2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Salafism in South East Asia: its thoughts, movements and institutionalization
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19H01462
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
河野 毅 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (10361883)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サラフィ主義 / インドネシア / マレーシア / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度(3ヶ月の繰越金で実施した海外委託調査含む)は以下の研究実績がある。(1)業績の出版:著者 Kohno, Takeshi; Makruf, Jamhari; Wadi, Julkipli; Abdullah, Kamarulnizam, タイトル Salafism from Ideas to institution, ジャーナル名 Impact, Volume 2020, Number 8, December 2020, pp. 9-11(3) 概要: どのようにサラフィ主義が中東から東南アジアに伝播して、東南アジアに制度化されたのかを議論し、研究の価値を説明した現状の研究を紹介するインタビュー記事。 (2)2020年からの繰越金(1,657,200円)による研究実績 2021年2月までに完了する予定であった海外調査委託が、新型コロナウイルス感染症の拡大で、現地のデータ情報収集と現地調査・報告書の取りまとめが遅れたため、完了時期を3ヶ月延長し、インドネシア国立イスラム大学イスラム社会研究所への委託調査を実施した。(1)インドネシア:中部ジャワ州を中心に、Al Ukhuwah寄宿塾、Al Madinah寄宿塾、Darussalaf寄宿塾、Ibnu Abbas寄宿塾、Imam Bukhari寄宿塾、Isy Karima寄宿塾のデータ収集。Dakwah Al-Minhaj誌の調査。(2)マレーシア:ケダ州主要寄宿塾(Maahad tahfiz, Madrasah)のデータ収集。(3)フィリピン:ダバオとマラウィ市のイスラム寄宿塾のデータ収集。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の遅れは新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、日本はもとより研究対象国のインドネシア、マレーシア、フィリピンでの地域的な行動制限がかけられ、さらに同国間の渡航も不可能となった結果である。特に、調査対象国の主要図書館の閉鎖と接触制限による規制の影響は大きく、海外の研究者との交流のみならず、調査対象国現地での知見交換は難しくなった。その結果、研究活動はオンラインを通じ、研究活動を継続し、できる限りの現地調査を現地の研究者に委託する形式をとり、インドネシア国立イスラム大学イスラム社会研究所(Pusat Pengetahuan Islam dan Masyarakat)を主管にしてインドネシア(中部ジャワ州)、マレーシア(クダー州、クランタン州)、フィリピン(ミンダナオ・ダバオ市)を中心にできる限りのデータを収集することとした。そのデータとは(1)サラフィ系イスラム教育機関(小中学校レベル)数、(2)同予算関連データ、(3)同教職員数、(4)同生徒数、(5)同カリキュラム内容である。一方、各国のデータには、その取り方と定義に大きな違いがあり、さらに、地域によっては国家による管轄力がほとんどない地域もあり、データ収集が不可能な状況であるばかりか、インタビューで得たデータであってもその信憑性の欠如もあり、単純な比較はできないことが具体的に明らかとなった。しかし、基礎資料としての価値は十分認められ、今後の研究の深化に役立つと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の研究推進方策は、以下の である。ただし、新型コロナウイルスの感染の行方によっては、計画を変更する余地を残す事とする。第1に、3ヶ月の繰越金で実施した海外委託調査の結果を取りまとめつつ、欠損している部分を割り出し、今後の現地調査につなげる。今般のデータ収集では、サラフィ主義の定着過程の歴史的な経緯についてのデータは極めて少ないため(インドネシアの中部ジャワ州のデータが少々歴史的な経緯に触れている)、マレーシアとフィリピンの歴史的な経緯についてさらに調べる必要がある。また、収集したデータで登場する個別名の社会的つながりは非常にわかりにくく散発的な情報であるので、現地社会のコンテクストの中で、その社会的意味を割り出す必要がある。第2に、論文出版を念頭に、当該3カ国におけるイスラム社会と国家との関係を整理していく必要がある。特に、フィリピンは国家運営に置いてカトリックの力は強く人口構成においても多数派であるためイスラム社会は辺境に追いやられ歴史的にも軽視され続けてきた事情があり、それはイスラム教徒人口が多数派であるマレーシアとインドネシアとは対象的である。そのため、サラフィ主義の定着過程もフィリピンにおいてはマクロレベルで特殊な事情があると想定できる。しかし、その特殊事情が何か、さらにマレーシアとインドネシアと比して共通点は何かを整理して説明する必要に迫られている。よって、マクロレベルでの説明を論文として出版することを予定している。
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