2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H01271
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大神 智春 九州大学, 留学生センター, 准教授 (50403928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 綾乃 横浜市立大学, グローバル教育センター, 特任准教授 (40812566)
森田 淳子 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (50814430)
麻生 迪子 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (90625188)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多義語 / コロケーション / I-JAS / 中国語母語話者 / 使用実態 / 中心義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語教授法及び語彙学習教材開発を支える基礎研究としてコロケーション(collocation 連語)の習得を対象とし、今まで焦点が当てられなかった「多義語の各語義で形成されるコロケーションをどのように習得していくか」の解明を目的としている。具体的には次の調査課題を設定した。①多義語で形成されるコロケーションについて、学習者はどのような中間言語を形成しているかを「典型化(プロトタイプ形成)」、「一般化(多義性理解)」、「差異化(類義性理解)」の観点から明らかにする。②学習者は調査対象語について、実生活においてどのようなコロケーションを産出し使用しているか。 令和元年度(平成31年度)は、第一に研究準備として、寺村(1982)の動詞分類法に基づき、調査対象動詞を「きく」「でる」「つける」「する」「ある」の5語に選定した。 第二に、上記②の課題に着手した。その際、研究代表者、研究分担者3名、研究協力者1名がそれぞれ1動詞ずつ担当し研究を行った。調査では、中国語を母語とする大学生(NNS)及び日本語を母語とする大学生(NS)を対象に、国立国語研究所が構築した「多言語母語の日本語学習者横断コーパス(International Corpus of Japanese as a Second Language)」(以下「I-JAS」)を用い、そこから得られたデータをもとに分析を行った。その結果、NNSは初級レベルで学習しかつ具体性の高い内容を表す語義で形成されるコロケーションを多用していることが明らかになった。また、NNSは語彙量がまだ十分ではないため、限定的で固定的な表現を繰り返し使用して事象を説明しようとする傾向にあることが分かった。 第三に、上記①を行う準備として、調査に用いる調査用紙を作成するために各研究者が各担当動詞の意味整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では令和元年度は次の内容を行う予定であった。①代表者が調査対象語を選定する。②代表者・分担者・協力者が調査対象語彙の意味分類を行い各調査用紙を作成する。③調査対象語1語につき10名程度の学習者及び日本語母語話者を対象にパイロット調査を行い、調査内容の妥当性を確認する。 ①は予定通り実施した。しかし、学習者がどのような語義で形成されるコロケーションを実際に産出しているか、あるいはどのようなコロケーションを産出していないのかその実態を明らかにし、特に学習者が産出していない語義で形成されるコロケーションを調査用紙に反映させる形で②、③を行った方がより的確な結果を得られると考えた。 そこで計画を一部変更し、令和元年度はまず学習者におけるコロケーション産出の実態を明らかにすることにした。令和元年度は、②については調査対象動詞の意味分類まで行い、調査用紙作成及び③は令和2年度に実施することにした。コロケーション産出の実態調査については、「研究実績の概要」に記述したように、I-JASを用い調査対象動詞のどの語義で形成されるコロケーションを学習者が産出しているか調査し分析を行った。分析結果は外国語教育学会で発表した。 以上を総合的に捉え、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.令和2年度前半に代表者・分担者・協力者は学習者を対象とした次の調査用紙を作成する。 a)「典型化(プロタイプ形成)」:文産出課題 b)「一般化(多義性理解)」:フレーズ性判断課題 c)「差異化(類義性理解)」:フレーズ性判断課題 2.令和2年度前半に代表者・分担者・協力者は日本語母語話者を対象に次の調査用紙を作成する d)日本語母語話者が持つプトロタイプを分析するための序列法課題及び学習者と同様の文産出課題。序列法課題では、被験者は、多義語が持つ複数の語義をプロトタイプ的語義から周辺的語義まで順序づける課題を行う。 3.2019年度の中盤に、代表者・分担者・協力者が調査対象語1語につき10名程度の学習者及び日本語母語話者を対象にパイロット調査を行い、調査内容の妥当性を確認する。不適切な問題はこの段階で修正する。 4.令和2年度後半に研究代表者・分担者・協力者は各自の調査対象語についての調査を所属大学にて開始する。 大神・清水(2011)より、初級・中級レベルではコロケーションの認知能力が十分に発達していないことが確認されていることから、上級レベルの学習者を対象とする。また、本研究を考察するにあたって母語の影響も加味する必要があると考えられるため、先行研究の多い中国語母語話者を調査の対象とする。調査対象とするのは日本の大学に在籍する中国人留学生である。
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Research Products
(1 results)