2020 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of systematic chemical synthetic method of element substitution type nucleic acid oligomer which becomes the next generation nucleic acid drug candidate
Project/Area Number |
19H00930
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
千葉 一裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 学長 (20227325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 洋平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80749268)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 核酸医薬 / 化学合成 / 有機合成 / 電解反応 / 中分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般の化学合成法だけでは達成することが困難な, 次世代核酸医薬であるアザヌクレオチドオリゴマーを高純度品として大量供給できる新たな化学反応法に関する学術基盤を確立し,医薬品,農薬としての実用化開発に対応できる構造の多様化,機能拡張に展開することを目的とする.核酸医薬は低分子医薬,抗体医薬に続く次世代の革新的医薬品として期待されているが,その中でも第四世代の核酸医薬の一つに位置づけられているアザヌクレオシドは,天然型核酸構造の一部の酸素原子を窒素原子に置換した基本骨格を有し,従前の核酸医薬候補物質を凌ぐ優れた機能や活性が確認されている.しかし,その化学合成法は多段階を要し,必要量を得るためには大きな困難を伴う.本研究では申請者がこれまでに独自に開発した有機電解反応法および,逆ミセル液相反応を基軸とした中分子の化学合成法を進展させることを目指した. その結果、研究代表者が開発している特殊な電解室溶液を用いた有機電解反応法を基軸として,容易に大量入手可能な天然プロリンの還元体であるプロリノール誘導体から立体選択的に各種塩基を導入する方法を開発した.最も重要な点は電極酸化によってプロリノールの窒素に隣接する炭素(N-α位)に選択的にカチオンを発生し,このカチオンに対して立体選択的に各種塩基を導入する反応である.この反応では,電解酸化が完了した後に酸化条件で分解しやすい各種核酸塩基を投入できるため,一段階で目的とする核酸塩基導入反応が完了した.すさらに,核酸塩基を立体選択的に導入するために,プロリノール誘導体に導入した保護基の隣接基関与によって目的とする選択性を得る必要がある.これらの条件を精密に制御することによって目的とするN―アザヌクレオシドモノマーの化学合成を達成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,一般の化学合成法では達成することが困難なアザヌクレオチドオリゴマーを99.5%以上の高純度品として大量供給できる非常に効率的な革新的化学合成法を確立し,医薬品,農薬としての実用化に対応できる構造の多様化,機能拡張に展開することを目的とする.一方モノマーであるアザヌクレオシドを得ても、それらを順次リン酸ジエステル結合で繋ぎ,20mer〜30mer程度のアザヌクレオチドオリゴマーとすることや,それらを用いた詳細な活性評価には,現在の反応法や提供できる物質量としての限界がある.このような困難な課題点の克服に対し,研究代表者がこれまで自ら開発した新たな反応法および化学プロセスに関する基盤技術を活用した革新的な中分子合成法により,目標を達成することを計画している. 研究代表者が有機電解反応法を基盤に独自に開発した反応法は,ペプチドや核酸の高度な化学修飾など,従来の化学反応法では実現困難な天然物の化学構造変換に応用できる.これは中性付近の温和な条件で,生体分子の特定部分の選択的に活性化および高度な化学修飾を実現するものである.この研究の過程で,容易に入手できる天然プロリンの還元体を直接電解処理して活性化することにより,アザヌクレオシドの基本骨格を極めて短工程で合成する方法を見いだしている.これは,過塩素酸リチウムを溶解したニトロメタン溶液中で,電極を用いて原料から電子を奪うことにより活性化し,そのまま選択的に化学修飾を実施する新しい反応法である.この方法は電極電子移動による極性転換法(たとえば電子密度高い原料を電子不足の物質に転換する方法)と称されるものであり,酸化剤などの化学試薬を反応溶液に添加することなく,様々な核酸塩基など,酸化剤に対し不安定な物質を自在に扱うことができる方法である.これら一連の計画に沿って研究を推進した結果、概ね順調な成果を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
独自に開発した電子移動型極性転換法によりアザヌクレオシド骨格(N―アザヌクレオシドモノマー)の効率的短工程合成を達成する 研究代表者が開発している特殊な電解室溶液を用いた有機電解反応法を基軸として,容易に大量入手可能な天然プロリンの還元体であるプロリノール誘導体から立体選択的に各種塩基を導入する方法を開発する.最も重要な点は電極酸化によってプロリノールの窒素に隣接する炭素(N-α位)に選択的にカチオンを発生し,このカチオンに対して立体選択的に各種塩基を導入する反応である.この反応では,電解酸化が完了した後に酸化条件で分解しやすい各種核酸塩基を投入できるため,一段階で目的とする核酸塩基導入反応が完了する.すなわち,この方法が各種アザヌクレオシドの合成法として一般化されれば,これまで数十段階を必要としていた全合成が数段階で達成できることになる.成功に導くためには,選択的な電子移動の実現と共に,反応系内に存在する溶媒や他の試薬がこのカチオンと反応しないことが重要となる.さらに,核酸塩基を立体選択的に導入するために,プロリノール誘導体に導入した保護基の隣接基関与によって目的とする選択性を得る必要がある.これらの条件を精密に制御することによって目的とするN―アザヌクレオシドモノマーの体系的かつ一般性の高い合成法を確立する. また、N―アザヌクレオシドモノマー等を組み込んだ核酸系中分子を大量かつ高精度に合成するために、新たな可溶性タグを創出し,これにアザヌクレオシド核酸合成中間体を直接結合させることによって反応プロセスを変革する.
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