2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Salafism in South East Asia: its thoughts, movements and institutionalization
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19H01462
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
河野 毅 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (10361883)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サラフィ主義 / インドネシア / マレーシア / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績 (1)2021年8月26日に第12回国際アジア研究会議(ICAS)において研究発表を実施した。(2)3カ国のの研究者と共に、隔月でオンライン会議を実施。(3)論文を2021年12月に国際ジャーナルに出版した:Takeshi Kohno, “To Combat Extremism, How to Frame Religion Matters: Southeast Asia in Comparative Perspective” Studia Islamika Vol. 28, No 3 (2021) https://doi.org/10.36712/sdi.v28i3.23955(概要)インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピンは共に植民地から独立した国家で、同時に宗教的にも文化的にも地理的にも多様な国民を抱える多民族国家である。本論文では、宗教的過激主義と闘うためには、その政府は国家と宗教の関係をどのように位置付けるかで、その対応が変わってくるため、国家と宗教の関係を理解することが肝要である。マレーシアとシンガポールでは宗教問題は人種問題であると定義し、人種間融和の観点から宗教政策を実施している。その結果、国家は人種間融和政策を通じて宗教に介入しやすい。一方、インドネシアとフィリピンは、宗教は個人に所属するものであり、その結果、国家による宗教問題への介入が比較的難しいという課題がある。特にフィリピンでは、地理的にも辺境に住居するイスラム教徒の社会に対する過去の政策の失敗があり、国家に対するその住民の不信感が、国家と宗教の関係をさらに隔離されたものとしている。以上の特徴は、2001年9月11日の米国における連続テロ事件への対応に現れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年間以上継続する新型コロナウイルス感染拡大の影響は、調査対象となっているインドネシア、マレーシア、フィリピンの現地調査を難しくしている。日本からの現地渡航は非常に難しく、同時に現地の研究者と研究機関の活動も厳しく制限された。特に、調査対象国の主要図書館の閉鎖と接触制限による規制の影響は大きく、海外の研究者との交流のみならず、調査対象国現地での知見交換の難しさは過去に見られないものであった。東南アジア3カ国の当局の対応も不確実性が多く、それは政府機能の困難さに追加して、地理的な要因も大きい。フィリピンでは、本研究の対象地域であるミンダナオ島の感染状況の正確な数字は不明であり、マレーシアではマレー半島北部(特にクダー州、クランタン州)の感染拡大時はロックダウン(movement control order)が実施された。インドネシアの研究対象地域である中部ジャワ州・ジョクジャカルタ州も厳しい行動制限がかけられた。と同時に、日本の感染状況も厳しいものがあり、外国人研究者の入国制限は継続した。その一方、できるだけの活動はオンラインを通じ進め、さらに参考図書の購入を通じ、研究活動を継続し、2021年には論文を国際的専門誌に投稿・出版し、国際学会での発表を実施したところである。その結果生じた研究費の未使用分は国庫に返納することとした。よって、本研究のこれまでの進歩状況は、コロナ禍を想定していなかった2019年時点から急速に低減したことは否めないが、その研究目的の重要性は変わらず、これからの研究活動の積み重ねとして研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年は、コロナ禍が継続する状況での研究を想定するが、各国における規制緩和の流れも注視しつつ、研究推進につながる資料収集と整理に注力し、成果のとりまとめをしていく。具体的には、2021年に収集したデータをもとに、2023年始めを目処に本国における国際会議を開催する。会議への招聘者は、研究対象の3カ国に加え、シンガポール、さらに豪州・米の研究者の参加を得たい。そのために、可能な限りの研究会をオンラインで開催しつつ、サラフィ主義の拡散の過程を(1)歴史的な経緯からの視点、(2)制度化過程からの視点に分けて議論を深める。この研究成果は出版へとつなげるものであることを想定して、2023年初めの国際会議を企画する。時系列には、6月中に東南アジア3カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン)の研究者とともにオンラインで研究会を開催し、最終年度の研究計画の方向性と後ろ倒しの可能性について確認する。8月中に同じくオンライン会議を開催し、出版計画を決定する。以降12月までは論文(または章)の執筆。2023年1月は推敲を進め、可能であれば上記の国際会議の開催を実施する。ただし、コロナ禍中での研究計画であるので、感染拡大と各国政府による移動規制の状況によっては、国際会議の開催は不可またはオンラインでの可能性もあり、加えてJSPSの規定内で計画を後ろ倒しにする可能性についても留意しつつ研究推進は柔軟に対応する予定である。
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