2020 Fiscal Year Annual Research Report
動的アイソスケイプモデルを用いた水循環成分評価とその多面的展開
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19H01370
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山中 勤 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80304369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水循環 / 同位体 / トレーサー / 水文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
中部山岳地域における降水・土壌水・河川水・湖沼水・地下水・温泉水の同位体モニタリングを継続し、特に土壌水の多深度定期モニタリングや温泉水の集中多地点観測を強化した。これらのデータに基づき、可動水・結合水のモデル化とその検証ならびに非天水成分の同位体比形成プロセスの解明が進んだ。具体的には、土壌水帯における可動水と結合水の今後は十分でなく、結合水における分子拡散が可動水よりも1オーダー小さい可能性が高い。また、温泉水中の非天水成分は様々な温度環境下での鉱物-水間の同位体交換によって説明可能であることが数理モデルによって再現され、その進行程度とプレートの沈み込み深度に相関があることも改めて確認された。このほか湖沼水と湖底湧出地下水の同位体データから示唆された河川水の伏流・再湧出プロセスについても3次元地下水流動モデルを用いたシミュレーションによって定量的に実証された。さらに、北海道における新たな同位体モニタリング体制が軌道に乗り、今後の水収支推定研究の基礎が構築された。以上に加えて、客観解析データによる日単位降水アイソスケイプモデルを構築し、過去のイベント単位降水同位体データによる検証を実施した。現在のところ、δ値の再現性は高いもののd値の再現性が低く、雲底下での蒸発や同位体交換に原因があるのか、あるいはそれ以外の問題があるのかについて検討を進めている。なお、コロナ禍のため西日本での広域サンプリングは実施できなかったが、収束状況を見据えながら2021年度に実施する予定である。 なお、本課題を含むこれまでの科学研究費による成果を含む専門書を出版し、科学的成果の普及・啓蒙にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査・モニタリングについては西日本での広域調査を除いてほぼ予定通り実施できており、日単位降水アイソスケイプモデルの構築・検証は予定以上に進んだ。また、その他の解析や各種モデルの性能向上も進んでおり、投稿論文の準備も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大幅な修正の必要はないが、広域調査については未だ新型コロナ感染症の収束が見込めないため不確定要素が残る。ただし、日単位降水アイソスケイプモデルは予想以上に性能が良く、少なくともδ値については過去数十年分について有意義なデータセットを提供できる可能性が高まっている。
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Research Products
(2 results)