2019 Fiscal Year Annual Research Report
Irrigation and Social Changes in Modern Central Asia: Focusing on the Reciprocal Relationships between Nomadic and Sedentary People
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19H01316
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
塩谷 哲史 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30570197)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水利 / 中央ユーラシア / ヒヴァ・ハン国 / 遊牧民と定住民の相互関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、16-20世紀の中央アジアにおける水利と社会変動とのかかわり、とりわけ前近代中央アジア史の主要テーマでありながら、近代以降は十分に議論されてこなかった定住民と遊牧民の相互関係の変容、およびそれを軸とした現代に至るまでの現地社会の動態を明らかにする。昨年度は、これまでの研究蓄積の公表と今後5年間の研究の展望の提示を心がけた。まず、2019年8月~12月にかけて複数回、ウズベキスタンのイチャン・カラ博物館、ロシアの科学アカデミー人類学研究所において、近代中央アジアにおける水利の実態に関する文書史料の調査を行った。ウズベキスタンではあわせて聞き取り調査も実施している。また、日本文化人類学会第53回研究大会(2019年6月)、2018年より理事を務めるヨーロッパ中央アジア学会(ESCAS)第16回大会(2019年6月)、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの冬季シンポジウム「Tsars’ Regions between Literary Imaginations and Geopolitics」(2019年12月)にて、それぞれ学会報告を行った。これらの報告は、19~20世紀初頭に商業目的での人の移動がオアシス社会の水利に変化をもたらす断面を切り取ったものである。さらに、16~20世紀の間にロシアがインドへの通商路開拓を目指して展開したアム川のカスピ海への転流構想とその現地社会の水利への影響について、『転流』(風響社、2019年)を刊行した。本書ではこれまで体系的、長期スパンで論じられてこなかった同構想について、その構想の目的が時代によって変化する、ないし多目的に変化していく過程を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において2019年度は、①16-20世紀の中央アジア史に関する最近の研究文献や、現地で刊行された地方史、回想録を網羅的に収集、②イチャン・カラ博物館と協力した聞き取り調査、ロシア、ウズベキスタンでの文書館調査、③成果について、ヨーロッパ・中央アジア学会でのパネル組織、学術誌への投稿を予定していた。それらはいずれも達成できた。さらに年度内に『転流』(風響社、2019年10月)を刊行し、アム川のカスピ海への転流構想を一つの軸に据えて、16~20世紀の中央アジアにおける水利と社会変動を見る視座を獲得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、海外での調査が難しい状況にある。しかし2019年度に協力関係を築いたウズベキスタン共和国のイチャン・カラ博物館のカーミルジャーン・フダーイベルガノフ研究員と協議をしながら、オンラインで実施可能な調査を続けている。また史資料収集・整備に割くエフォートを成果公表や史資料整理に振り向けることで、継続的な成果発信を実現する予定である。
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Research Products
(10 results)