2019 Fiscal Year Annual Research Report
Structural biology of active transport and its regulation by P-type ATPases
Project/Area Number |
19H00975
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 近 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (70172210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 隆太 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (50598472)
椛島 佳樹 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (00580573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 構造生物学 / イオンポンプ / カルシウムポンプ / ナトリウムポンプ / 膜蛋白質 / 能動輸送 / 結晶解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、多数の関連した疾病が認識されるようになり広範な注目を集めているP型ATPase(ポンプ)による能動輸送機構を原子構造に基づいて解明し、究極的には「何故そういう構造が必要なのか」「構造変化を起こす(或いは妨げる)機構はどのようなものか」を理解することを目指している。 最も研究が進んでいる筋小胞体Ca2+ポンプに関しては反応サイクル全体をほぼカバーする10状態の結晶構造を決定できたが、Ca2+運搬直後のE2状態から燐酸転移直前のE1・ATP・2Ca2+状態までの反応経路は複数ありえる。実際にはATPを結合したE2・ATP状態がCa2+運搬直後に大部分の分子が存在する状態と考えられる。この状態の結晶化に成功し、構造を2.6Å分解能で精密化した。その結果、これまでの予想に反し、ATPはNドメインとPドメインを架橋し燐酸化部位に正しく位置しているがPドメインの折れ曲がりは起こっておらず、Pドメインの折れ曲がりが原因となって燐酸転移に必要な残基が配置されることが判明した。2個のCa2+の結合がPドメインの折れ曲がりに必須となる理由を考察することにより、燐酸化転移を誘起する構造的シグナルの実態を予想することができた。以上の結果をまとめPNAS誌に投稿した。 Na+ポンプに関しては、E1・3Na+状態に加え、E1・2Na+状態の構造を得ることにも成功した。これにより、これまで論争が続いていた、3つのNa+の結合順に明快な結論を与えることができる。現在、さらなる中間的状態の構造が得られないかを調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はイオンポンプを対象に「何故そういう構造が必要なのか」「構造変化を起こす(或いは妨げる)機構はどのようなものか」を理解することを目標としている。時間はかかったものの、Ca2+ポンプE2・ATP状態の構造の理解は、この目標に向かって大きな前進をもたらした。また、Na+ポンプに関しては、驚いたことにE1・3Na+状態に加え、E1・2Na+状態の構造を得ることにも成功した。Ca2+ポンプとの共通性も明らかになり、非常に大きな進展をもたらした。さらには、ナトリウムポンプの活性化抗体の取得にも大きな前進があった。総じて、期待以上の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、2つのCa2+結合サイトの段階的形成の研究の完成に重点を置く。Ca2+ ポンプは2個のCa2+を厳密に選択し、順に結合して輸送するが、その過程は、他のイオンをも利用する予想外に複雑なものであることが分ってきた。同様のことはNa+ポンプに関しても起こっており、E1・3Na+, E1・2Na+状態の結晶構造の完成に注力したい。
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Research Products
(2 results)