2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidate the missing link of terrestrial nitrogen cycle – Who is the key nitrifier in acidic soil?
Project/Area Number |
19H01156
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
多胡 香奈子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主任研究員 (20432198)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早津 雅仁 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 再雇用職員 (70283348)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 硝化菌 / 一酸化二窒素 / 亜硝酸 / アンモニア酸化菌 / 亜硝酸酸化菌 / 完全硝化菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸性土壌から分離した硝化菌を含む複数種の微生物からなる耐酸性硝化微生物コミュニティーの窒素代謝系の特徴と硝化菌とその生育を支える複数種の細菌とが共生してコミュニティーを形成し酸性環境で安定的に機能するメカニズムを解析するとともに、土壌模擬実験系を用いて異なる硝化微生物コミュニティーが共存して酸性条件下で高い硝化能を維持し、これらのコミュニティーから排出される中間代謝物が化学反応によりN2Oを生成する「生物反応と化学反応が共役したN2O生成機構」を明らかにすることを目的とする。本年度は、新規に分離した14種以上の細菌からなる耐酸性硝化コミュニティーの中心となっているアンモニア酸化菌を特定した。この菌株はgamma-Proteobacteriaに属すアンモニア酸化細菌(GAO100株とした)であったが、我々がこれまで分離した同じClassに属す耐酸性アンモニア酸化細菌Nitrosoglobus terrae TAO100株とは、系統マーカー遺伝子と比較ゲノムにより分類的には離れており新規な種(あるいは属)であることが示された。TAO100株の生育のpHの低限が1.9であるのに対しGAO100株ではpH3.4であった。またゲノムサイズは海洋・塩湖由来のNitrosococcus属とNitrosoglobus属の中間的なサイズあった。一方、この耐酸性硝化コミュニティーには亜硝酸酸化菌(GNO100株とした)が存在することがコミュニティーゲノム解析により示された。GNO100株は亜硝酸酸化酵素と16SrDNAの相同性解析からNitrobacter hamburgensisに極めて近縁であることが示された。この耐酸性硝化コミュニティーの中では、硝化はGAO100株とGNO100株が共生的にアンモニアー亜硝酸―硝酸という反応を進めていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数種の微生物からなる耐酸性硝化微生物コミュニティーにおいて硝化菌が、その生育を支える複数種の細菌と共に酸性環境で安定的に機能するメカニズムを解明するという目的を達成するために、このコミュニティのドラフトゲノム解析、ゲノム解析により硝化微生物コミュニティーの中心となるアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の特定と分類的位置づけ、主要遺伝子の特徴づけに成功した。特に新規な耐酸性アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の集積培養に成功したことは、酸性環境の硝化とN2O生成機構の解明という本研究の最終目的に大きく前進したといえる。これらの微生物を用いることにより酸性条件下での硝化進行とN2Oの生成機構の解析を深化させることができる。一方、研究実績には記載しなかったが、これまでに静岡の土壌から分離した耐酸性アンモニア酸化細菌TAO100株類縁のアンモニア酸化細菌を滋賀と京都の土壌から分離し、系統遺伝子とドラフトゲノムの解析を行った。さらにこれまでに集積した完全硝化菌微生物コミュニティーついてもコミュニティーゲノム解析を行いここに存在する完全硝化菌GCO100株は Nitrospira nitrificansに近縁であることを示した。 以上のように3つの硝化コミュニティーの中心として機能するアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、完全硝化菌の特定・特徴づけに成功した。これにより複数種の微生物からなる耐酸性硝化微生物コミュニティーにおいて硝化菌とその生育を支える複数種の細菌が酸性環境で安定的に機能するメカニズムの共生モデル実験系を用いた解析が可能となった。 以上により当初計画に従い研究を推進し目的達成に必要な成果を得ることができたので、本研究課題は順調に進捗していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
耐酸性硝化微生物コミュニティーが凝集体を形成し、酸性環境で硝化反応が進行するメカニズムとN2O生成機構の解明に向けて、このコミュニティーの硝化を担う微生物群を特定し、ドラフトレベルのゲノム情報を取得した。これらの微生物は本研究の目的達成のために最も重要な要素であり、今後はこれらの微生物を使用して研究を展開することが可能になった。したがって次年度以降はGAO100株、GNO100株、TAO100株、GCO100株を中心に研究を進める。これらの菌株は単独での培養は困難だが、コミュニティーとして安定的に増殖することから、今後はこれらの生育をサポートする微生物あるいは微生物代謝物に着目して研究を進める。 分離菌株は、いずれも新規性の高い硝化菌であるため、分類的なデータを収集し、またゲノム解析や生理実験などにより、その特徴を明らかにするとともに、類縁の菌株との比較ゲノム解析により進化的な位置づけについても検討し、新規硝化菌として提案することを視野に研究を進める。 以上の結果に基づき、今後は当初計画に従い土壌の多孔質構造(団粒構造)と類似の構造を持つポリビニルアルコール粒子を用いたモデル実験と並行して、凝集体の生残性や機能特性に着目して、目的達成に向けて研究を推進する。
|
Research Products
(4 results)