2021 Fiscal Year Annual Research Report
Control of polymer structure by enzyme: structure-function relationship of cellulose synthase
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19H00950
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 友也 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (90509142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 健次 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00271643)
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セルロース合成酵素 / 膜タンパク質 / タンパク質複合体 / タンパクータンパク相互作用 / 状態制御 / 機能欠損体作出 |
Outline of Annual Research Achievements |
酢酸菌のセルロース合成酵素複合体の主要構成サブユニットのうち、ABCDの4サブユニットが一つの複合体中に存在することを支持する生化学的データを得ることに成功した。またその複合体の中で、AB複合体とDタンパク質が直接相互作用している場合と、合成されたセルロース分子を介して間接的に相互作用している場合があることを実験的に証明した。以上から、これら二つの相互作用モードを使い分けることで酵素複合体の状態制御を行っている可能性を示した。さらにこのタンパク質複合体精製実験を進め、クライオ電子顕微鏡法による三次元構造解析への道筋をつけた。具体的には組換え大腸菌および酢酸菌の二つの系を用いて、His-tagあるいはStrep-tagを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーによる精製条件検討を進めた。 Cサブユニットは、全長タンパク質の取り扱いが難しいことから、C末のβバレル型チャネル部分のタンパク質結晶化を進め、結晶化条件について目途をつけつつある。また、Mass Photometry法により、この部分構造が会合体を形成することを確認した。さらにCタンパク質の機能解析を進めるために、Cサブユニットの遺伝子欠損酢酸菌株を使った実験の条件最適化を進めた。 また機能解析を効率的に進めるために、A遺伝子の機能欠損酢酸菌株の作出を進めた。具体的にはCRISPR-Cas9システムを用いるために新たなプラスミドを構築した。現在このプラスミドにターゲット配列を導入し、ノックインによるA遺伝子欠損株の作出を進めている。さらにセルロース合成に関与している新たな遺伝子を探索するためにランダム変異実験を行い、候補となる遺伝子をいくつか特定することが出来た。これらについて機能解析を行うため、CRISPR-Cas9システムを用いた欠損株の作製を現在行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ABCD複合体の精製が思いのほか進んだが、一方で機能上最小構成単位であるAB複合体については進んでいない。またCタンパク質の構造・機能解析、ターミナルコンプレックス形成因子、Aタンパク質機能解析実験系の構築については、着実に進めることができたことから、総合的にみて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
下記4テーマについて重点的に研究を進める。 ・ABCD複合体のタンパク質精製および構造・機能解析を引き続き進める。特に令和3年度までに、ABとDが直接相互作用を結ぶことを明らかにしたが、セルロース合成活性を欠損させた点変異タンパク質を使うとこの直接相互作用がさらに強まることが明らかとなっている。そこで該当変異タンパク質発現系を使って構造解析に適したタンパク質試料の調製を目指す。 ・機能上最小構成単位であるAB複合体の解析:機能上の最小構成単位であるAB複合体の精製については、大腸菌発現系を使った系で目途をつけつつあるが、ABCD複合体の方に注力した結果、研究の進展が遅い。AB複合体の解析についてはいくつか既報もあるものの、まだ十分に解明が進んだとは言えない状況と判断しており、その構造・機能解析を進める。 ・Cタンパク質の構造・機能解析:Cタンパク質のTPR領域およびC末のβバレルの構造・機能解析を進め、ABCD複合体の構造に関する情報を得る。 ・酢酸菌を使った機能解析:精製タンパク質を使った試験管内系での機能解析系と並行して、酢酸菌の遺伝子欠損株を使った機能解析実験を進める。C遺伝子欠損については形質転換体は作出済みだが、実験条件が定まっておらず、継続して実験条件最適化を目指す。またA遺伝子欠損株については、この数年間にわたる継続課題として進めてきたが、まだ成功には至っていない。成功した際には重要な実験系として期待できることから、こちらの欠損株の作出も継続して進める。さらに、細胞長軸に沿ってならんだ酵素複合体「ターミナルコンプレックス」の形成因子を同定するための因子同定も、この形質転換株作出実験の目的の一つに設定して実験を進める。
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Remarks |
日本応用糖質科学会2021年度大会でのポスター発表「セルラーゼを用いた酢酸菌由来セルロース合成酵素複合体の構造局在解析」の第一著者である近藤辰哉博士に対して、ポスター賞が授与された。
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Research Products
(17 results)