2020 Fiscal Year Annual Research Report
山間部における夏季豪雨形成と大気汚染の相乗環境影響の解明
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19H00955
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大河内 博 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00241117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井川 学 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (70120962)
佐瀬 裕之 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 部長 (20450801)
戸田 敬 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (90264275)
高橋 善幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (40280713)
岩崎 貴也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (10636179)
村田 浩太郎 埼玉県環境科学国際センター, 大気環境担当, 技師 (30740104)
藍川 昌秀 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (90446815)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 山間部豪雨 / 越境大気汚染 / 酸性霧 / ドローン / 硫黄同位体比 / 生物起源揮発性有機化合物 / 生物起源二次有機エアロゾル / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)山間部豪雨の実態と生成機構 丹沢における1978年から2018年までの40年間の時間雨量50 mmを越える大雨の発生頻度増加率を調べた.過去20年間に比べて最近20年間では西部と南部では10倍以上に増加した.森林大気でBVOCsの酸化物であるカルボニル類とアンモニアの粒子内反応によるイミダゾール類が大気粒子に存在することを確認した.また,イソプレンの二次・三次生成物となるエポキシ化合物の硫酸塩(IEPOX-OSs)の検出法の確立と標準試薬の合成を行った.さらに,春にジアミン類が多く存在することを見い出し,その粒子形成能を評価した. (2)山間部森林生態系への影響と越境汚染の影響評価:コロナ禍による出張制限により霧水・雨水採取装置の設置と調査は大きな制約を受けたが,丹沢大山,富士山南東麓,八海山,飯縄山で継続採取を行った.富士山南東麓でドローンによる鉛直大気観測を行い,越境輸送をとらえることができた.新潟県・加治川における15 年以上の長期観測により,2006年以降に非海塩起源硫酸塩沈着量の低下傾向を明らかにした.ただし,硫黄同位体比を用いた解析では越境大気汚染の寄与率に明瞭な変化はなかった. (3)山間部森林生態系の健全性評価:酸性霧暴露実験を行い,遺伝子発現解析を行った.霧暴露無し,酸性霧(pH 3.0)暴露,中性霧(pH 5.6)暴露の合計24個体についてRNA抽出とライブラリ作製を行い,次世代シーケンサーによる塩基配列データを取得した.ブナでは1枚のleaf diskでも十分な質と量のライブラリが作製可能であることが分かった.日本やアジアにおける森林衰退要因はSO2,酸性沈着から窒素沈着やオゾン,気候変動に変化していることを解明した.硫黄同位体比を用いた解析から,大気から流入する硫黄は生態系で循環・保持された後に均質化してから流出することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れた最大の要因は,コロナ禍による厳しい行動制限がかかったことである.本研究課題は野外調査を主体としており,定期サンプリングに行くための厳しい出張制限があり,2020年2月以降の調査を全面的に中止しなければならない状況であった.また,雲水採取機の全国における設置作業が完全にストップしてしまった.また,植物暴露実験の遺伝子解析実験も出張制限のために研究を進めることができなかった. また,太平洋側中山間地における渓流水調査では,令和元年東日本台風(2019年台風19号)により研究代表者がフィールドとしてる東丹沢が壊滅的な被害を受け,多数の箇所で土砂災害が起こり,林道の通行止めが行われた.2022年現在でも立ち入ることができない状況になっている.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)山間部豪雨の実態と生成機構 山間部豪雨の実態解明として2020年度は研究代表者のフィールドである丹沢における大雨について統計解析を行ったが,日本全国の山間部豪雨の実態解明が必要である.また,山間部で発生する豪雨について,豪雨発生機構に分類して実態解明を行う必要がある.山間部で局地的に降る短時間大雨の軽視要因として,森林大気特有の化学物質の影響と大気汚染物質の影響については事例が限られており,さらなる野外調査が求められる (2)山間部森林生態系への影響と越境汚染の影響評価 山間部における霧水沈着マップ作成を進めているが,2020年度は観測地域が限られていたため,さらに観測地点を増やすことが求められる.森林大気の影響評価のために,ドローンを用いたBVOCs計測をはじめて試みたが,コロナ禍の行動制限にために植物の成長期にあたる春季から夏季に観測を行うことができず,落葉期にあたる冬季に観測を行ったためBVOCsの動態解明は不十分であった.今後,ドローンによるBVOs計測手法を確立するとともに,春季から夏季におけるドローン鉛直観測が求められる. (3)山間部森林生態系の健全性評価 室内実験では,酸性霧暴露実験を行った遺伝子発現解析を進めており,現状で課題は明確でないため,2021年度には今後の推進方策を明確にする.また,野外での健全評価のために,森林樹冠のドローン撮影を計画していたが,国定公園内では撮影許可がおりないために研究が進まない理由となっている.調査研究について制約緩和が必要ではないか.現状では.入手可能な過去の航空機撮影画像や衛星画像を使わざるを得ない状況である.
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Research Products
(6 results)