2020 Fiscal Year Annual Research Report
Technology for Embodiment of Augmented Human
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19H01121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 太郎 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00260521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 正紘 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (40621652)
安藤 英由樹 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (70447035)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人間機能拡張 / ニューロフィードバック / 意識下身体応答 / Extra Body / Mismatch Negativity / Scale Conversion / Telexistence / Ownership |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に続いてニューロフィードバック技術を用いた身体拡張の促進技術の改良と拡張テレイグジスタンスを用いた追加身体の構築技術の開発を進めながら,新たに身体意識の形成原理について仮説の検証と,現象説明への適用を試みた. ニューロフィードバックについて,本年度は自己所有感の発生機序仮説として「皮膚のトポロジーの連続性と閉領域境界」としての性質に着目し,仮説の検証を進めた.皮膚温度感覚の中性化による感覚遮断効果を利用したトポロジーの部分破壊による自己所有感の分断と統合について検証する実験系を構築した. 意識形成の数理モデルとしては,昨年度から続けてスツルムリウビル型連想記憶回路を軸においた機能仮説とシミュレーション検証を進めた.既知の興奮性の情報伝達経路と並行して皮質の面方向へのGABA抑制性結合が形成するウィルソンコーエン型の振動場による情報伝達経路形成の可能性について検討した.この経路の神経結合には学習的な可塑性は確認されないものの,むしろその不変性が神経場の位相保存性を保証することによって,波面再合成定理と器質的な位相距離のみから,白質回路との相互作用によって感覚の低次野から高次連合野に至る領野間構造を自己組織的に構築することが可能な数理モデルを提案することに成功した. さらに本年度は新たな追加身体としての遠隔型のハンドーアイシステムを想定し,これを介した没入作業環境を開発し,スケール変換と速度変換を制御軸に置いた身体拡張技術について開発と検証を行った.スケール変換においては,フォロワー機構の等価比重の軽減によって,等スケールでの追従性の不足を補いうる要素を検証した.加えて速度変換によって小さな身体動作で等価的な動作を可能にするという拡張身体の動きの軽快化の効果についても検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響は本研究においても確かに存在し,発表を予定していた国際会議の一つ(SFN2020)が中止されたことや,感染対策とリモートワークの増加によって,多人数での共同作業に関する遅れは確実に生じている.このため予定していたテレイグジスタンス実験装置の開発進捗の遅れや,被験者実験の実験数追加実施の繰り延べなど,研究進捗が滞った面もあった.しかしその一方で,リモート会議によるディスカッションに適した側面,特に数理モデルの理論構築や,個別の要素技術の新規開発などは予定以上の進捗を示しており,特に新しい神経刺激技術に関しては新規特許案件の準備も整うなど,トータルではおおむね順調な進展をしていると捉えている. 特にスツルムリウビル型連想記憶回路モデルの展開において,従来のウィルソンコーエンモデルで欠如していた閉領域境界値問題の時間不変化とその破綻検出についてのモデルは,脳の感覚予測と注意生成のモデルに発展するもので,従来のPredictive Coding仮説に基づく脳波の挙動モデルとも対応関係があり,ニューロフィードバック中の脳波の応答モデルの観点からも,現象の記述性と予測性が期待される.これは前年度から構築している身体機能拡張系を構築する運動計画の数理モデルの基礎原理として発展し得る成果である. また,システムの全体統合に遅れを生じている拡張テレイグジスタンスシステムについても,各要素の開発と検証は順調であり,次年度冒頭からの統合検証が期待される段階である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度までの成果を発展させて,身体意識の形成原理を検証すると共に,これを誘導・再現する技術の構築を進める.ニューロフィードバック技術を用いた身体拡張の促進技術については,体表面への温感の等価刺激による身体消失錯覚を用いて,身体所有感のトポロジカルな連続性の消失印象の誘導とその再構築について検証する.これAgencyとOwnershipの定義をさらに深化させる成果が期待される.「脳全域にわたり統一的に保持される身体意識」は本提案における一つのドグマとも言えるものであり,これを数理的に記述するモデル化をスツルムリウビル型連想記憶回路を用いて検証している.昨年度からの自己運動イメージの時間的離散化過程についての検証を進めると共に,これらの過程が脳の神経場の発達段階において,領野を形成する過程自体が振動場としての定在波形成現象によって自己組織的に構築される現象が予測される.本年度はこれをシミュレーション的に再現し,感覚運動過程の意識表象が自己組織的に発生するモデルを検証する.さらに次年度は本年度開発のハンドーアイシステムを用いて新たに追加身体(ExtraBody)の随意制御の構成を開始する.制御原理としては間接的な身体応答から追加身体を制御する意図の推定を行う「つもり制御」を応用し,追加身体の実時間制御を狙う.従来のつもり制御において運動イメージの定着と身体応答データの抽出に用いていた事前プロセスを,作業行程の順応プロセスに組み込むことで等価的に逐次順応することで,身体意識とその変容をより並列的なプロセスとして捉えたモデル化と制御システムの設計を進める.
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Research Products
(7 results)