2021 Fiscal Year Annual Research Report
Cultivation management for retaining grain production in polluted farmland by controlling the mobility of heavy metals in soil
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19H00961
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
堀野 治彦 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30212202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 公人 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293921)
櫻井 伸治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (30531032)
中桐 貴生 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80301430)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重金属 / 農地汚染 / 土壌改良材 / 有機物 / 移行性 |
Outline of Annual Research Achievements |
重金属汚染農地において、たとえ緊急避難的であっても作物可食部への重金属移行を抑制する栽培管理は意義があり、本研究では有機質改良材(有機材)やその補助剤の投与によりこれに応えようと考えている。年度当初の実施計画項目に合わせ、今年度の結果を整理すると以下のとおりである。 1.腐熟度の異なる堆肥が重金属の不動化に及ぼす影響評価:有機材の腐熟度をC/N比で代表し、植物性4種、動物性3種の有機材を土壌添加した際の重金属分画測定結果を整理した。未だ重回帰による1次的分析に過ぎず厳密には重金属種にもよるが、全体的な傾向として、不動化に対する効果はC/N比の小さい有機材で大きく、溶存有機炭素やpHにも左右される場合があることが示唆された。また、これまで有効とされていたリンを補助剤とした実験も行ったが、従来の指摘と異なり補助効果は有意ではなかった。 2.土壌重金属の存在形態が穀物各部位への移行に及ぼす影響:ダイズを供試作物としたポット試験を継続した。汚染重金属は、Cd、Cu、Pbの各単一および3種混合であり、土壌はバッチ試験と同様である。今年度は栄養過多回避を考慮しつつ牛糞を有機材として調整投与した。その結果,単一・3種混合添加ともにCuおよびPbに対する牛糞の不動化効果が確認され、特に重金属濃度が低い場合に効果が顕著であった。一方、Cdはこうした効果がみられなかった。また、ダイズ可食部での蓄積量はCu>Pbの順に大きく、Cdは莢や豆で未検出であった。 3.農地土壌および有機材の理化学特性評価:過年度の結果からCdが不動化されにくいことが明らかであることから、これを対象に土壌及び有機材の吸着特性を実験的に明らかにした。結果的に土壌や有機材へのCd吸着にはやはりCECの影響が最も高く、pHはあまり寄与しないことがわかった。また、吸着特性評価にはLangmuirモデルが比較的有効であることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのバッチ試験で検討対象となる条件は、植物体を用いない場合であっても、土性、重金属汚染濃度、重金属種、投入有機材の質及び量、土壌水分量、経過日数など多種にわたり、以前にも述べたようにこれら全ての組み合わせを検討することは現実的ではない。今年度からは特定の実験に関して重金属種の絞り込みや共存の組み合わせの削減を行い、土壌中の重金属形態分析から土壌中あるいは植物体への移行の難易度を整理するために最低限必要な試験の選別を行っている。すなわち、本来望ましいと思われる全ての条件設定は無理であるが、確認すべき内容に関わる最低限の設定条件下での検証実験は比較的順調に進捗している。ただし、前年度同様、実験結果の蓄積が進むにつれ、重金属種の吸着や不溶化のメカニズムに関する新たな疑問点(例えば、pH依存性の機序、土壌の酸化還元状態の影響、錯体の形成条件など)も興味の対象として見出されてきており、残り1年でどこまでを検討対象とするかは判断が難しい。 最終的な検証となる、より現実に近い栽培試験も生体(作物)を扱うことから、想定通りの成長を維持することがやはり難しい場合がみられた。特に、重金属の作物部位別集積量の評価に対する確度を高めることは厳しいかもしれない。しかし、作物種の変更や投与有機材量の調整を図ることで、作物内に移動する重金属形態分別を継続していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
重金属汚染農地において作物生産を少しでも継続する栽培管理のあり方を探究するねらいから、重金属汚染土壌での農業活動においてどのような腐熟度段階の有機物投入や水管理が有効であるかを実験的に検討し、その結果を整理しようと試みている。本年度は以下のアプローチ1を継続するとともに、アプローチ2として嫌気的な湛水条件下での有機材の投与効果の検証、およびアプローチ3として土壌重金属の植物体への最終的移行特性評価を行う。 1.有機材や土性および重金属の存在形態が作物体への移行に及ぼす影響:砂丘砂と水田土を用い、腐熟度の異なる有機材を投与した場合の土壌中の重金属分画測定を継続する。また、原則ダイズを対象穀物とした重金属汚染土壌での栽培試験を再度行う。重金属種はこれまで、Cd、Cu、Pbとしていたが、影響度の大きかったCdを中心に実験数を調整する。また、投入有機材量は作物ありの試験と作物無し(土壌のみ)の試験とで差をつけ、より現実的に作物成長を促すように前者では少なくする。(中村、櫻井担当)。 2.稲作を想定した湛水条件での農地での重金属不動化効果:簡易ポット水稲栽培により、水田土を対象に牛糞堆肥に特化した重金属の移行性抑制状況を確認する。湛水条件下であることからpHや特に還元状態との関係にも注目する。(櫻井担当)。 3.重金属の作物可食部への移行を制御する栽培管理の提言:得られた知見をもとに有機材の混合した土壌の物理化学特性のうち、特にCECやpH状態、水分量(酸化還元状態)などが重金属のスペシエーションや可給態構成にどの程度影響するのかについて、少なくとも統計的な因子分析は行いたい。すなわち、得られた実証データを整理することにより、用いた各種重金属に与える土性や有機材等の不動化効果について、想定される要因別に影響度を定量化し、効果的な栽培管理に向けた提言を示す。(堀野、中桐担当)。
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Research Products
(6 results)