2020 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative analysis in Japanese Local Politics
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19H01453
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
名取 良太 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60330172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 晶 関西大学, 政策創造学部, 准教授 (50712072)
中谷 美穂 明治学院大学, 法学部, 教授 (60465367)
築山 宏樹 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (60800480)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方自治 / 地方議会 / データベース / テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
①データ整備:2019年度の実績報告書において2020年度に行うと記した滋賀県・奈良県・和歌山県下の自治体議会データを収集した。ただしデータクリーニングならびにデータベースへの格納作業まで完了できず、この点は2021年度上半期に完了予定である。 ②データ分析:議会審議そのものを対象とした分析を行ない、下記のような知見を得た。 ・政治家の年齢と政治的立場の関係は、かならずしも定量的に分析されてこなかったことから、高齢の政治家と若手の政治家で発言内容にどの程度の違いがあるのかを分析したところ、高齢の政治家の発言と若手の政治家の発言は、部分的に一致しているところはあるものの、全体としては有意に異なることを明らかにした。 ・政令指定都市における維新首長と、中小規模都市における維新首長には、議会基盤の強弱という大きな違いがある。分析の結果、中小規模自治体におけるネガティブ発言の割合は、大規模自治体よりも多く、首長のもつ議会基盤の弱さが議会における否定的発言の多さに結びつくことが明らかになった。 ・市長の多選化は、市政運営が馴れ合いとなり、政策のイノベーションを図りにくいことや、市長の政治的基盤が強固になるため議員が積極的に反対の立場につきにくいことが問題視されてきた。しかし、市長の当選回数ごとに議員発言のネガポジ分析を行った結果、新人市長を有する議会の方がポジティブ発言が多く、反対に多選市長を有する議会では批判的な態度を示す傾向が強いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集とデータベース構築に関しては、概ね研究計画書記載通りに作業が進んでいる。具体的には近畿6府県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)のデータ収集は完了した。ただしデータ量が増えたことからクリーニング作業に少々時間を要しており、データベース格納作業は2021年度上半期までずれ込んでいる。 データ分析に関しては、2019年度の実績報告書に記載した、①委員会主義を採用しているか否かが議会の議案に対する影響力を規定する、②議員の政策位置のバラツキが議会の一体的投票による可決を困難にする、という仮説の検証までは至らなかった。この原因は、議員別・議案別賛否データの整備を完了させられなかったことにある。 しかしながら、上記研究実績の概要に記した通り、議会審議そのものを対象とした分析は着実に進めており、想定していなかったいくつかの知見を得られている。これらの知見と、2021年度に整備する賛否データをつなげていくことで、研究申請時よりも広い観点から地方議会の活動を明らかにできると考え、現時点の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集・格納について、2021年度上半期は、滋賀県・奈良県・和歌山県下の自治体議会データのクリーニング作業とデータベースへの格納する作業を進める。また鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県の自治体議会データの収集を期間後半から開始する。研究活動については、申請書に記したうち、次の項目について分析を進めていく。①委員会主義を採用しているか否か:2020年度に行なうことを予定した分析である。委員会での審議が活発になると、議員の専門化が進み政策的影響力が強まる。その結果、議案の事前審査過程で議員の政策選好が反映されるため、議決権を行使する必要がなくなる。したがって、議案の委員会付託率(委員会主義の程度)が高いほど、影響力が顕在化しなくなるという仮説を立て、検証する。②議会内役職配分の安定性:議会内の役職配分ルールが安定的であれば、議員は議会内で協調的に行動し、役職に就いて政策的影響力を強めるという選択をする。ルールが安定しない場合、議員は、別の手段で政策的影響力を強める必要がある。このことから役職配分ルールが安定的であるほど、影響力が顕在化しづらいという仮説を立て、検証する。 とくに重点的に取り組むのが、これらの分析を行なうために議案の委員会付託率や、議員別議案別賛否データを整えることである。このデータの整備を完了させ、2019年度および2020年度に行った諸分析と結びつけ、研究計画書に記した「日本における大統領制(二元代表制)のメカニズム」、すなわち大統領制では、議院内閣制に比べて議会の影響力が顕在化しやすいにもかかわらず、市議会の影響力がほとんど顕在化していない要因を説明し、大統領制のメカニズムについて新たな知見を提供していく。
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Research Products
(3 results)