2021 Fiscal Year Annual Research Report
動詞先行型危機言語と日英語から見る身体運動・言語・認知の関係とその普遍性
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19H01263
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
里 麻奈美 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (80723965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遊佐 典昭 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (40182670)
新国 佳祐 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 助教 (60770500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 言語学 / 実験心理言語学 / 自己主体感 / 身体運動 / 表情 / 言語と思考 / 身体化理論 / メタファー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,査読付きジャーナル(心理学研究)において、日本語話者において自己主体感の個人差が,主語省略文理解時の視点取得に影響を及ぼすことを明らかにした。具体的には, 自己主体感の低い人は主語省略文の理解に際して、行為者/観察者という特定の視点への選好性はない一方、主体感の高い人は観察者視点への選好性を示した。また,身体運動は,事象の構成要素を認知する順序に影響を与え,その結果として言語産出表現も変化することを,タロコ語話者と日本語話者の視線データと産出データをもとに明らかにし, The 22nd Annual International Conference of Japanese Society for Language Sciences (JSLS22)の招待シンポジウムにて発表した。他にも,行為者/被行為者に依らず, 身体運動に従事し運動の意図性を感知することが,行為者の視点から事象を理解する傾向を高めることをInternational Symposium on Issues in Japanese Psycholinguistics from Comparative Perspectivesの招待シンポジウムにて発表し,査読論文として採択された。同学会では,「目的語-主語(OS)語順」を持つタロコ語・トンガ語・カクチケル語を対象とした事象認知過程ならびに語順習得過程について,2本の招待シンポジウムにて発表した。 また,実験助手を雇用し,非接触オンライン実験でも検討可能な「他者表情認知」と「視覚的に操作した上下移動」という非言語情報に焦点をあて,気持ちの上下を示す感情文、位置的上下を示す空間文,ならびに抽象的な概念である社会的上下関係を示す社会文の理解・解釈・記憶に与える影響について検討した。それらの研究成果は国際学会にて発表され,2本の学会紀要として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は概ね計画通り進み,身体運動が事象認知の過程に与える影響をオンラインで捉え,視点取得と主体感の関係性を探った。それらの成果を5つの国内・国際学会で発表し,「タロコ語と日本語の比較から迫る身体運動・言語・認知の関係とその普遍性」という招待講演も行った。 2020年度はコロナ禍のため対面実験が不可能であったこと,台湾への渡航が禁止されていたことから,研究内容の変更を強いられた。代替案として,対面でしか操作できない「身体運動」という非言語情報の代わりに,オンライン実験でも検討可能な「表情認知」に焦点をあてた。他者表情が感情文/空間文の理解・解釈に与える影響と主体性/共感性の関連性を検討する3つのオンライン実験を日本人母語話者対象に実施し,査読付き国際学会にて発表した。 2021年度は、研究成果を査読付きジャーナル2本、国際学会の紀要3本、国際学会での招待講演4本、国際学会での口頭発表1本、ポスター発表3本にて発表した。オンライン実験への変更に伴い,急遽研究することになった「表情認知」や「視覚呈示された動き」が事象認知や言語処理に与える影響についての知見を深め,新しい研究を展開し,学会発表などを通して国内外の研究者から助言をいただくことができた。 現在、2022年度実施予定の実験の計画・準備を進め,これまでの成果を論文にまとめる作業にも取り掛かっていることから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,科研プロジェクトの最終年度になるため,これまでの研究成果を論文としてまとめ,投稿する。特に,コロナ禍による対面実験の制限や海外渡航禁止に伴い,オンライン実験へ変更した後の研究を論文化することを目標とする。身体化された認知(embodied cognition)(Barsalou, 1999; 2008)という枠組みの中で,身体運動や表情認知などの非言語情報が,曖昧文の理解・事象の視点取得などの言語処理に与える影響について考察する。 また新たな研究として,日本語母語話者を対象とした2つの実験研究の遂行を計画している。一つ目は、非接触で操作可能な非言語情報(他者表情の呈示・動きの視覚呈示)が,事象認知における視点選択や言語活動における語順の選好性に及ぼす影響について検証するものである。二つ目は、出来事の変化に対する予測の可不可が,出来事の長さを推定する認知活動に及ぼす影響について検証するものである。主体感/共感性の高い参加者と低い参加者が,どのように非言語情報や予測の可不可を利用するのかについても調査し,主体感/共感性の役割についても検討する。実施計画案としては,研究目的の設定後,実験の準備(刺激作成・実験制御プログラム作成)を行い,オンラインで予備実験を実施する。予備実験の分析結果をもとに,チーム全体で改良点などを議論する予定でいる。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] 第二言語において他者表情が多義文の解釈に及ぼす影響2021
Author(s)
Akari Omine, Sho Akamine, Tsuyoshi Kohatsu, Keiyu Niikuni & Manami Sato
Organizer
Conference handbook for the 22nd Annual International Conference of Japanese Society for Language Sciences (JSLS22)
Int'l Joint Research
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