2020 Fiscal Year Annual Research Report
“記憶の局所フィードバック仮説”ーその中枢単一同定ニューロンでの検証
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19H00998
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
吉原 基二郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティアセンター, 上席研究員 (80222397)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 記憶 / シナプス可塑性 / ショウジョウバエ / フィーディング・ニューロン / ローカルフィードバック仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニューロン同士が活動依存的につながって記憶をつくる際、そのお互いを選ぶ仕組みの候補として、研究代表者は”ローカルフィードバック仮説”を案出した(Science,2005)。この仮説で想定される細胞変化を記憶時の行動変化に対応させるため、ショウジョウバエの脳内で摂食行動を司令する”フィーディング・ニューロン”を同定した(Nature, 2013)。このフィーディング・ニューロン上につくられる記憶時の変化をとらえるため、研究協力者である、申請者の研究室の櫻井晃主任研究員と協力し、フィーディング・ニューロンの活動を観察しながら機械刺激を摂食行動に連合するパブロフの条件付けの実験系を確立した。条件付け成立後には、条件刺激のみによってフィーディング・ニューロンが発火することをGCaMP6mの蛍光増大として前年度までに観察した。これは、条件反射成立にともない、新しい神経回路が形成されたことを示唆する。本年度は、光遺伝学を用いてフィーディング・ニューロンの活動を制御することにより、フィーディング・ニューロンの活動がこの条件付けに必須であることをみいだした。このことは、条件刺激によるシグナルがフィーディング・ニューロンへと入力し、ポストシナプスとしてのフィーディング・ニューロンの活動がその変化を制御していると考えるとよく説明できる。よって、このパブロフの条件反射をつくる脳内のしくみは、フィーディング・ニューロンの情報処理の変化によるものと結論した(Curr. Biol., 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パブロフの条件反射をつくる脳内のしくみは、フィーディング・ニューロンの情報処理の変化によるという論文を発表するに至った(Curr. Biol., 2021)。これは、神経科学の分野でキーとなる重要な発見と考えられるので、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の計画により、このパブロフの条件反射をつくる脳内のしくみは、フィーディング・ニューロンの情報処理の変化によるものと結論した。このことは、とりもなおさず、フィーディング・ニューロン上に記憶がつくられていることを意味するので、その細胞学的実体を直接観察することを可能にする。そこで、リアルタイムでフィーディング・ニューロンの変化を追跡することによって、記憶の細胞学的実体の発見を試みる。記憶の細胞学的実体を同定することに成功すれば、そこにおいて、”ローカルフィードバック仮説”検証のための実験を行う可能性が拓ける。
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