2019 Fiscal Year Annual Research Report
レジリエンスの倫理的妥当性を支える持続可能性と補完性に関する社会倫理学的研究
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19H01189
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 教授 (20367725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篭橋 一輝 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (60645927)
森山 花鈴 南山大学, 法学部, 准教授 (40635702)
MERE WinibaldusStefanus 南山大学, 社会倫理研究所, 准教授 (40836029)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レジリエンス / 持続可能性原理 / 補完性原理 / コミュニティ型資源管理 / 自殺対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、レジリエンス概念の適用に関する倫理的妥当性条件を哲学的・倫理学的に応答すべき問いと位置付け、その応答のために、コミュニティ資源管理の環境経済学的研究および自殺対策の政治学を中心とした総合的研究等の実証的研究との相互フィードバックを試みる、学際的な社会倫理研究である。また、本研究は、コミュニティ資源管理の研究を担う実証研究班A、自殺対策を含むメンタルヘルス・ケアに関わる実証研究班B、レジリエンスの倫理的妥当性条件に関する原理的研究を担う原理研究班の3班体制で遂行している。 2019年度は、まず前半に、レジリエンスの倫理的妥当性条件に深く関わると思われる「補完性原理」について、日本の若手研究者との研究会を複数回開催し、行政学、伝統的自然法論、法実務、政治学などの観点からの「補完性原理」の位置づけをめぐって集中的な議論を交わすことができた。年度の後半には、オーストラリアへの現地調査(ブリスベンにおける自殺対策研究、ケアンズにおけるランドケア活動)および欧州への現地調査(フィンランドにおけるメンタルヘルス・ケアに関わる実践、デンマークと英国における自殺対策研究)を通じて、危機に対するコミュニティの対応力のありようについて知見を深めることができた。これらを通じて、"レジリエンスの社会倫理的基盤を補完性原理が与える"という仮説(アイデアの源泉を提示した故マイケル・シーゲル氏にちなみ「シーゲル仮説」と呼ぶ)が本研究の検証対象となることが確認された。今後、この仮説を概念的かつ実証的に検証するとともに、それを通じて汎用性の高い「補完性指標(Subsidiarity Index: SI)を開発すべく研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、事前の研究実施計画に即して滞りなく研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度に実施した海外視察で得られた知見を総合し、3つの研究班それぞれの観点から、汎用性の高い「補完性指標(SI)の開発に着手する。また、SIの開発を促すために、2019年度の海外視察を通じて継続的な共同関係の構築の契機を得たいくつかの関連機関と連携して議論を進め、年度末には、SIのアイディアを提示するアジェンダ・パンフレットを中間報告書として作成する。当初の予定では、オーストラリアより、環境に関する研究者と自殺対策に関する研究者を招き、国際シンポジウムを開催する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大という世界的動向を受けて、オンラインでの開催に変更する等、何らかの対応が必要であると考えている。ただし、本研究の当初計画のなかに、関連機関とのオンラインでの日常的な連携を可能にするインフラの整備という課題が含まれていたため、大筋のところで計画の変更が生じることはないと見込まれる。
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Research Products
(13 results)