2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of information medicine through enrichment of information environment
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19H01093
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
本田 学 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 部長 (40321608)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 情報科学 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 超高周波音 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然環境音に含まれる人間の耳に聴こえない超高周波が、内受容感覚や自律神経系と密接な関係のある耐糖能におよぼす影響を、糖尿病の標準的な検査法である経口ブドウ糖負荷試験をもちいて検討した。糖尿病の治療を受けていない健康な研究参加者25名を対象として、以下の3つの異なる音条件のもとで経口ブドウ糖負荷試験を実施した。1.超高周波を豊富に含む自然環境音(Full-range sound; FRS)、2.同じ自然環境音から20kHz以上の超高周波を除外した音(High-cut sound; HCS)、3.暗騒音のみ(No sound; NS)。標準的な経口ブドウ糖負荷試験の手順に従って、75グラムのブドウ糖を含む溶液を飲んだ後、15分ごとに2時間血糖値を計測し、音条件の違いによってブドウ糖負荷後の血糖値上昇がどのように変化するかを調べた。 その結果、超高周波を豊富に含む自然環境音(FRS)を聴いている時には、全く同じ音から超高周波だけを取り除いた自然環境音(HCS)を聴いている時や、暗騒音のみの時(NS、通常の検査環境)と比較して、ブドウ糖を摂取した後の血糖値の上昇が顕著に抑えられることが明らかになった(反復測定分散分析による音条件主効果P = 0.000012, FRSとHCSの比較 P = 0.000012, FRSとNSの比較 P = 0.0018)。加えて、超高周波を含む音による血糖値上昇の抑制効果は、年齢の高い人やHbA1cの高い人(日常的に血糖値が高めの人)など、糖尿病のリスクが高い人でより顕著に認められた。 今回の発見は、音や光といった感覚情報が脳神経系を介して治療効果や予防効果をもたらす〈情報医療〉を切り拓くものであり、物質医療ではアプローチすることが難しい領域の治療を補完することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室実験については、おおむね順調に進展しているが、認知症行動・心理症状を対象とした臨床研究は、コロナ禍の影響を受けて、当初実施を予定していた施設での研究ができなくなったため、新たに研究協力機関を探すところから再開しており、1年間の遅れが見られたため、繰越申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
・健常者を対象とした情報環境エンリッチメントの作用機序の解明 自然環境音の超高周波成分が自律神経系に及ぼす影響を、心拍変動、皮膚温、皮膚伝導度、呼吸などのマルチモーダル計測を用いて明らかにする。 ・精神・神経疾患を対象とした情報環境エンリッチメントの臨床効果の検証 前年度に実施した自然環境音の超高周波成分が健常者の耐糖能に及ぼす影響の検討に加えて、長期間のエンリッチメントが糖尿病患者、高血圧症患者、高脂血症患者の疾患の病勢に及ぼす影響を明らかにする。加えて、民間の認知症ケアハウスの協力を得て、認知症行動・心理症状に対する情報エンリッチメントの影響を明らかにするための臨床研究を継続実施する。
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Research Products
(2 results)