2019 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間相互作用に着目したNASHの発症・進展機構の解明と医学応用
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19H01054
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小川 佳宏 九州大学, 医学研究院, 教授 (70291424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国府島 庸之 九州大学, 大学病院, 助教 (00650748)
宮澤 崇 九州大学, 大学病院, 特任講師 (30443500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NASH / 細胞間相互作用 / 肝実質細胞 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病・肥満を背景として非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やNASH肝癌の罹患率が急増しており、脂肪肝からNASHを経て肝癌を発症する一連の経時変化を踏まえたNASHの病態解明と予防・治療戦略の開発は喫緊の課題である。我々は既に、脂肪肝からNASHを経てほぼ全例が肝癌を発症するNASHマウスの開発に成功し、過剰な脂肪蓄積により細胞死に陥った肝実質細胞をマクロファージが取り囲んで貪食・処理する特徴的な組織像(hepatic crown-like structures(hCLS))を同定し、hCLSが起点となって炎症の慢性化と線維化を誘導することを明らかにした。本研究では、肝臓の炎症の慢性化において認められるhCLSに着目し、NASHマウスを用いた基礎的研究と臨床検体を用いた臨床研究によりNASHとNASH肝癌の発症・進展機構を解明する。
本年度は、hCLSを形成するマクロファージにおいて高発現するC型レクチン型病原体センサーであるDectin-2を欠損したマウスとNASHマウスの交配実験により、NASHの病態進展におけるDectin-2の病態生理的意義を検討した。又、ミトコンドリアの分裂に重要なmitochondrial fission factor(Mff)を肝細胞特異的に欠損するマウスに高脂肪食を負荷すると、肝臓からの中性脂肪分泌の低下とERストレスの亢進による肝細胞死、炎症細胞浸潤からhCLSの増加を伴うNASH様変化を呈することを明らかにした。一方、NASHの発症・進展における炎症細胞の動態の詳細を明らかにするために、通常食あるいは高脂肪食負荷後のNASHマウスの肝臓より非実質細胞を採取し、網羅的シングルセル解析により、NASHマウスの肝臓において特徴的に増加するマクロファージを含むクラスターを見出した。ヒトNASH及びNASH肝癌の臨床検体の収集を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NASHマウス及びその他の肝細胞特異的Mff欠損マウスやDectin-2欠損マウスなどの遺伝子改変マウスの導入と交配実験についてはほぼ計画通りに遂行できている。NASHマウスの表現型解析のためには20週間の高脂肪食負荷が必要となるため、解析に至るまでに長い時間の飼育を必要とするが、動物飼育スペースと実験スペースを確保することにより、順調に実験計画が進捗している。NASHの発症・進展における肝細胞死と酸化ストレス、ERストレス、ミトコンドリア機能障害の時空間的関連を明らかにするために、NASHマウスの肝臓検体の経時的な採取を開始している。
hCLSの構成細胞腫と細胞間相互作用に関する基礎研究に関連して、20週間高脂肪食を負荷したNASHマウスの肝臓組織切片より、hCLS構成細胞のみの分取を試みたが、20週間高脂肪食負荷した場合は肝臓における線維化が強いため、hCLS構成細胞の採取が困難であった。今後はもう少し短い負荷期間における検討の予定である。又、NASHマウスの肝臓より採取した非実質細胞を用いた網羅的シングルセル解析については、データの解析方法の習得にやや時間を要したが、順調に解析できる状態になった。
ヒト臨床検体を用いたNASH及びNASH肝癌の発症・進展機構の解明のため、ヒトNASHとNASH肝癌の生検検体や手術検体の収集を開始しているが、一部サンプルの収集に遅れが生じている。今後は関連病院を含めた他施設からの検体収集も進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
NASHの病態進展におけるC型レクチン受容体型病原体センサーであるDectin-2の意義の解明については、今後、順次サンプリングして、肝臓における炎症性サイトカインや肝線維化マーカーの遺伝子発現、免疫組織学的解析によるhCLSの数や肝線維化の程度を定量的に評価する予定である。Dectin-2は脂肪組織などの肝臓以外の代謝臓器に集積するマクロファージにも発現することが知られているため、今後は肝臓以外の代謝臓器におけるCLSの検討や、全身の糖脂質代謝の検討も進めていく。
NASHの発症・進展における肝細胞死と酸化ストレス、ERストレス、ミトコンドリア機能障害の時空間的関連を明らかにするために、NASHマウスの肝臓を経時的にサンプリングし、免疫組織学的検討や関連遺伝子発現の検討、電子顕微鏡によるミトコンドリアの経時的な形態変化を解析予定である。hCLSの構成細胞腫と細胞間相互作用に関する基礎研究では、hCLSの構成細胞のみを採取可能な条件検討を終了後、hCLS構成細胞とそれ以外の間質細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を予定している。
網羅的シングルセル解析により同定したNASHマウスの肝臓で特徴的に増加するマクロファージを含むクラスターについては、このクラスターのみで特異的に発現する遺伝子の解析を進めている。本クラスターに特異的に発現する遺伝子を明らかにし、免疫組織学的解析やFACSによる解析により、本クラスターに属するマクロファージ集団のNASHの進展過程における発現変動並びに発現部位の同定をすすめていく予定である。一方、臨床検体の収集も順調に進捗しているので、今後は網羅的遺伝子解析や組織学的検討、メタボローム解析についても順次進める予定である。
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[Journal Article] Dipeptidyl peptidase-4 inhibition prevents nonalcoholic steatohepatitis-associated liver fibrosis and tumor development in mice independently of its anti-diabetic effects2020
Author(s)
M. Kawakubo, M. Tanaka, K. Ochi, A. Watanabe, M. Saka-Tanaka, Y. Kanamori, N. Yoshioka, S. Yamashita, M. Goto, M. Itoh, I. Shirakawa, S. Kanai, H. Suzuki, M. Sawada, A. Ito, M. Ishigami, M. Fujishiro, H. Arima, Y. Ogawa, and T. Suganami
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 10
Pages: e983
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Upregulation of cancer-associated gene expression in activated fibroblasts in a mouse model of non-alcoholic steatohepatitis2019
Author(s)
M. Asakawa, M. Itoh, T. Suganami, T. Sakai, S. Kanai, I. Shirakawa, X. Yuan, T. Hatayama, S. Shimada, Y. Akiyama, K. Fujiu, Y. Inagaki, I. Manabe, S. Yamaoka, T. Yamada, S. Tanaka, and Y. Ogawa
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: e19601
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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