2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sinophone as Method: Reconstruction of the History of Modern and Contemporary Chinese Literature
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19H01236
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱田 麻矢 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90293951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 容子 金城学院大学, 文学部, 教授 (10434359)
及川 茜 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (40646725)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サイノフォン / 社会主義文化 / マレーシア華人文学/映画 / metoo |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず六月にキックオフミーティングを行い、それぞれのフィールドと研究的関心についてすり合わせを行なった。華語語系文学の臨界点について考えるという共通のテーマが確認され、アンソロジー『華夷風(仮題)』の翻訳を進めた。 濱田は日本移民学会の年次大会で中国系移民作家の英語創作について報告を行なったほか、神戸大学の日中学術シンポジウムにて東アジアにおける#metoo運動と文学創作その可能性について報告し、現在同テーマで執筆した論文を投稿中である。本論文は性暴力とトラウマというテーマに切り込んだいっぽうで、そのトラウマがどのように語り変えられ、傷跡が不可視されてゆくのかという過程に注目した。 田村は「救国の妓女」というイメージを抽出したところから中国映画に見られる社会主義文化について分析し、論文を発表した。ナショナリズムに貢献する英雄(救国)と、純潔を犠牲にした、儒教道徳的には逸脱している女性(妓女)が対照的な二面をどのように一身に集めたものとして描かれるのかについて、ソ連が革命中国の思考に及ぼした影響とあわせ、精力的な考察を続けている。 及川はマレーシア華人への深い眼差しで知られる映画監督ヤスミン・アフマドについての論考を発表し、論文集にて華語語系文学の輪郭と展望について執筆したほか、口頭発表でも非華人が非母語としての中国語で創作する試みや移民労働者の文学およびマレーシア華人映画について、さらにサイノフォン文学のヴァリアントとしての和漢比較文学研究の可能性についての口頭発表を行った。 なお、11月には名古屋で開催された華語華人文学をめぐるシンポジウムに全員が参加し、国内外の研究者と研究関心について意見を交換する機会を持った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キックオフミーティングや名古屋シンポでは参加者全員が対面し、サイノフォン文学を現在の中国語文学の中にどのように位置付けるのかという認識を統一することができた。参加者による閉じたミーティング以外に、それぞれが自分の領域の中で華語華人文学への関心を伸ばし、新たな研究視座の構築に取り組んでゆくことを確認し、それぞれ論文執筆や学会発表などを行なっている。ただ、2020年以降はコロナウイルス蔓延のために予定されていた出張などを全てキャンセルせざるを得なかった。 元来計画していた翻訳出版については各自順調に取り組んでおり、対面で行わねばならない活動以外はおおむね遂行することができた。対面できないことよりも、図書館や大学に出向いて資料を直接確認できないことが大きな問題である。電子データが利用可能な資料を調査することによって、多少の軌道修正を含み込みながらもサイノフォン文学の全貌をとらえるよう努力を続けた。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階でコロナ禍が今年どこまで続くのか不透明だが、メンバーが全員遠隔地在住ということもあり、対面は基本的にできないものとして共同研究を続けてゆくことになる。 去年に引き続き翻訳出版計画を続けつつ、「正統的な中国語文学」と「“邪道”な華文文学」の臨界点を探るが、この際特に中国国外の作品における「共産主義」思想の扱われ方に注目する。「崇高な理想」なのか「邪悪な思想」なのか、様々なイメージが予想されるが、作品中の「共産主義」とはどこまで「中華人民共和国(毛沢東思想)」と結びついていたのか、コミュニズムと中国イメージとの関係を明らかにする。 さらに、「サイノフォン作品におけるトラウマ」というテーマを追う。病気(特に伝染する病)のトラウマが、どのようにナショナリズムイメージ形成に関わっていたのかを検討する。 以上のように中国語圏を貫くテーマを整理した上で、最終的には従来の地域別文学史に変わる 新たなサイノフォン文学史の構築を提言したい。 以上の作業によって得た知見については全国学会で報告し、論文にまとめて学術誌に投稿する。
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Research Products
(20 results)