2019 Fiscal Year Annual Research Report
抑制性免疫補助受容体PD-1の新規制御メカニズムの解明
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19H01029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 拓 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (00362468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫 / 免疫補助受容体 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞の活性化と機能は、抗原受容体刺激に加えて、T細胞上に発現する様々な興奮性および抑制性の免疫補助受容体によって厳密に制御されている。抑制性の免疫補助受容体であるPD-1とCTLA-4を標的としたがん免疫療法が多様な種類のがんに対して劇的な治療効果を示したことから、近年、免疫補助受容体の機能が大きな関心を集めている。しかし、これらの抑制性免疫補助受容体の機能がどのように制御され、病原微生物等の異物に対しては強力な免疫応答が惹起される一方、自己組織やがん細胞に対する免疫応答が抑制されているのかについては、ほとんど分かっていない。そこで、免疫補助受容体の機能制御メカニズムの解明を目的として本研究を実施している。 PD-1が抑制する対象をどのように選別しているのかについては、従来、PD-1およびそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2が発現するタイミングおよび発現細胞の種類などで説明が試みられてきたが、必ずしも満足の行く説明では無かった。そこでPD-1が抑制機能を発揮する条件を詳細に検討したところ、抗原提示細胞上でCD80がPD-L1と隣り合わせに結合(シス結合)することにより、PD-L1とPD-1の結合を阻害し、PD-1の機能を制限していることを見出した。PD-L1とシス結合できないCD80変異体、およびCD80とシス結合できないPD-L1変異体のノックインマウスを作製して解析したところ、抗原提示を担う樹状細胞へのPD-1の結合が増強していることを確認した。また、両ノックインマウスではモデル抗原に対するT細胞応答、自己抗原の免疫による自己免疫疾患の誘導およびがん免疫応答が減弱していることを見出した。これらの結果から、PD-L1とCD80のシス結合によりPD-1の機能を制限することが、有益な免疫応答の誘導に必須であることが解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、免疫補助受容体の機能が生体内において制御されるメカニズムの解明を目的とする。研究実績の概要に記載の通り、これまでに抑制性免疫補助受容体PD-1の機能を制御するメカニズムを発見し、T細胞応答における意義を解明することに成功していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、これまでに、シスPD-L1/CD80結合によるPD-1の機能制限が至適なT細胞応答に必須であることを解明した。今後は、本PD-1機能制限機構がB細胞応答に与える影響を解析するとともに、自己免疫やがん免疫における意義をより詳細に解析する。また、CD80をリガンドとするCD28およびCTLA-4との関連をより詳細に解析する。さらに、人為的にPD-1の機能制限を解除する方法を確立し、本PD-1機能制限機構がどのタイミングで、どの程度、どのような影響を与えているかを解析する。
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Research Products
(36 results)