2021 Fiscal Year Annual Research Report
マルチモーダルタッチケアロボットの開発と心理学的検証
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19H01124
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小笠原 司 奈良先端科学技術大学院大学, 事務局, 理事・副学長 (30304158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神原 誠之 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10346306)
高松 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 客員教授 (90510884)
松原 崇充 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任准教授 (20508056)
趙 崇貴 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50881653)
丁 明 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (40585840)
佐藤 弥 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, チームリーダー (50422902)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インタラクションロボット / タッチケア / マルチモーダル / 生体情報計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の研究内容に取り組んだ。 (1)触覚によるインタラクション技術開発に関しては、人の手を模したハンドの改良を行った。ハンドの形状や機能を検討するため、再構成可能なハンド機構を製作した。そして、心理・精神的ストレスと人体の体温変化の関係について検討し、動的センシングの有用性について考察した。また、「なでる・さする」動作を計画・実行するタッチケア制御技術に関して、強く摺動動作を実行することなく、軽く触れただけで対象物のテクスチャやマイクロ形状等に関する触覚情報を取得可能なシステムの構成を検討した。 (2) 視覚・聴覚・触覚刺激統合による「話しながらなでる」動作のさらなる詳細な検証を試みた。介抱の際のように相手に快感情を与えるタッチケアを、ロボットで実装するために必要な「話しながらなでる」動作のモデル化を実現するために、人の「話しながらなでる」動作の計測を行った。具体的には、介抱する環境を、人がマネキンをなでることで再現し、「話しながらなでる」動作のなでる動作、話す速度などの計測を行った。計測データを解析することで、話す速度となでる速度に正の相関がある点、なでる動作の折り返しのタイミングと話す文章の文節が一致する傾向があることが明らかになった。 (3)マルチモーダルタッチケアの心理学的検証に関しては、視覚・聴覚によるインタラクション技術開発の項目で開発した対話方法に関して、より効果的な「なでながら話す」動作を検証するために被験者実験による心的変容の主観的・客観的評価に関する実験を行った。昨年度に得た、「話す」のみ、「なでる」のみ、よりも「なでながら話す」動作が人間に効果的な影響を与えることができるという知見を立証するために、追加の被験者実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
触覚によるインタラクション技術開発、視覚・聴覚によるインタラクション技術開発、マルチモーダルタッチケアの心理学的検証の項目に関して研究を進めているが、各項目とも順調に成果を出している。 触覚によるインタラクション技術開発に関しては、まず、従来開発ずみのマニピュレータをマニピュレータに統合したシステムの試作を行った。この試作システムに聴覚の統合を行った。ハンド部については、人の手を模したハンドを製作し、開発したシステムを改良することにより、人体の形状にそった「なでる・さする」滑らかな動作が可能なハンドを実現した。また、接触力に応じて形状が変化する指先にピエゾモータを取り付け、触覚情報を取得する際に振動を印加するシステムを開発した。サンドペーパの番手や微小スリット幅長について、強く摺動動作を実行することなく、軽く触れただけで、摺動動作時と同等以上の精度での触覚情報の取得が可能であることを実験的に確認した。 ロボットによる「話しながらなでる」タッチケアの実現を目的として、人の「話しながらなでる」動作の計測・解析を行った。人が人を介抱する環境を想定して、人がマネキンの背中をなでることで環境を再現し、その際の話しながらなでる動作を計測した。手の動作をカメラで撮影し、画像から手を検出することで、なでる動作の手の速度を、音声データから話した文章を解析し、各音素の発話タイミングを推定した。推定結果より、話す速度となでる速度に正の相関がみられ、なでる動作の折り返しのタイミングと話す文章の文節が一致する傾向があることが明らかになった。 また、対話と触覚によるインタラクションを統合したプロトタイプシステムによる心理学的評価実験も引き続き取り組み、「話す」のみ、「なでる」のみ、よりも「なでながら話す」動作の比較検証を追加で行い、「なでながら話す」が他より人間に効果的な影響を与えること立証した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、3つの項目での検討事項については個々に研究に取り組むとともに、項目間の連携を常に意識しつつ研究に取り組む。 触覚によるインタラクション技術に関して、人の手を模したハンドの改良を行う。人に不快感を与えず興奮させない触れ方の再現をめざし、「指を開き広い範囲で触れる」「指先からゆっくりと触れる」ことを実現するとともに、人に触れるためのエンドエフェクタの設計で重要と考えられる要素について考察する。また、「なでる・さする」動作を計画・実行するタッチケア制御技術に関して、前年度に開発した振動印可型触覚システムの機能拡張を試みる。特に、接触が解除される兆候(初期滑り)の検出の可否について実験検証する。 昨年度に実施した人の「話しながらなでる」動作の計測実験の結果から、動作の特徴量を解析し「話しながらなでる」動作のモデル化を行う。具体的には、なでる速度と話す速度の関係、なでる動作の折り返しと文節の関係などを解析し、任意の速度と対話文を入力として、ロボットの「話しながらなでる」動作を出力するモデルを構築する。「話しながらなでる」動作モデルに基づき、ロボットアームに動作を実装し、評価実験が可能な環境を構築する。さらに、ロボットアームとコンピュータグラフィクスで描かれたバーチャルのロボットを統合したシステムを用いて視覚効果を含む「話しながらなでる」動作が人間に与える心理的影響を調査するための実験環境を整備する。 そして、人の五感に訴えかけるマルチモーダルタッチケアロボットの開発を行い、タッチケアロボットの効果を生体情報計測に基づく心理学的評価により検証する。
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Research Products
(9 results)