2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19H00997
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 啓二 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 理事長 (10108871)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロテアソーム / ユビキチン / 液一液相分離 / タンパク質分解 / プロテアソーム顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は巨大で複雑なプロテアソーム複合体の生理学や病理学における未解決の二つの課題として、 ① プロテアソームの動態や機能を個体レベルで解析するツールの作出とそれらを活用した研究、及び②プロテアソームの環境ストレス応答に関する研究を推進することを提案した。本年度、①については、プロテアソーム活性センサーのノックインマウスを作出し、全脳を透明化後にライトシート顕微鏡を用いたレシオ測定蛍光イメージングによる定量解析を行った。と同時にプロテアソームの発現をモニターできるトランスジェニックマウスを作出して、マウス組織(脳、肝臓、腎臓、精巣)におけるプロテアソーム会合因子の加齢に伴う変動を明らかにした。また、全身性プロテアソーム機能減弱マウス(psmd12+/mマウス)の作出にも成功し、プロテアソーム機能と発生、運動機能、老化との関連性を明らかにしつつある。②については、高浸透圧刺激によりプロテアソームがユビキチン化タンパク質とともに核内で液-液相分離(LLPS)して液滴(膜のないオルガネラ)を形成、ストレスにより生じた核内のユビキチン化タンパク質を迅速に集積させて分解することを明らかにした。さらにプロテアソームが高浸透圧刺激以外の様々なストレス刺激に応答して液滴を形成することを見出した。例えば、細胞内ATPレベルの低下時には主に細胞質にプロテアソーム液滴が形成し、アミノ酸飢餓では核内にプロテアソーム液滴が形成する。これまでの解析から、これら3種のプロテアソーム液滴は、形成に要する時間やサイズ・流動性などの動態が異なるものの、ユビキチン化タンパク質、p97 ATPaseシャペロン、シャトル分子RAD23Bを含有していること、4分子以上のポリユビキチン鎖とRAD23Bが液滴の形成に必須であることを見出し、プロテアソームのLLPSが共通の仕組みである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一の課題、プロテアソームの動態や機能を個体において解析するツールの作出と解析については、殆ど計画通りに進捗した。本年度、プロテアソームの発現をモニターできるノックインマウスと、活性をモニターできるトランスジェニックマウスの作出に成功し、臓器レベルの解析を進めた。さらに全身性プロテアソーム機能減弱マウスを作出することにも成功した。この変異マウスはプロテアソーム活性が30%ほど低下しており、発育遅延、軽度の肝・腎機能低下、軽度の運動障害など、プロテオスタシス異常に起因する多面的な表現型を示した。
第二の課題、プロテアソームのストレス応答については、高浸透圧誘導性のプロテアソーム液滴がストレスにより核内に蓄積した異常タンパク質がユビキチン化後に集積・分解される場(核内タンパク質の分解センター)であることを明らかにした。また細胞内ATPレベルの低下により主に細胞質に形成したプロテアソーム液滴は、流動性が低くゲル状であること、そしてオートファジー経路のp62ボディやストレス顆粒とは異なる液滴であることを明らかにした。さらにアミノ酸飢餓により核質に形成するプロテアソーム液滴も見出した。このようにプロテアソーム液滴は、高浸透圧ストレス、細胞内ATPレベル低下、アミノ酸飢餓などによって核あるいは細胞質に形成し、構成因子や物性は異なるものの、共通してポリユビキチン化タンパク質、ATPaseシャペロンp97、シャトル分子RAD23Bを含有することから、同じ原理で形成される可能性が示唆された。更にこれらの3種のプロテアソーム液滴には、異なるユビキチン化基質が集積することや脂質代謝関連酵素の隔離などの代謝リモデリング機能を併せもつことを見出した。このように、研究代表者はプロテアソーム液滴による新たなプロテオスタシス制御機構を開拓しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症患者由来のプロテアソーム点変異を導入することで新規に樹立した全身性機能減弱マウス(psmd12+/mマウス)をハンチントン病モデルマウス、ALSモデルマウス、アルツハイマー病モデルマウスと交配することで、より有用な神経変性疾患モデルを作出し、プロテオスタシス増強法の介入点を解明するためのモデル系として活用する。
研究代表者のグループは高度なプロテオミクス解析に精通しており、これまでイオンモビリィティ装置を搭載した質量分析計Orbitrap Fusion Lumosを運用し、16サンプルから8,500種類以上のタンパク質を網羅的に同定・定量する方法、15,000種類以上のユビキチン化ペプチドを同定・定量する方法、さらにクロスリンク法を組み合わせてプロテアソームやRAD23Bと相互作用するユビキチン化基質を同定可能な新規手法を確立した。これらの手法を用いることで高浸透圧ストレス、ATPレベル低下、アミノ酸飢餓時のプロテアソーム液滴に集積するユビキチン化基質の同定を遂行する。
現在、液-液相分離の異常がタンパク質凝集体の形成(液-固相転移)に関与することが示唆されており、また、プロテアソーム液滴の構成因子はいずれも神経変性疾患に関連する分子であることから、プロテアソーム液滴のクリアランス異常がユビキチン陽性封入体の形成に関与する可能性がある。この仮説について、人為的ユビキチン液滴誘導法(オーキシンデグロン法)を開発することで、ユビキチン液滴のクリアランスを制御する分子群の同定、ユビキチン化依存的なタンパク質凝集体形成について検証する。そして各種ストレスで形成されるプロテアソーム液滴に対して、プロテアソーム、p97、RAD23Bの阻害作用を検討し、液-固相転移を評価する。相転移が起こった場合は、経時的な質量分析解析により相転移に関与する分子群を特定し解析する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] TRIP12 promotes small molecule-induced degradation of BRD4 through K29/K48 branched ubiquitin chains.2021
Author(s)
Kaiho-Soma, A., Akizuki, Y., Igarashi, K., Endo, A., Shoda, T., Kawase, Y., Demizu, Y.,Naito, M., Saeki, Y., Tanaka, K., and Ohtake, F.
