2019 Fiscal Year Annual Research Report
道教の洞天思想における聖地と巡礼の調査研究およびその東アジア思想文化史への影響
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19H01194
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
土屋 昌明 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (80249268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横手 裕 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10240201)
山下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 教授 (20383383)
鈴木 健郎 専修大学, 商学部, 准教授 (40439518)
大形 徹 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60152063)
二階堂 善弘 関西大学, 文学部, 教授 (70292258)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 道教 / 聖地 / 巡礼 / 洞天福地 / 山岳信仰 / 修験道 / 中国思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
6月に中国・福建省寧徳市で開催の「首届洞天福地研究与保護国際学術検討会」に参加。主催は清華大学の国家遺産中心と建築設計研究院で、各地の洞天福地を保護して世界遺産に申請するプロジェクトの一環でもある。本研究参加者は土屋昌明、二階堂善弘、大形徹(分担者)、酒井規史、大西和彦、廣瀬直記、石野一晴(協力者)である。土屋の論文「玄宗の道教と楊貴妃そして日本」、廣瀬の論文「二許と洞天」、酒井の参加報告記は、『洞天福地研究』第9号(2019年)に発表、大西の論文「ベトナム東北部ドンチュウ地域の福地《抱福巌》とその周辺」は同第10号(2020年)に発表した。 7月末に土屋は、陝西省西安の西北大学で行われた学会で玄宗の道教の日本伝教について研究発表をした。また、9月に土屋が浙江省杭州・洞霄宮村にある大滌洞、天台県の天台山の現地調査、杭州における中国美術学院の講演をした。天台山では唐代に司馬承禎らが修行したと想定される場所は石門坑であり、そこに摩崖石刻を見いだしたが、詳細は研究中である。 10月末に土屋は、2020年3月に予定していた日仏中国宗教研究者会議の打ち合わせ、および日仏共同の論文集の編集打ち合わせのためにフランスに出張した。日仏中国宗教研究者会議の実施は見送りになったが、今後の準備のため2020年1月に土屋が日仏の研究者による日本における現地調査の下見で日光市の二荒山神社を調査、そのあと3月に土屋と酒井、廣瀬が栃木県那須町の修験道について現地調査をした。 そのほかの研究成果は、『洞天福地研究』第9号と題して、上記の論文のほか、土屋は雷聞の論文「貴妃の師」を翻訳、廣瀬は「「茅君内伝」訳注研究(1)」、三浦國雄(協力者)の論文「墓室から洞天へ」を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題が対象とする中国の聖地のありかた、聖地への巡礼についての思想史的研究については、一つには中国の清華大学との共同によって、聖地の研究と保護を結びつける筋道が得られたと評価できる。この中国側の研究動向は、本研究活動が直接刺激を与えたもので、内容的には今後も大きな進展が期待できる。 洞天に対する現地調査については、本年度は4か所(霍童山、天目山、天台山、会稽山)で実行できた。なかでも天目山と天台山、会稽山では、中国側の調査隊と共同で地調査することができた。外国人だけの調査隊では、とかく行動が制限される可能性があるが、現地の研究者と共同することで、現地の便宜が得られるだけでなく、相互の知見を交換することで、従来には認識できていなかった事実を明らかにする端緒を得ることができた。 また、中国道教の東アジアへの伝来にともない、東アジアの聖地と山岳信仰に対する道教・洞天思想の影響について、基礎的な調査と研究がある程度進められた。とくに、ベトナムの道教、日本の修験道と道教の関係について、新たな知見が得られている。 国際学術交流に関しては、共同の論文集についての意見交換は行われているが、残念ながら、2020年3月に日本とフランスの中国宗教研究者による国際会議を東京の専修大学で開催する予定を実行できなかった。フランスの研究者を6人招請する予定で、相互に研究成果を準備し、エアーチケットの予約、日本国内での共同研究のための現地調査と宿泊地確保など、具体的な準備段階まで行ったが、新型コロナの流行が始まり、2019年末に2020年3月の開催を断念し、次回の開催を2021年3月まで延長せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においては、中国の洞天(聖地)での現地調査と資料収集が大きな比重を占めている。特に清華大学との共同による、洞天の世界文化遺産申請を目標にする基礎的な共同研究では、現地でおこなわれる調査や会議に参加する必要がある。しかし、新型コロナの流行が続き、今後もその影響を受けて、中国に渡航したり、現地調査したりすることが大きく制限される可能性が高い。また、研究者が会議に直接参加する日本での国際会議の開催もむずかしく、フェイス・トゥ・フェイスの学術交流の実行は困難となりそうである。以上のことを考慮し、今後の推進方策としては、次のように考える。 これまでの現地調査で得られた知見と文献調査を総合し、まだ研究報告が完成していない洞天について所見をまとめ、論文として発表する。必要な外国語の論文や資料を日本語に翻訳しつつ検討を加える。 中国道教の日本伝来と定着に関する研究を文献的に進め、洞天思想の日本における影響を考察するとともに、関係する日本国内の遺跡や資料に対して現地調査を進める。その研究成果を論文化して発表する。 これまでの研究を分担者と協力者で持ちより、国内の研究者および一般国民に向けた研究成果報告会を開催する。可能であれば、中国など海外の研究者を招聘して、その報告会に参加を依頼する。この報告会にあわせて、一般国民に本研究成果が理解できるような論文集を編集・印刷して配布する。 国際学術交流としては、新型コロナの流行で遅延していた、日仏共同の論文集の編集を進め、フランスで発刊する。また、フランスの研究者と共同で、オンラインによる学術会議を開催する可能性について検討する。
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