2019 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化炭素を介したドーパミン放出機構の解明とその生物学的役割の同定
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19H01013
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
齊藤 実 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 副所長 (50261839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドーパミン / ショウジョウバエ / 学習記憶 / シナプス伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのex vivoイメージング解析から、後シナプスキノコ体神経細胞が産生するCOにより誘導されるドーパミン(DA)のオンデマンド伝達には、細胞外からのCa2+流入を必要とする拡散性伝達と異なり、細胞内Ca2+ストアからのリアノジン受容体(RyR)を介したCa2+流出が必要なことを見出した。これまでのex vivoからの知見をin vivoで検証するため、嫌悪性匂い条件付けの各タイミングでDAの放出を熱遺伝学的手法により阻害したときの影響を調べた。その結果条件付け中のDA放出でなく、条件付け終了直後からのDA放出が嫌悪性匂い条件付けの成立に必要なこと、加えて記憶想起時にもDA放出が必要なことを見出した。DAを受容する記憶中枢キノコ体は解剖学的特徴から16の区画領域 (pedc, α1-3, α'1-3, β1-2, β'1-2, γ1-5) に分類できる。そこでどの領域への連合後DA放出が条件付けの成立に、どの領域への想起時DA放出が記憶想起に必要か?投射領域特異的にDA放出を熱遺伝学的に阻害して調べた。その結果、特にキノコ体のγ 1領域へのDA放出が条件付けの成立に必要なこと、記憶想起時にはキノコ体α2とα’2領域へのDA放出が必要なことを見出した。これらを裏打ちするDA放出が実際に起こっているかを顕微鏡下に固定したハエでin vivoイメージングにより調べた。その結果、キノコ体γ 1領域では条件付け中のDA放出だけでなく、条件付け終了直後から起こるDA放出(連合後DA放出)を見出した。またα2とα’2領域では記憶想起時にDA放出が起こることも見出した。さらにCO産生酵素やRyRの阻害剤に加えてGSK3の阻害剤により連合後DA放出が特異的に抑制出来ることも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vivo機能イメージング系を開発してドーパミンの放出を調べようとしたが、当初予想に反し、ex vivoでの発現ドライバーがin vivo解析に必要な量の遺伝子を発現しないことが判明した。本研究にドーパミンの定量的な解析は不可欠なため、新たに発現ドライバーを作成する必要が生じた。また系の確立と解析の各過程で新規ドライバーの有効性を確かめるため、各過程の実施期間を当初より延長する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遅延の原因がex vivoで利用した発現系統のin vivoイメージングへの不適応にあったことを鑑み、今後は発現ドライバーを検証するだけでなく、発現遺伝子固有の発現効率も考慮して複数の発現系統を用意して行う。in vivoイメージングでみられた発現系統の問題は行動解析には及ばないため、行動解析はこのまま研究計画通りに進めていく。DA神経細胞でのRyR、キノコ体神経細胞でのHOを化学遺伝学的手法により阻害することで連合後DA放出の選択的抑制が可能か?を検証する一方、条件付け中のDA放出の分子神経機構を明らかにする。各種膜電位依存性カルシウムチャンネル、興奮性アミノ酸受容体、ニコチン受容体阻害剤を用いた薬理学的検索を行う。その結果をもとにDA神経細胞の遺伝学的操作を行い、連合中DA放出と連合後DA放出の分子遺伝学的機序の違いを明らかにする。これらに加え連合後DA放出に必要なGSK3が嫌悪性匂い条件付けにも必要か、これがどの神経細胞で働いているかを行動遺伝学・及びイメージング解析により解明していく。
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