2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H00988
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
布浦 拓郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), センター長代理 (60359164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
千葉 洋子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (70638981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TCA回路 / アミノ酸 / メタボローム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(超)好熱性アーキア及びバクテリアにおける多様なtricarboxylic acid (TCA)回路(クエン酸回路)の仕組み解明を目指す。TCA回路はエネルギー生産やアミノ酸・脂質等の生合成の基点となる根源的な代謝系であり、最も研究された代謝系の一つである。一方、ゲノム解析から非モデル微生物には不完全型等多様なTCA回路の存在が示唆され、実際、本研究グループがクエン酸合成酵素の可逆性を活かした可逆的TCA回路を始原的な水素酸化硫黄還元好熱細菌Thermosulfidibacterより見出した(Nunoura et al. 2018)ように、未だ重要な知見の発見が相次ぐ。本研究では、本研究グループが独自に開発した、安定同位体標識とガスクロマトグラフ-質量分析計と解析ソフトウェアMassWorksを組み合わせた微量メタボローム解析技術を駆使し、主に始原的な系統群における多様なTCA回路の生理的機能の解明を目指す。 本研究初年度においては、始原的な好熱性水素酸化細菌系統群(Aquificae)に分布する還元的TCA回路、可逆的TCA回路、不完全型TCA回路、それぞれの機能を、マルチオミクス解析により解明した。更に、還元的TCA回路や不完全型TCA回路については、還元TCA回路と同様に、始原的炭酸固定経路として知られる還元的アセチルCoA経路との共存の可能性について、検証を行った。この他、安定同位体標識基質を利用した微量メタボローム解析を効率的かつ高精度に実施するため、従来のガスクロマトグラフ-質量分析計を用いた実験系に加え、Orbitrap Fusion 質量分析計を用いたアミノ酸や有機酸のアイソトポマー解析の実験系の確立に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
始原的な水素酸化細菌系統群であるAquificaeにおけるTCA回路と炭酸固定経路の多様性を明らかにするため、既に可逆的TCA回路の存在が明らかになっているThermosulfidibacterに加え、Hydrogenobacter、Thermovibrio、Thermodesulfatatorを試験株として、還元的TCA回路、不完全型TCA回路、そして、還元的アセチルCoA経路の機能との関係性について、安定同位体標識基質を用いた微量メタボローム解析を含むマルチオミクス解析により明かにした。現在、その成果は論文執筆を進めている。 一方、従来、本研究グループにて、多量培養の困難な環境微生物に適用可能な代謝解析手法として、ガスクロマトグラフ-質量分析計と解析ソフトウェアMassWorksを組み合わせることで、従来にない微量な微生物マスで対応可能な代謝解析を開発し、これまでの研究に適用してきた。一方、本研究の開始にあたり、所属機関に設置されたOrbitrap Fusion 質量分析計にて、より微量な試料から、より高速にデータ取得が可能なことが明らかになった。そこで、本研究課題において、Orbitrap Fusion質量分析計による実験系の確立を優先して行うこととした。その結果、細胞に固定された総アミノ酸だけでなく、細胞質に存在する遊離アミノ酸を対象とする実験系を確立すると共に、従来のガスクロマトグラフ-質量分析計・MassWorksとの比較を行った。これらの結果は、3報の邦文として取りまとめ、報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
Orbitrap Fusion 質量分析計を活用した新たな微量代謝解析系を試験し、導入を図った為、多様なTCA回路の機能解明自体には若干の遅れが生じている。しかし、ガスクロマトグラフ質量分析計・MassWorksによる解析のみに依存した当初の研究体制に比べ、迅速且つ高精度なデータ取得が新規手法開発により可能になった。今後、更に、Orbitrap Fusion質量分析計によるアイソトポマー解析を、TCA回路を構成する有機酸自体へ拡張することで、より直接的なデータ取得を目指すべく、実験系の確立を目指す。また、この技術開発と並行し、様々な不完全型のTCA回路を有す、超好熱従属栄養細菌・アーキア、メタン生成アーキアにおけるTCA回路の機能解析を、ガスクロマトグラフ質量分析計・MassWorks及びOrbitrap Fusion 質量分析計によるアミノ酸アイソトポマー解析を適宜組み合わせて研究を推進し、特に始原的な系統群におけるTCA回路の生理的役割の解明を進めたい。
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