2019 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological Survey and Preservation on Shipwrecks and Port Cities in Southeast Asia
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19H01344
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木村 淳 東海大学, 海洋学部, 講師 (80758003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 誠一 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (40327953)
高妻 洋成 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (80234699)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東南アジア海域史 / ベトナム / 海事考古学 / 港市遺跡 / 文化財科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、時代の異なる数十隻の船体が海底に埋没する中部ベトナム・クアンガイ省ビンソン県湾での調査を通じて、同湾港市の歴史的活動を明らかにする。同湾で沈没した船は、最古級で8-9世紀代交易船、中国海商の17~18世紀代南シナ海商船やオランダ商船等と想定される。これら複数の船体考古資料の詳細研究、船材の保存処理と船体原位置保存を実施する。港市沖の沿岸の浅海で、時代幅のある多数の商船の残骸が埋没する事例は世界的にも稀な事例である。海事考古学と文化財科学、両分野蓄積を生かした学際連携により、東南アジア海域史における港市と交易船遺跡の具体像の解明につながる研究を目指す。 インド洋と東アジア海域を結ぶ東南アジア海域は、東西交渉の要衝や海上交易ハブとなる港市の歴史的役割が着目され、遺跡の特定が試みられてきた。同時に、沈没船遺跡の重要性も指摘されてきた。一方で、東南アジア海域では、学術目的の沈没船遺跡発掘調査の事例が著しく少ない。これは陶磁器等の遺物の売買目的のための沈没船サルベージが主として実施されてきたためである。こうした状況が東南アジアにおいて船体を考古資料として分析研究する領域の成長を著しく阻害してきた。また船体の遺跡としての保全も実施されていない。クアンガイ省ビンソン県湾での交易船遺跡、港市、関連遺物の科学保存の総合的研究を実施する。ベトナム社会科学院考古学院水中考古学センターとの協力を柱とし、本研究によって、同国及び東南アジアでの、船体考古資料研究領域・海揚がり船材の文化財科学領域の成長への波及を促すことを視野にいれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベトナム・クアンガイ省ビンソン県の湾沖合の浅海には、複数の沈没船が埋没する可能性が明らかとなってきている。同海域では、住民の手で海底引上げ陶磁器の売買が行われてきた。2000年代後半に、台風の高波で海底面から交易船が相次いで露出し、地域住民による大規模サルベージも誘発され、2012年同県ビンチャウで、政府とサルベージ会社により14~15世紀にかけての2隻の船体が発掘、収集家によって把握されるもので、8~9世紀頃の中国初期貿易陶磁器、明・清代の陶磁器があり、オランダ東インド会社が取り扱った陶磁器類も確認されている。本研究は、研究代表者によるi). クアンガイ省ビンソン県湾での船体考古資料の正確な数と位置把握、共同研究者によるii).船体考古資料の発掘とLy Son島での試掘、さらにもう1名の共同研究者によるiii). 遺存する船体考古資料の原位置保存科学研究の実施の三つを柱とする。 初年度、i)に関して、調査対象の湾は、南北方向850mで、湾内の海底地形図、未確認及び所在確認済みの沈没船遺跡、引き揚げ遺物の組成、船体考古資料遺存の有無等の情報をプロットし、位置と範囲確定を行った。関係者らのヒアリングとサブボトムプロファイラー等の機材で砂質海底面下に埋没する沈没船遺跡の位置特定を目指した。 音波探査および潜水探査は2019年8月25日から9月8日のうち9日間で実施した. 7日間における地層探査の結果, 測線間隔20mにて本研究域における水深約4m~8mの範囲における地層探査記録を取得した。岸側近くから64測線を計測し、 測線の総延長は214kmとなった。この調査範囲で、78地点の異常反応地点を特定することができた。 ii)については、2019年にLy Son島での踏査をおこなった。iii)については、8-9世紀のチャウタン沈没船船材試料を取得し、保存処理作業を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年初において、世界的なコロナウィルスの影響が拡大しており、ベトナムでの調査実施が見通せていない。安全を優先し、当初の計画に沿った調査研究を実施する。地層探査の成果として、周囲と異なる反射点を抽出することができたが、その反射体が何なのかという部分までは判読することができない。探査による悉皆分布調査の解析作業は一定の目途が立っている。これらの特異点がはたして沈没船であるのか、積み荷であるのか、いつの時代の物なのかという点を、海底面の掘削により確認することになる。
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