2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of quantification methods of radiocesium-bearing materials by their properties and application to contaminated soils
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19H01145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
下山 巌 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (10425572)
山口 紀子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (80345090)
田村 堅志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (80370310)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 放射性セシウム / 土壌鉱物 / CsMP / 珪酸塩ガラス / 熱処理 / 酸処理 / 放射能 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故で放出された放射性核種による環境汚染(現時点ではその主因は放射性セシウム、以後RCsと略記)の解決には、RCsの存在形態や様々な環境中での動態を詳細に解明することが必要である。様々な汚染物中のRCs担体物質には、RCsを収着・固定した鉱物粒子と、破損した原子炉から飛散した放射性ガラス微粒子(CsMP)があるが、この2種類の存在比やその環境・地域依存性などは未だ推測の域を出ない。本研究では、RCs担体物質の諸特性(加熱処理や溶液処理による構造と放射能の変化など)を詳細に調べ、その違いをもとに試料中のRCs担体物質の存在比を定量的に見積もる手法の確立を目指す。 本年度は、これまでわかっているCsMPと鉱物粒子の加熱処理による放射能損失特性の違いに着目し、これを用いて実汚染土壌のIPオートラジオグラフィに見られる輝点(RCsの濃集粒子に相当)が加熱によりどのように変化するかで、その粒子の正体が判別できるかを調べた(CsMPの方がより低温でRCsを放出することがわかっている)。しかしながら、IPの各輝点強度の温度依存性は明瞭なバイモーダルな分布を示さず、加熱処理による判別法はあまり有望でないと判断された。 一方、CsMPとRCsを吸着・固定した鉱物粒子の溶解特性、特にそのpH依存性を調べた。CsMPはpH=1程度の熱塩酸ではあまり溶解しないが、RCsを固定した黒雲母やスメクタイトなどは同じ酸処理条件で容易に溶解し、RCsが溶出することが明らかになった。これによりいくつかの形態の汚染試料中のCsMPと鉱物粒子の存在比をかりの精度で定量的に見積もることができた。 また本年度はこれ以外に、CsMPの化学組成に対する新しい知見(Naの存在)やCsMP中の鉄(Fe)の価数がほとんど2価であることを明らかにし、論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究課題で設定した"試料中の各Cs担体物質の存在割合を定量的に見積もる手法の開発・提案"という大きな目標をほぼ本年度中に達成することができた。これには、ここ2,3年続けてきたCsMPの溶解特性を解明する研究で得た結果からの寄与が大きい。これより次年度は国内の多くの研究機関と連携し、福島県地方を始め様々な地域や試料形態におけるRCs担体物質の定量的な解明に多くの新しい成果を出すことが期待でき、福島県地方や関東地域の汚染の実態解明が大きく前進するはずである。また本年度はこれ以外に、CsMPとRCs担体鉱物粒子の放射能分布に関する新しい知見についても成果を出し、論文化した。これは、これまで提唱されてきたような放射能強度からRCs担体物質を判別することは難しいことを示したものである。さらにCsMPの化学組成としてNaが主要なアルカリ成分であること、またその鉄(Fe)の価数がほとんど2価であることを示したことは、事故当時CsMPが形成された炉内環境を推定する新たな知見を与えると共に、現在東京大学で進められているCsMPと同じ組成をもつ珪酸塩ガラスの合成にも有益な結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は国内の多くの研究機関と連携し、福島県地方を含む様々な地域や試料形態の汚染物中にCsMPがどの程度存在するかを定量的に評価していく。これにより事故直後のCsMPを含むプルームの移動・拡散経路を調べるとともに、この9年間で地上に降下したCsMPがどのように拡散、変質したかを明らかにする。また、今年度の成果を学会や論文等を通じて発信し、他機関でもこの手法を用いてCsMPの存在量を調べることを促していく。これと平行し、酸処理による評価法における実験条件の最適化も目指す。一方現在進めているCsMPの組成をもつ珪酸塩ガラスの合成を進め、ある程度近い組成のガラスができた時点でその溶解特性を調べ、CsMPの環境中の挙動をより正確に推定できるようにする。
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Research Products
(22 results)