2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of an early warning information system for the effects of global warming/climate change on fish reproduction
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19H01162
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 洋嗣 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10447592)
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生態系影響評価 / 地球温暖化 / 気候変動 / 指標種 / 魚類繁殖機構 / 耳石 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化や気候変動に起因する水温異常が魚類生殖機構に与える影響の評価系確立へ向け、本年度では主に、①指標種のトウゴロウイワシ目魚類の野生集団における性転換個体の実態調査、②遺伝生化学的手法を用いた水温起因性生殖障害アセスメントツールの開発に取り組んだ。①については、まず、2017年、2018年にアルゼンチンのチャスコムス湖で捕獲したペヘレイを用い、amhy遺伝子の有無を指標に全個体の遺伝型性を判別し、生殖腺組織学的解析により表現型性を判別した。その結果、2017年捕獲個体群では小型のXX個体が多いこと、2018年捕獲個体群では小型のXX-メスおよび大型のXY/YY-オスが多いことが明らかとなった。さらに、2017年~2019年の3年間に千葉県館山市で捕獲したギンイソイワシの各年級群の個体を対象としてペヘレイと同様の調査を実施した。その結果、各年度のメス性転換率が0~3.6%、オス性転換率が11.9~18.1%であることが明らかとなった。現在、両調査で得られた標本の耳石輪紋解析から日齢および孵化日の推定を行うことで、高精度に孵化時期を特定し、経験水温(あるいは日長などその他の環境要因)と性転換の因果関係を精査している。また、効率的な耳石日輪解析のため、新規の耳石標本作製方法を開発した。②については、脳-下垂体-生殖腺軸におけるより上位(早期)の水温起因性生殖障害アセスメントツールの開発を目的として、水温により脳で発現が増減する新規マーカー遺伝子を網羅的に探索した。その結果、高水温により脳内で発現量が有意に増加する384遺伝子、低水温により有意に増加する43遺伝子を単離することができた。これらの遺伝子は、新規生殖障害アセスメントマーカーとして応用可能であるため、発現時期・発現細胞の解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、世界各地に分布し、なおかつ水温起因の生殖障害が生じやすいとされているトウゴロウイワシ目魚類を指標種とし、地球温暖化と気候変動が魚類資源とそれを取り巻く生態系に与える悪影響を事前に予測するため、「魚類繁殖機構に及ぼす地球温暖化・気候変動影響の早期警戒指標の構築」を最終目的としている。本年度は、南米原産ペヘレイおよび日本産ギンイソイワシの野生集団の耳石輪紋解析を用いた孵化日推定および孵化群分類を行い、性転換に与える水温の影響調査を高精度で行うことができた。また、水温起因性の生殖障害をいち早く捉えるための新規マーカー遺伝子候補として脳で発現している候補遺伝子の単離に成功した。さらに、ギンイソイワシ(H.tsurugae;千葉県館山市)の年次捕獲調査を実施し、対象魚を予定尾数捕獲することができた。以上、2020年度の研究計画は、アルゼンチンでの捕獲調査は実施できなかったものの概ね予定通りに遂行され、成果も得られていることから、研究は順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、既に開始しているフィールド調査と、飼育実験による対象種(南米・アジアに生息する複数の汽水・海産トウゴロウイワシ目魚類)の生殖機能に及ぼす水温の影響調査を継続する。具体的には、事前にデータロガーが設置され、継続的に環境情報(水温、塩分)が蓄積可能な海外(アルゼンチンチャスコムス湖等)および国内の各フィールド(千葉県館山市等)で定期的に対象種の野生個体を採集し、耳石年輪解析によって年級群・孵化群別に分類し、これまでに開発された遺伝的性判別ツールを活用して各年級群の雌雄比や性転換率を調査する。さらに、野生環境(水温・日長)を忠実に再現した飼育実験により、トウゴロウイワシの性決定・性分化、生殖腺の性状、生殖能力 (生殖細胞数)、産卵周期と繁殖可能な限界水温等の繁殖機構に与える水温/日長の影響解明を目指す。遺伝生化学的手法を用いた生殖障害アセスメントツールの開発については、2020年度に得られた脳における発現遺伝子を中心に発現時期や詳細な水温等応答性の解析を行い、生殖障害の指標となるマーカー遺伝子を探索する。一方、対象種の野生集団解析ツールの開発については、引き続き数理モデリングを用いて野生個体および飼育個体の性転換と、耳石微量元素組成に及ぼす水温・日長の影響を検証し、孵化日や年級群の推定、さらに経験環境履歴推定の技術開発を行う。
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Research Products
(5 results)