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Journal Title
Mol Cell
Volume: 81
Pages: 1411-1424.e7.
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Stress- and ubiquitylation-dependent phase separation of the proteasome.2020
Author(s)
Yasuda, S.,* Tsuchiya, S.,* Kaiho, A.,* Guo, Q., Ikeuchi, K., Endo, A., Arai, N., Ohtake, F., Murata, S., Inada, T., Baumeister, B., Fernandez-Busnadiego, R., Tanaka, K. **, and Saeki, Y. ** (*These authors contributed equally, **Corresponding authors)
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Journal Title
Nature
Volume: 578
Pages: 296-300
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Loss of Parkin contributes to mitochondrial turnover and dopaminergic neuronal loss in aged mice.2020
Author(s)
Noda, S., Sato, S., Fukuda, T., Tada, N., Uchiyama, Y., Tanaka, K., and Hattori, N.
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Journal Title
Neurobiol Dis.
Volume: 136
Pages: 104717
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Two distinct modes of DNMT1 recruitment ensure stable maintenance DNA methylation.2020
Author(s)
Nishiyama, A,, Mulholland, C.B., Bultmann, S., Kori, S., Endo, A., Saeki, Y., Qin, W., Trummer, C., Chiba, Y., Yokoyama, H., Kumamoto, S., Kawakami. T,, Hojo. H,, Nagae,. G, Aburatani, H., Tanaka, K., Arita, K., Leonhardt, H., and Nakanishi. M.
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Journal Title
Nat Commun.
Volume: 11
Pages: 1222
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Critical role of mitochondrial ubiquitination and the OPTN-ATG9A axis in mitophagy.2020
Author(s)
Yamano, K., Kikuchi, R., Kojima, W., Hayashida, R., Koyano, F., Kawawaki, J., Shoda, T., Demizu, Y., Naito, M., Tanaka, K., and Matsuda, N.
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Journal Title
J. Cell Biol.
Volume: 219
Pages: e201912144
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Ribosomal protein S7 ubiquitination during ER stress in yeast is associated with selective mRNA translation and stress outcome.2020
Author(s)
Matsuki Y, Matsuo Y, Nakano Y, Iwasaki S, Yoko H, Udagawa T, Li S, Saeki Y, Yoshihisa T, Tanaka K, Ingolia NT, Inada T.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 10
Pages: 19669
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A substrate-trapping strategy to find E3 ubiquitin ligase substrates identifies Parkin and TRIM28 targets.2020
Author(s)
Watanabe M, Saeki Y, Takahashi H, Ohtake F, Yoshida Y, Kasuga Y, Kondo T, Yaguchi H, Suzuki M, Ishida H, Tanaka K, Hatakeyama S.
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Journal Title
Commun Biol.
Volume: 3
Pages: 592
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Molecular bases for HOIPINs-mediated inhibition of LUBAC and innate immune responses.2020
Author(s)
Oikawa D, Sato Y, Ohtake F, Komakura K, Hanada K, Sugawara K, Terawaki S, Mizukami Y, Phuong HT, Iio K, Obika S, Fukushi M, Irie T, Tsuruta D, Sakamoto S, Tanaka K, Saeki Y, Fukai S, Tokunaga F.
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Journal Title
Commun Biol.
Volume: 3
Pages: 163
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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