2020 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological research on the early dispersal of modern human in Asia
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19H01336
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現生人類 / 早期拡散 / アジア / 旧石器時代 / 石器製作・運用技術 / 南回りルート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複雑な現生人類ホモ・サピエンスのアジア早期拡散プロセスを考古学的に同定する手法を開発し、それを用いて新たな早期拡散プロセスのシナリオ仮説を構築することを目的とする。従来の定説ではアフリカに起源した現生人類の本格的なアジア拡散は、チベット北部を通る北回りルートでも、同南部を通る南回りルートでも6万年前以降とされていたが、最新の研究成果によれば、南回りルートではそれより早く開始されていた可能性(早期拡散)が強くなった。したがって新たな考古学的証拠の探索と同定が喫緊の課題となっている。 本研究では、1)旧石器考古学だけではなく、遺伝人類学・自然人類学・生態人類学・民族考古学等の先行研究データの集成と分析を行い、2)往時の地形・地理・気候・動植物相等の古環境データとの比較検討を進めながら、3)アジア各地の代表的な考古学資料を実地調査して分析を加え、4)アジア早期拡散の総合的なシナリオ仮説の構築を目指す。 研究第二年度にあたる令和2年度は、令和元年度末から本格化したコロナウイルス感染症の世界規模での蔓延を受け、アジア各国への入国が全て禁止されたため、計画していた中国および南アジアでの現地調査は実施できず、その予算を翌年度に繰り越した。国際会議・シンポジウム等もほとんど中止・延期となったため、日本考古学協会第87回研究発表(誌上発表・5月)、墨古沢遺跡国史跡指定1周年記念シンポジウム(千葉県酒々井町・12月)にて研究発表を行った。また国内における比較資料の調査(北海道・8月、長野・9月)を実施し、引き続き学生バイトを雇用して、関連資料の集成・整理と分析を継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的なコロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて、計画していたアジア地域の現地調査は延期を余儀なくされた(繰越措置)が、そのかわりにこれまでの調査研究で蓄積してきた資料の整理と分析が進み、シナリオ仮説に関する見通しが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス感染症の世界規模での蔓延は現在も続いているため、当初計画していたアジア各地での現地調査を円滑に実施するのは相当困難であると推測されるため、今後は早期拡散が到達した日本列島における拡散の痕跡・証拠とその具体像を探る方向に研究を展開していきたい。
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