2019 Fiscal Year Annual Research Report
比較ゲノム解析とインビトロ吸器培養系を活用した寄生植物組織接続機構の解明
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19H00944
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
青木 考 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30344021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 敦 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (80312205)
横山 隆亮 東北大学, 生命科学研究科, 講師 (90302083)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 寄生植物 / ネナシカズラ / 探索糸 / 比較ゲノム / インビトロ吸器培養系 |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主表面で寄生植物が付着器を形成する仕組みを明らかにするために、アメリカネナシカズラ遺伝子CcJKD、CcGL2の発現抑制をするトランスサイレンシング法を行なうためのトリガーamiRNA発現宿主植物を確立した。このamiRNA発現宿主植物を利用して、期待通りCcJKDの発現を抑制することができ、その他の表皮遺伝子発現への波及効果を調べたところ表皮形態形成に関わるCcGL3、CcTTG1、CcWER等の遺伝子発現が減少しており、CcGL2も減少していることが明らかとなった。CcGL2を標的としたamiRNA発現宿主植物に対してもアメリカネナシカズラを寄生させ、同様の遺伝子発現解析を進めている。この結果からJKDという、シロイヌナズナ根では皮層で機能する遺伝子が、アメリカネナシカズラ寄生では表皮形態形成に働いていることが示唆された。このCcJKD発現抑制アメリカネナシカズラのトランスクリプトーム解析が新学術領域「先進ゲノム支援」公募に採択され、2020年度予定の発現抑制系統トランスクリプトームシークエンシングを前倒しで行うことができた。また研近縁モデル植物であるアサガオとの比較ゲノム解析については、こちらについても巻付く相手に接触した後の比較トランスクリプトームシークエンシングを新学術領域「先進ゲノム支援」公募解析として実施した。また研究分担者(星野)が、アサガオのJKD、GL2を安定に発現抑制したアサガオ遺伝子組換え系統の作成に着手し、植物体の作製が進行中である。インビトロ吸器培養系については、探索糸伸長が進まない条件ならびに探索糸分化が進まない条件を確定した。それらを用いて、宿主由来因子の探索に着手した。このため島津製作所の分取HPLCシステムを購入した。研究分担者(横山)が葉への寄生誘導系を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にあった遺伝子発現抑制系の構築、インビトロ吸器培養系を用いた宿主因子探索に着手、トランスクリプトームシークエンシングの前倒し実施などは、計画よりも少し進んで実施することができた。一方で、サイトカイニンアンタゴニストを使用した実験を実施しなかったこと等が遅れている点となる。しかしながら、研究全体の必要性に鑑み、サイトカイニンアンタゴニストS-4893を用いた実験は割愛してよいかと考えており、その分のエフォートを新規宿主因子探索に割く予定をしている。以上のように、プラス面マイナス面を考慮し、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、項目1「宿主表面への付着」に関しては2019年度に実施したトランスクリプトームシークエンシングに基づき、そのデータ解析を行なうことで付着器の形成に関わるアメリカネナシカズラ遺伝子群を更に候補化する。特にCcGL2の下流で機能する遺伝子群の候補化を目指す。2019年度に作製を始めたアサガオ遺伝子発現抑制系統を確立し、そこへアメリカネナシカズラ遺伝子を導入していく研究に着手する。項目2「吸器形成機構」に関しては、側生器官形成遺伝子群の発現プロファイルを調べるとともに、更に上流に位置すると思われる機械的刺激受容系に関する遺伝子機能解析を行なっていく予定である。項目3の「宿主因子」においては、インビトロ吸器培養系を用いたバイオアッセイによって、分画した宿主抽出物の探索糸伸長および探索糸分化に対する効果を評価し、それらの過程を促進する因子を含む画分の同定を進めたい。こちらに注力するために、サイトカイニンアンタゴニストS-4893を用いた形質評価実験は割愛する、という計画変更を行なう。項目4「宿主とつながる過程」については、インビトロ吸器培養系で伸長した探索糸細胞の内容物をサンプリングする方法を探索し、探索糸細胞のトランスクリプトーム解析に持ち込む方法を吟味する。並行して、探索糸細胞内容物サンプリングの見通しが立たない場合は、吸器領域での幹細胞マーカー遺伝子群の解析を実施し、探索糸細胞の性格付けを実施することを考える計画である。
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Remarks |
2020年1月30日放送のNHK Eテレ「植物に学ぶ生存戦略3 話す人・山田孝之」に取材協力(青木考)資料提供(横山隆亮)を行なった。2月1日と2月13日に再放送。
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