2020 Fiscal Year Annual Research Report
高分子間相互作用を制御する合成機能分子を論理的・効率的に創出する方法論の確立
Project/Area Number |
19H01014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
周東 智 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (70241346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 瑞貴 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (20507173)
小松 康雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副研究部門長 (30271670)
藤原 広一 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (40837853)
後藤 佑樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70570604)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シクロプロパン / 三次元多様性 / 高分子間相互作用 / ペプチドミメティクス / 環状ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
創薬においてランダムスクリーニングが汎用されている現在、標的分子に選択的に結合する化合物を偶然に依存することなく論理的に創出する方法論の確立は、アカデミアとしての化学系薬学が取り組むべき最重要課題である。このような現状に鑑み、本研究は、独自に考案したシクロプロパンの構造特性に基づく三次元多様性を鍵概念とする論理的分子設計を、タンパク質間相互作用(PPI)等の高分子間相互作用の制御へと展開することが可能であることを実証し、高分子間相互作用を制御する合成医薬創出の論理的方法論を提示すること目的とする。また、有機合成化学に裏付けられた独自の分子設計戦略が、本研究の独創性に優れる利点である。 本年度の主な実績は以下の通りである。課題1. 汎用性αヘリックスミメティクスの創出研究においては、精密な配座制御を施した独自のスピロシクロプロパン骨格scaffold II に基づき、制癌標的であるBcl-2ファミリータンパク質を標的とするミメティクスを設計・合成した。課題2. 細胞膜透過性PPI制御環状ペプチドの創出研究においては、制癌標的であるSTAT3阻害剤の獲得を目指して、膜透過ユニットcisNfCfを導入した環状ペプチドを種々合成し、膜透過性を確認するとともに、STAT3阻害活性の初期的評価を実施した。課題3. 三次元多様型RaPIDシステムの構築と応用に関する研究においては、ホスホグリセリン酸異性化酵素に対する強力な阻害剤を見出した。課題 4. ネガマイシン(NM)をプロトタイプとするリードスルー誘起分子の創出研究においては、シクロプロパンユニットを導入した 3-エピデオキシNM誘導体を種々合成し、リードスルー誘起活性を評価した。課題 5. シクロプロパンを配座制御素子とする新規機能性核酸の創出研究においては、シクロプロパンヌクレオシドを大量合成し、それを組み込んだオリゴヌクレオチドを合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 汎用性αヘリックスミメティクスの創出:前年度において、スピロシクロプロパン骨格scaffold IIを設計し、その基本的合成法を確立した。今年度は、本scaffold IIに基づき、有力な制癌標的であるBcl-2ファミリータンパク質を標的とするミメティクスを設計し、16種を合成した。 2. 細胞膜透過性PPI制御環状ペプチドの創出:三次元的多様性を備えた一連のシクロプロパンアミノ酸 (CPA) をとしてcisNfCfを導入した環状ペプチドが、極めて高い細胞膜透過性を有するという独自の知見に基づき、有力な制癌標的であるSTAT3に対する阻害剤の創出を目論んだ。即ち、既知のSTAT3阻害剤の構造情報に基づき、cisCfNf導入した環状ペプチドを種々設計・合成した。人工膜PMPAでの膜透過性を検証した結果、顕著な透過性を有する環状ペプチドを同定した。現在STAT3阻害活性を検証している。 3. 三次元多様型RaPIDシステムの構築と応用:三次元多様性を備えた新規シクロプロパンアミノ酸(CPU1-4,ent-CPA1-4)を合成し、RaPIDシステムにより新規環状ペプチドライブラリー構築した。ホスホグリセロリン酸異性化酵素を標的とするスクリーニングを実施した結果、nMレベルの阻害活性を有する新規環状ペプチドを見出した。 4. ネガマイシンをプロトタイプとするリードスルー誘起分子の創出:ネガマイシン(NM)がナンセンス変異挿入終始コドンを読み飛ばすリードスルー活性を有することに着目し、リードである3-エピデオキシNM構造にシクロプロパンユニットを導入した配座制御類縁体を種々合成した。現在、リードスルー活性を評価中である。 5. シクロプロパンヌクレオシド核酸の創出:前年度大量合成した新規光学活性シクロプロパンヌクレオシドを組み込んだオリゴヌクレオチドを合成した。