2019 Fiscal Year Annual Research Report
AIDのRNA編集による抗体遺伝子多様化機構の解明
Project/Area Number |
19H01027
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本庶 佑 京都大学, 高等研究院, 特別教授 (80090504)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 牧 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20400690)
Begum NasimAra 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (80362507)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | AID / RNA編集 / 免疫グロブリン遺伝子 / トポイソメラーゼ 1 |
Outline of Annual Research Achievements |
AIDによるDNA切断機構については、Ago2に結合するmRNAとmiRNAをRNAリガーゼにより結合、得たRNAからライブラリーを作成し、高速シーケンスを行った。AIDの活性化に伴いTop1mRNAに結合するmiRNAの候補を得た。DNA切断に必要な分子hnRNP KのRNA結合モチーフを解析し、その結果を論文にまとめ発表した(論文1)。 DNA修復に重要なRNA結合タンパク質hnRNP Lの結合RNA分子の解析を継続しており、高速シーケンス法によりAIDによるRNA編集が起きていると考えられる複数の候補分子を得たため、候補分子の機能解析を継続した。ESPN RNAがAIDにより編集されることをデジタルPCRを用いて確認した。ESPN RNAの編集型と非編集型の過剰発現を試みた。AIDによるRNA編集の試験管内モデル確立を計画し、コントロールとしてAPOBECやADARによるRNA編集のモニター系が働くことを確認した。 DNA修復の側面に関して、細胞内dNTPプールがDNA修復過程に与える影響を、dNTP分解活性を持つSAMHD1の解析を通して明らかにした。SAMHD1の機能欠損によりdNTPプールが蓄積することにより、DNA修復過程が阻害され、クラススイッチ組換え(CSR)の効率が損なわれることを明らかにし、発表した(論文2)。 IgH遺伝子S領域同士のDNAシナプス結合はCSRに必要なステップであり、かつAIDのC末端に大きく依存するため、S領域に局在タンパク質を解析していたところ、新たにDNAシナプス結合に大きく関与するRNA結合分子Xを同定した。これは興味深いことにRNA結合と修飾活性を持つ酵素でもあり、AIDによるRNA編集との関連を解析していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のため、「当該年度の概要」とほぼ同様である。 Top1 mRNAに結合するmiRNA候補を得たため、現在、そのmiRNAの機能を検証している。 また、DNA切断に必要な分子hnRNP KのRNA結合モチーフを解析した。3つのKHドメインに存在するGXXGモチーフと、リンカードメイン(KIドメイン)に存在する5つのRGGモチーフはCSRやSHM、IgH遺伝子とcMyc遺伝子との転座などのAID依存性のDNA切断効率を制御していた。これらモチーフの変異により代表的なRNAとの結合能力が損なわれるため、hnRNP KとAIDとの相互作用が減弱し、DNA切断効率が減少すると考えられた。また、モチーフの変異により核へのhnRNP K蓄積が大きく減少することもAID依存性のDNA切断効率が減少する要因と考えられた。これらをまとめ、発表した(論文1)。 DNA修復に重要なRNA結合タンパク質hnRNP Lの結合RNA分子に起きているAIDによるRNA編集について、ノックダウン実験を行い、機能的にAID依存性のDNA修復に貢献するか否か、候補分子の機能解析を継続した。 シナプス結合に関わる分子Xは、そのノックダウンによりCSRは減少するもののDNA切断効率や体細胞変異(SHM)は逆に増加しており、3Cアッセイによるシナプス形成だけが損なわれている。AIDの発現やIgH遺伝子のノンコーディングRNAに変化は与えないことも明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
Top1 mRNAに結合するmiRNAを明らかにする。それらがAIDのRNA編集により産生されるのか否か、そのmiRNAの周囲の配列や、miRNAを支配する近傍のスーパーエンハンサーとの関連を検討し、AIDの関与を明らかにする。 hnRNP Kの結合RNA分子のいずれかがAIDによるDNA切断効率に貢献すると予想されるため、hnRNP KのRNA免疫沈降法により結合RNAライブラリーを作成、AIDの活性化前後で結合RNA分子を比較し、ターゲットを絞り込み、DNA切断効率に貢献するRNA分子を同定する。 また、IgH遺伝子内のDNAシナプスに関与する分子XはRNA修飾酵素活性を持つ側面もあり、AIDとのタンパク質相互作用が重要なのか、あるいはXがいずれかのRNA分子を修飾することが重要なのか、さらにAIDによるRNA編集と関連するのか、その詳細な分子機構を明らかにする。 DNA修復に重要なRNA結合タンパク質hnRNP Lの結合RNA分子の解析を継続しており、高速シーケンス法によりAIDによるRNA編集が起きていると考えられる複数の候補分子を得た。RNA編集の候補分子を効率よくスクリーニングすることが可能なデジタルPCRを用いて、これらの候補分子の確認を行う。これらが実際にDNA修復にどのように関わっているか、その解析を発展させ、AIDによるRNA編集がDNA修復を制御する分子機構を明らかにする。 DNAシナプス形成に関わるXはタンパク質としてAIDと相互作用するのか、AIDのC末端は二量体化にも重要であることから、Xが二量体化を制御するのか、あるいはRNA修飾酵素としていずれかのRNAを修飾し、さらにAIDによる編集が起きる結果シナプスを制御するのか、など、このXの解析を通じて未知のDNAシナプス結合の分子機序を明らかにすることが期待される。
|