2021 Fiscal Year Annual Research Report
Sinophone as Method: Reconstruction of the History of Modern and Contemporary Chinese Literature
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19H01236
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱田 麻矢 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90293951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 容子 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (10434359)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新たな文学史 / 移民 / 二言語創作 / 戦争ものがたり |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も新型肺炎感染拡大のため、基本的に各人が自分の課題について研究を進めた。 中国における「戦争のものがたり」、在米華人の目からみた中国共産党といったテーマを含む研究書『少女中国』を刊行し、現時点における研究成果を一般に公開した。サイノフォンを含む百年の中国文学をジェンダー的視点から俯瞰することのできる一冊で、従来の中国現代文学史にはなかった視座を提供することができた。また、古代から21世紀のサイノフォン文学までを見通す教養書を出版し、サイノフォンやSFなど、従来の文学史から排除されていたジャンルをくるみこんだ、中国文学の新たな見取り図を一般に提案できた。サイノフォン文学アンソロジーについて、訳稿はすでに完成、校正も進めているが、なおも著作権について交渉中である。こちらについては来年度には刊行の見込みを立てている。サイノフォン芸術について、ルイーザ・ウェイ監督の新作『蕭軍六記』について字幕を担当した。現在最終チェック中だが、こちらも来年度には日本語字幕でスクリーニングを行い、英語圏から眺めた延安の実態について意見交換を進める準備がある。 さらにパンデミック下の現代演劇の姿につき、オンラインでドラマ創成の現場を取材し、その難局と可能性とを明らかにした。vs.世界文学については、アジア系アメリカ文学の研究者を招いたワークショップを行い、中国人による英語創作の歴史、アメリカ文学、中国文学双方による作品の位置付け、さらに米中関係の緊張と緩和が文学創作や相互イメージに及ぼした影響などにつき、歴史学や社会学の専門家とも意見を交換した。近代における女性の書き手の移動を学際的な視点から捉え直したことにより、従来明らかにされてきた文学思潮の変化や戦争の影響だけでなく、国際間の移民政策や金融政策、各国の婚姻法や教育法などもそれぞれのライティングに深く関わっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型肺炎が収束しないためにやや足元をすくわれたが、当初の目標に従って研究を進めることができた。成果発表という側面からは、サイノフォンアンソロジーの出版とサイノフォン映画のスクリーニングの公開が遅れているが、両者ともに内容は既に完成しており、所期の計画はほぼ達成できたと考えている。 加えて、今年度は関係書籍(『少女中国』『中国文学をつまみ食い』)を出版することができた。本研究課題の重要性と意義を広く発信する大きな成果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、民国期の文学に社会主義が与えたインパクトとジェンダーの関係に焦点を当てる。1930年前後、中国の作家たちは大なり小なり各国の社会主義リアリズム文学に憧れ、大きな影響を受けてきたことはすでに多くの指摘があるが、ジェンダーからの分析はまだほとんど行われていない。 具体的には、ブルジョワフェミニズム作家から左翼闘士への変容を遂げたとされる丁玲、ロシア文化を身近に感じて育ちつつも、むしろアメリカ合衆国の社会主義作家アプトン・シンクレアに影響された蕭紅、そして社会主義革命への憧憬を日本経由で取り入れ、情緒的に謳った白薇など、従来社会主義との親和性を評価されてきた作家群を対象に、政治性からの検討ではすくいきれなかった側面をジェンダーの視座から探る。 また、以上の三人はいずれも文字テクストと舞台演劇の双方に強い関わりを持っていた。テクスト執筆とドラマづくりの間で、個人による創作と集団による演劇活動はどのように意識されたのか、またその意識は彼女たちの思想や主義とどのように関わりあったのかを明らかにすることを目指す。
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Research Products
(11 results)