2023 Fiscal Year Annual Research Report
近世ヨーロッパにおけるキリスト教的ストア主義の生成と展開に関する人間学的研究
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19H01182
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津崎 良典 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10624661)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リプシウス / デュ・ヴェール / シャロン / デカルト / イエズス会 / オラトリオ会 / ジャンセニスム / 新ストア主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、以下の仮説の検証に多くの時間を割いた。すなわち、16世紀末から17世紀前半までのヨーロッパの思想界における、いわゆる《新ストア主義》の展開は、本研究課題がリプシウス、デュ・ヴェール、そしてシャロンの思想のうちに着目する《キリスト教的ストア主義》に対する多種多様な陣営からの応答の軌跡として理解しうるのではないか、というものである。検証の結果、得られた見通しを図式的に下記する。 すなわち、差し当たり宗教的と形容しうる文脈における古代ストア主義受容として、①キリスト教化するストア主義的言説(「柔和の聖人」と称されるフランソワ・ド・サルを指導者に仰ぐカミュなど)、②ストア主義化するキリスト教的言説(ビネやコサンなどのイエズス会士たち)、③トリエント公会議での決定事項をうけたストア主義批判を展開するキリスト教的人文主義(デカルトの『情念論』(1649年)への影響が指摘されている『情念の使用(効用)について』(1641年)の著者・オラトリオ会士スノーや、シャロン批判の急先鋒に立ったイエズス会士ガラスなど)、それとは別に、④独自の生成プロセスの途上にある反ストア主義(アルノーやパスカルなどのジャンセニスト)、さらに、やはり差し当たり、しかし非宗教的と形容しうる文脈における受容として、⑤デカルト的人文主義(『方法序説』(1637年)第3部など)、⑥無神論者を含めた自由思想家たちの諸言説、そして⑦文学的ストア主義(悲劇作家コルネイユなど)、以上である。 この仮説は、少なくとも国内のこれまでの西洋思想史研究においては看過されてきたものであり、したがって、これについて検証を行なったことが今年度の研究成果の意義である。
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Research Progress Status |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)