2019 Fiscal Year Annual Research Report
製鉄遺跡の発掘調査に基づく遊牧国家匈奴の鉄獲得戦略の実証的研究
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19H01341
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アジア考古学 / 科学技術史 / モンゴル / 匈奴 |
Outline of Annual Research Achievements |
遊牧国家の勃興の地であるモンゴル高原では、鉄の存在が遊牧国家にも大きな影響を与えたことが想定されながらも、鉄の伝播やその適応の実態は不明であった。そこでモンゴル国トゥヴ県ムングンモリト郡に所在するホスティン・ボラグ製鉄遺跡の発掘調査資料を基礎資料として、冶金学と考古学の両輪で学際的に研究を推進する。 ホスティン・ボラグ遺跡の調査を契機として、モンゴル国内で続々と発見されつつある匈奴の製鉄遺跡の研究成果と比較することで、匈奴の鉄生産の変遷や地域的な差を明らかにする。これらの研究成果に基づいて、遊牧国家である匈奴が鉄やその生産システムをどのように取り入れ、複合的な社会システムとして構築したのか、そしてそれによって匈奴にどのような社会的・文化的な変容が生じたのかを明らかにすることを目的としている。 今年度はゴビ砂漠で古代の金属生産に関するフィールドワークを重点的に行なう予定であった。しかしコロナウイルス感染拡大に伴い、4月にモンゴル政府から外国隊の発掘調査の禁止が伝えられた。そこで今年度は日本国内で、これまでの調査成果をまとめ、出土資料の3Dデータ化を実施した。新規に3Dスキャナ(Shining 3D社のEinscan-SE)を購入し、これまでに許可を得て日本に郵送したサンプルやボン大学やイェール大学の調査チームから提供された一部の資料の三次元計測を実施した。調査の成果はFacebookページ” History of Ancient Mongolian Craft Production”にできる限りリアルタイムでアップし、また、“Materials Science Forum”誌に英文で報告するともに、日本の論集にこれまでの調査成果をまとめたものを掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の根幹であるモンゴルでの発掘調査ができなかったため、当初の計画と比べて研究の進捗が遅れている。その一方で、研究成果をまとめる時間的余裕ができたため、英語や日本語で論文をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の後半にモンゴル国ゴビ地域でのフィールドワークを計画しており、2020年度の研究の遅れをここで取り戻す予定である。コロナウイルス感染拡大が収まらずに、海外フィールドワークができない場合は、自然科学的分析の委託などで研究を推進する予定である。
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