2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanisms of seminal proteins on uterine function and its application to improvement of fertility in cows
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19H00964
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片桐 成二 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (00292061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 洋二郎 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (20609656)
杉浦 智親 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (40828258)
奥山 みなみ 大分大学, 医学部, 助教 (50756781)
平山 博樹 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (60390861)
永野 昌志 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (70312402)
田上 貴祥 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70709849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳牛 / 不妊症 / リピートブリーディング / 上皮成長因子 / オステオポンチン / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
牛の低受胎(リピートブリーディング)の原因の1つとされる子宮での上皮成長因子(Epidermal growth factor, EGF)の濃度異常を解消し、受胎性を回復させる効果を持つと考えられる精漿タンパク質の1つがオステオポンチンである。今年度は、このオステオポンチンを遺伝子組換えタンパク質として調製してEGF濃度の低下がみられるリピートブリーダー牛への投与を行い、その効果を検証した。また、オステオポンチンを豊富に含む生乳からもオステオポンチンを調製し、同様に効果を検証した。 組換えタンパク質は、大腸菌をベクターとして調製し、牛のオステオポンチンcDNAの塩基配列をもとに大腸菌ベクターに合わせたコドンの最適化を行った。予備的検討の結果からオステオポンチンの投与量は1 mgとし、発情日の人工授精実施後に腟深部に投与した。乳中オステオポンチンはイオン交換クロマトグラフィーにより調製し、組換えタンパク質と同様に1 mgを腟内に投与した。 その結果、いずれのオステオポンチンも50%から60%のリピートブリーダー牛で子宮でのEGF濃度異常を解消した。治療後のEGF濃度正常化率には両群間で差異はみられなかったが、治療処置3日後の子宮内膜EGF濃度は組換えタンパク質を投与した群で高かった。遺伝子組換えオステオポンチンを投与した牛では、多くがEGF濃度の正常範囲の高い領域を示したのに対し、乳中オステオポンチンを投与した群では、EGF濃度は異常値(低値)から連続して正常範囲内の全域に広く分布する傾向がみられた。 両オステオポンチンによる治療効果には、ホルモン製剤によるEGF濃度異常牛の治療でみられる農家あるいは牛群間での差異はみられず、全ての牛群でほぼ同等の効果がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では、組換えタンパク質の調製、乳中タンパク質の精製とこれらを用いた野外での治療試験は順調に実施されており、2019年度から2021年度までの3年間に実施予定であった250頭中148頭での試験を終えており、当初の計画以上に進展している。また、オステオポンチンによる受胎性改善効果の確認後に実施する計画であるEGF濃度の正常化に伴う子宮および血中でのサイトカイン発現およびリンパ球のサブセットの解析については既に評価法を検討済みであり、野外試験からの検査材料を受入可能な状態にある。さらに、2020年度後半から開始予定であった胚を用いる受胎性試験およびリピートブリーダー牛の胚および胚由来産物への応答性を評価する試験に関しては、使用する体外受精胚を前倒しで生産しており、2020年4月末までには試験全体を通して必要な数の牛体外受精胚が得られる予定である。また、受胎性試験実施に必要な胚の品質(高い受胎性)については、形態、細胞数および子宮内での発育能などにより確認済みである。 さらに、人工授精による受胎性試験の実施からのフィードバックにより、本試験をより効率的に実施するための改善点も明らかとなっており、現在実施中の試験(第1期、2020年4月終了)終了後は第2期に移行する準備が整っている。第2期の試験では、組換えオステオポンチンの活性を高めるため新たに調製した組換えオステオポンチンを投与試料として用い、第1期の結果を基に修正した新しい試験プロトコールにより第2期の試験を開始する準備が整っている。新たな組換えオステオポンチンは、従来法に比べ生産効率が約5倍に向上している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の流行により、研究代表者および分担者はいずれも学外への出張は禁止され、学内における研究活動についても休止が指示されている。協力農場においても現在実施中の人工授精による受胎性試験(第1期、令和2年4月末終了予定)終了後は当面の間試験の受入を中止したいとの意向であり、一般農場で発生するリピートブリーダー牛が利用できなければ、この試験は一旦中止しなければならない。協力農場のうち半数以上は新型コロナウイルス感染症流行の状況に改善がみられれば試験の再開に協力するとの意向であるが、現時点では再開時期を予想することは困難である。 また、試験牛を安楽殺し精漿およびオステオポンチン投与による免疫系臓器におけるサイトカイン発現を評価する試験は、その評価手法の検討は終えているが、新型コロナウイルス感染症への対応で焼却施設の運転が停止され試験用の大型家畜のと殺が制限されていることから、当面の間実施することはできない。 このため、令和2年度の研究計画は、大学での研究休止の指示が解除された段階で研究代表者および分担者の所属機関内において実施可能な内容に変更する。研究代表者および分担者の所属大学附属農場で飼養されている乳牛を使用して、まずは正常な牛における胚および胚由来産物への子宮および全身の免疫系(サイトカイン発現、リンパ球サブセット)の変化を調べる。これらの試験は、令和2年度後半から2年半をかけて実施予定であったが、使用する体外受精胚の生産が前倒しで進んでいることから、本試験を年度当初から実施する。また、正常牛に精漿およびオステオポンチンを投与して免疫系への効果を調べることで、オステオポンチンの投与によりEGF発現が正常化し、受胎性が向上する機序に関わる免疫系の変化を調べる予備的検討を実施する。
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Research Products
(14 results)