, 2035, 257 (2019))。翻訳反応に関しては、転写反応途中に形成される準安定な二次構造が、グアニン四重らせん構造への遷移を妨げることで翻訳反応が滞ることなく進行することを大腸菌内で明らかにした(Molecules, 24, 1613 (2019))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、1.核酸トポロジーによる遺伝子発現制御メカニズムを【知る】、2.核酸トポロジーに起因する遺伝子発現の調節を分子レベルで【見る】、3.細胞レベルで核酸トポロジーを化学的制御に【活かす】、という研究課題を段階的に遂行していくことを3年間の研究期間で計画している。本年度(初年度)は、【知る】研究を中心に進めてきたが、【見る】研究、【活かす】研究に関連する研究成果も得つつある。 i-motif構造の熱安定性に依存したDNAの鎖伸長反応の速度定数との相関を明らかにした研究では、植物フラボノールの一種(フィセチン)が、i-motif構造に相互作用してヘアピン構造のような構造に変化させつつその蛍光シグナルを増強させることを見出した。また、i-motif構造によるDNA鎖伸長反応の停滞を緩和させたことから、i-motifのトポロジー変化と複製反応との相関を可視化しつつ、複製反応を制御できる可能性を示した。また、細胞内で核酸トポロジーを可視化する技術に応用することを目的に、蛍光分子に結合してそのシグナルを増強するRNAアプタマーの取得を細胞内の分子クラウディング環境で行った。その結果、得られたRNAが分子クラウディング環境下で標的分子との親和性を上昇させることが明らかとなった(Small, 15, 1805062 (2019))。 以上のように、一部計画を前倒しした研究成果も得られてきていることから、本研究は当初の計画以上に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、「核酸トポロジーによる遺伝子発現制御メカニズムを 【知る】研究」に加え、「核酸トポロジーに起因する遺伝子発現の調節を分子レベルで【見る】研究」、「細胞レベルで核酸トポロジーを化学的制御に【活かす】研究」を遂行していく。 次年度は、以下で記す【見る】研究を中心的に遂行する。 1)分子環境変化による核酸トポロジーの時空間的な変化の観測: 分子環境変化や分子間の相互作用に対して異なるトポロジーを示すDNA、RNAを利用し、複数の核酸プローブを作製する。主にはDNAやRNAを蛍光 分子で修飾し、それぞれのプローブが示す蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のパターンを、共焦点顕微鏡を用いて細胞内で解析する。さらに、開発したプローブ分子を細胞内の小器官等へ選択的に移行させ、核やミトコンドリアといった細胞局所的な核酸トポロジーの解析も試みる。 2)核酸トポロジーに依存した遺伝子の発現変動の解析: 初年度に遂行した「知る」研究による成果に基づき、分子環境に応答して異なる核酸トポロジーを形成すると思われる細胞内在性の遺伝子領域を選定する。これらの領域を有するレポーター遺伝子を構築し、細胞内での遺伝子発現を評価する。酸化刺激、低酸素刺激、シグナル伝達 分子や各種イオンチャネル阻害剤の添加などで細胞の分子環境変化を誘導し、その後の遺伝子発現の変動を定量的に解析する。また、分子環境変化を誘導した細胞のトランスクリプトーム解析を行い、変動を示した遺伝子群から分子環境に応答して核酸トポロジーを変化させる領域の探索を行う。これらの研究により、環境に応答した遺伝子の発現変動を個別遺伝子の定量的解析とゲノムワイドな網羅的解析の両面から示す。
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