2021 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanisms of seminal proteins on uterine function and its application to improvement of fertility in cows
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19H00964
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片桐 成二 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (00292061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 洋二郎 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (20609656)
田上 貴祥 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70709849)
平山 博樹 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (60390861)
杉浦 智親 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (40828258)
永野 昌志 北里大学, 獣医学部, 教授 (70312402)
奥山 みなみ 大分大学, 医学部, 助教 (50756781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オステオポンチン / 上皮成長因子 / 牛 / 不妊症 / 病態 / リンパ球 / サイトカイン / 子宮 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜での上皮成長因子(EGF)濃度異常の解消に対するオステオポンチン様タンパク質の効果を検証するための低受胎牛128頭(過去3年間の延べ頭数280頭)を用いて検証したところ、オステオポンチンの腟内投与により子宮でのEGF濃度が正常化し、対照群(約25%)に比べ受胎性も向上する(約40%)ことが示された。 オステオポンチンの腟内投与(発情日)が子宮および血中のリンパ球サブセット構成およびサイトカイン発現に及ぼす効果を調べたところ、投与後24時間以内に試験群の約40%(21頭中9頭)においてサブセット構成の変化がみられたが、この変化の有無とEGF濃度の正常化および受胎性回復の間には明らかな関係はみられなかった。一方、オステオポンチン投与群では発情後3日目EGF濃度が正常化した牛では、血中および子宮中のリンパ球でのサイトカイン発現および子宮内膜でのサイトカイン、Tol様受容体およびレプチン受容体の発現に変化がみられることが明らかとなった。 さらに、胚および胚由来物資の子宮内投与がリンパ球および子宮でのサイトカインなどの生理活性物質の発現に及ぼす効果を、低受胎牛と正常牛の間で比較した。その結果、低受胎牛全体では対照群との間に発情後14日目のリンパ球サブセットに違いは見られなかったがサイトカイン発現量は対照群に比べ20-40%低い水準であった。一方、子宮でのEGF濃度異常はみられるがレプチン受容体発現が正常レベルにある低受胎牛では、6項目中1項目を除き正常牛と同等の発現量であった。 以上の結果から、オステオポンチンには子宮でのEGF濃度を正常化して受胎性を回復させる効果があり、その機序には全身および子宮局所のリンパ球サブセットおよびサイトカイン発現の変化が関与することが示された。また、栄養と生殖をつなぐレプチンの子宮での受容体発現がこの機序に関わる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画調書および年度毎の計画書において2021年度までの3年間に実施するとしていた試験項目については全て予定通りあるいは予定以上に進んでおり、かつ本課題の目的の病態解析については既に目的を達成している。とくに、課題採択後に発表された他のグループによる子宮機能調節における免役機能(tol様受容体の役割)に関する情報や栄養と生殖との関係(レプチン受容体の発現異常)を解析に取り入れたことで、計画時に想定していた病態の仮説がさらに補強されるかたちで明らかとなった。その他、本課題の後半に実施予定の試験についても予定を繰り上げて実施している。 さらに、これまでの研究により子宮でのEGF濃度異常による低受胎の病態の詳細が明らかになったことにより、当初計画していたアプローチとは異なる手法による治療法開発への道筋がみえている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は当初の計画以上に進展しているが、その過程で計画時には予想できなかった新たな手法による問題解決の道筋が見えてきた。このため、関連するデータを追加して、その結果を基にした新たな低受胎牛対策の可能性を検討することで、より早期に、かつより有効な予防法および治療法を開発できると考えられる。 そこで、今年度は計画時の仮説に基づき既に前倒しで実施している治療処置の検討を行い、治療効果を推定する。これと平行して新たな手法につながるデータの収集を進める。後者のデータが十分に得られて当初計画した手法に対する優位性が確認された時点で、後者による治療法の開発に重点を移す計画である。 一方、本研究課題は北海道の2地区および九州の1地区の計3地区で実施する予定であったが、covid-19の影響により九州への移動、農場への立ち入りが制限されたことにより、九州地区での試験実施を一時見合わせている。北海道での試験頭数を増加することで試験全体の実施には支障を来していないが、現在進めている治療法の評価にあたり暑熱の影響(九州と北海道の夏季におけるデータの比較)を十分に検討できない可能性がある。この点については、リンパ球サブセットやサイトカイン発現解析の一部を除外して治療効果の評価プロトーコールを簡略化し、農場への立ち入り回数および人員を限定する等により、あらためて九州地区試験農場の協力を取り付けて試験を再開する協議を進めている。
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[Presentation] Effects of days in milk and body condition score loss after parturition on oocyte triacylglycerol content in Holstein cows,2022
Author(s)
Eri Furukawa, Zhen Chen, Tomoaki Kubo, Madalitso Chelenga, Yue Wu, Hitoshi Chiba, Yojiro Yanagawa, Seiji Katagiri, Shu-Ping Hui, Masashi Nagano
Organizer
International Embryo Technology Society 48th Annual Conference
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