しかしながら、期待した二本鎖安定化効果は確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の通り、基本的には当初の計画に基づき以下の研究を推進する。さらに、予備的検討を終えている、ホールダマーに関する研究を新たに本格的に展開する。 1. 汎用性αヘリックスミメティクスの創出:前年度合成したBcl-2ファミリータンパク質を標的とするミメティクスについて、次年度は、1) in vitro系で評価し、2) 三次元構造を計算化学・NMRによって解析し、3) それらの結果に基づき、さらなる高活性化を目的とする新たなミメティクスを設計し、4) その合成ルートを確立する. 2. 細胞膜透過性PPI制御環状ペプチドの創出:昨年度は、制癌標的であるSTAT3に対する阻害剤創出を目論み、cisCfNf導入環状ペプチドを10種合成し、既にcaco2細胞系での膜透過性を確認し、現在、in vitroでのSTAT3阻害活性を評価中である。次年度は、評価結果を踏まえ、さらに膜透過性とSTAT3阻害に優れる新規cisCfNf導入環状ペプチドを10種度設計・合成する。 3. ネガマイシンをプロトタイプとするリードスルー誘起分子の創出:ネガマイシン(NM)はナンセンス変異挿入終始コドンを読み飛ばすリードスルー活性を有する。既に8種のシクロプロパンユニットを導入した 3-エピデオキシNM誘導体から、リードを見出した。次年度は、昨年度に引き続きシクロプロパン歪みに基づく更なる配座制限を施した類縁体を合成し、一層の高活性化を図る。 4. 新規ホールダマーの創出と応用:昨年度設計・合成したシクロプロパン歪みに基づく配座制御ユニットのオリゴマーを合成し、ホールダマー誘起能を検証する。具体的には、NMR、CD、ありははX線結晶構造解析によって、三次元構造を明らかにする。 5. シクロプロパンヌクレオシド核酸の創出:光学活性シクロプロパンヌクレオシド (CPN1-4) の大量合成を実施し、ホモオリゴマーを合成する。さらに、シクロプロパンを配座制御素子とする新規な二本鎖核酸クロスリンク法の開発を検討する
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Intracellular build-up RNAi with single-strand circular RNAs as siRNA precursors,2020
Author(s)
Y. Kimura, Z. Shu, M. Ito, N. Abe, K. Nakamoto, F.Tomoike, S. Shuto, Y. Ito, H. Abe,
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Journal Title
Chem. Commun.
Volume: 56
Pages: 466-469
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Discovery of [1,2,4]Triazolo[1,5a]pyridine Derivatives as Potent and Orally Bioavailable RORt Inverse Agonists.2020
Author(s)
2.R. Nakajima, H. Oono, S. Sugiyama, Y. Matsueda, T. Ida, S. Kakuda, J. Hirata, A. Baba, A. Makino, R. Matsuyama, R. D. White, R. Wurz, Y. Shin, X. Min, A. G.-Perez, Z. Wang, A. Symons, S. K. Singh, S. R. Mothe, S. Belyakov, A. Chakrabarti, S. Shuto,
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Journal Title
ACS Med. Chem. Lett.
Volume: 11
Pages: 528-534
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Design and Synthesis of Benzene Congeners of Resolvin E2, an Proresolving Lipid Mediator, as Its Stable Equivalents.2020
Author(s)
3.Y. Murakami, H. Fukuda, R. Muromoto, K. Hirashima, K. Ishimura, K. Fujiwara, J. Ishihara, T. Matsuda, M. Watanabe, S. Shuto,
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Journal Title
ACS Med. Chem. Lett.
Volume: 11
Pages: 479-484
DOI
Peer Reviewed
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