2021 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative analysis in Japanese Local Politics
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19H01453
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
名取 良太 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60330172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 晶 関西大学, 政策創造学部, 准教授 (50712072)
中谷 美穂 明治学院大学, 法学部, 教授 (60465367)
築山 宏樹 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (60800480)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方自治 / 地方議会 / データベース / テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
①データ整備:2021年度中に滋賀県・奈良県・和歌山県下の自治体議会データに、データクリーニングを完了させた。またすでに収集済みの大阪府・京都府・兵庫県下の自治体議会データについて、2019年度から2021年度分を追加収集した。さらに中国地方5県下自治体について2011年度から2021年度分の議事録データの収集を終えた。 ②データ分析:議会審議そのものを対象とした分析を行ない、下記のような知見を得た。 ・当初は厳しい対立関係にあった市長と議会でも、市長が当選を重ねると、徐々に一般的な首長-議会関係のような協調的な関係になるのかを分析した結果、市長の在職年数が長くなるにつれ、議会からのネガティブ発言の割合は低下し、協調していく傾向があることを明らかにした。ただし多選市長に対してはネガティブ発言が多くなる傾向もあることから、二次関数的な関係があることも予測された。 ・50代後半の市長から、20代後半の市長に交代した自治体を対象として、市長の年齢と議会の反応の間に、どのような関係が見られるかを分析した結果、若い市長に対しては、議会全体としてより好意的な態度を示していることと、50代後半の市長に対しては50代以上の議員がより対向的な態度を示していることが明らかになった。 ・議員の年齢構成と審議内容の関係を、自然言語処理技術を通じて分析した結果、同じ時期であっても、平均年齢の高い議会では「福祉行政」「認知症」「福祉避難所」「敬老会」など高齢者に向けた発言が多く見られた一方、平均年齢の低い議会では、「病児保育」「遊具」「避妊等」「乳児」など子供たちや育児関連の発言が多く見られており、議員の年齢構成を反映した審議が行われていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集とデータベース構築に関しては、概ね研究計画書記載通りに作業が進んでいる。具体的には近畿6府県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)下の自治体議会データの収集ならびにクリーニング作業を完了させた。また、すでに収集済みの府県について、年度の経過によって追加されたデータについても収集とクリーニング作業を完了させた。さらに、計画書には掲載しなかった中国地方5県下の自治体議会議事録についても10年分の収集を完了させた。 データ分析に関しては、上記研究実績の概要に記した通り、議会審議を対象とした分析は着実に進捗している。性別・年齢別・会派別の発言単語の特徴や傾向を明らかにすることや、ネガ・ポジ分析を通じた市長と議会の対立・協調関係のありようについては、分析結果が蓄積されている。また、クラスター分析を用いて、所属会派と政策ポジションに関しても、人口規模の大きな自治体の方が、規模の小さな自治体よりもそのバラツキが少ないことや、議会選挙が行われた年よりも、2年後、3年後の方が凝集性が高い(所属会派と政策ポジションが一致する)ことなどが明らかになっている。 2022年度には、これらの知見と、議案ごとの賛否データや、委員会主義を採用しているか否かなどのデータと繋げ、当初の申請書に記した比較大統領制研究の視点から地方議会を明らかにすることができると考え、現時点の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集・格納について、2022年度上半期は、近畿6府県の全てのデータを、データベースシステムに格納するとともに、インターフェースも構築し、地方議会データベースを完成させ、10月ごろを目処にパイロット版の公開、年度内に本公開を行なう。なお、2022年10月には、このデータベースシステムを日本政治学会2022年度大会にて発表することが決まっている。 研究活動については、申請書に記したうち、次の項目について分析を進めていく。①各自治体における議案の委員会付託率データを用いて、委員会付託率が高い自治体ほど、議決時の賛成率が高くなる、②議長・副議長といった議会内の役職が、会派間で安定的に配分されている自治体議会では、議決時の賛成率が高くなる、③所属会派と政策ポジションの乖離が大きいほど、議決時の賛成率が低下するなど、議会における審議過程を表すデータと、議会のアウトプット(議案の審議結果)を繋げて分析する。それを通じて研究計画書に記した「日本における大統領制(二元代表制)のメカニズム」、すなわち大統領制では、議院内閣制に比べて議会の影響力が顕在化しやすいにもかかわらず、市議会の影響力がほとんど顕在化していない要因を説明し、大統領制のメカニズムについて新たな知見を提供していく。その研究成果は、一冊の書籍にまとめ、発表する予定である。
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Research Products
(7 results)