2021 Fiscal Year Annual Research Report
Decentralizing the "Mediterranean Literature" towards Multilingual Area Studies
Project/Area Number |
19H01249
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
細田 和江 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (80779570)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 遼 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 准教授 (00736069)
富田 広樹 北九州市立大学, 文学部, 准教授 (00757495)
小久保 真理江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (00815277)
鵜戸 聡 明治大学, 国際日本学部, 専任准教授 (70713981)
奥 彩子 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (90513169)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 地中海 / 言語 / 移動 / 観念的 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「脱中心的多言語領域としての「地中海文学」の構築」は、21世紀以降の「世界文学」が西洋中心主義からの脱却を唱道しながらも、その桎梏を逃れていないという問題意識のもと、狭すぎる国民文学と広すぎる世界文学の中間域としての現代における「地中海文学」を構築する試みである。具体的には、ヨーロッパ・中東・北アフリカ地域を「地中海」地域として、そこから生まれる文化事象について共通性/共時性を見出そうとするものである。 当該年度はこれまで2年間の研究会で明らかになった各地域・時代における「地中海」概念の差異を踏まえて、「地中海文学」をいかに定義すべきかについて計4回の研究会の中で議論を行った。特に、分担者の鵜戸聡による「ナポリ、チュニス、スコピエーーホシーン・タンジャーウィー『あらゆる男たちもまた』」における地中海観をめぐって」では、イタリア文学、マケドニアなど旧ユーゴ文学との関わりなど、地中海の他地域の文学との相関関係について検討した。また、協力者の中村による「「ペルシア文学と地中海」、古川による「ロシアと地中海の関わりを考える:亡命者の“第一の波”を糸口に」、小林久子による「イスマイル・カダレ 文学のトポスとしての地中海・エジプト」などの報告を通して、地中海に面していない国の文学における観念的な地中海表象についてを比較し、相違点に関して検討した。さらに、小林薫によるギリシア古典における地中海表象に関する報告「『オデュッセイア』と歓待」については、各地域の地中海文学における古代ギリシア文化の影響という点において共通性があることが明らかとなった。 研究成果に関しては、次年度以降の出版計画(翻訳もしくは論集)と国際学会(地中海学会)へのパネル参加について検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内での研究会については前期はオンライン、後期はハイブリットでの定期開催(計3回)を遂行した。初年度末から延期している台湾とベルギーの研究者を招聘する国際シンポジウムは、特に台湾の往来制限解除がかなり遅れたことにより、解除後の台湾側研究者のスケジュール調整が困難となった。「地中海文学」をアジア地域から検討する上で台湾における多言語性(台湾諸語、中国語、日本語)との比較は重要な視点となっており、万全を期して再延期することとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はコロナ禍による人的移動の制限で開催できなかった国際ワークショップの開催を目指す。特に研究会でたびたび議論に上がった多言語と海を越えた越境について、台湾の研究者との研究交流を進める。また、これまで行ってきた研究成果として地中海に関する詩の対訳集をまとめる。
|