2019 Fiscal Year Annual Research Report
少子高齢化とマクロ経済:社会保障制度改革とライフサイクルにおけるリスクと生産性
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19H01465
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北尾 早霧 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50769958)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医療費の不確実性 / 世代重複型モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
第一の研究テーマである、医療・介護費用の不確実性と福祉制度を明示的に取り入れた包括的な社会保障制度分析に関しては、Kitao(2015,JEDC), Kitao(2014,RED)等で用いられた世代重複型のマクロモデルをベースとして、新たに医療費リスクを組み込んだモデルを構築した。また、医療費に加えて年金・医療保険・介護保険制度および福祉制度を導入した。医療リスクについては、年齢・性別などの属性に応じた医療費の変遷を動学的マクロモデルのカリブレーションインプットとして用いる必要があり、東京大学市村研究室の協力のもとミクロデータの分析と推計作業を進めている。介護費用についても、より詳細なカリブレーションをすべく複数の分析手法を検討しつつ、介護給付費等実態統計の集計データを用いた年齢・性別ごとの介護支出をとりまとめ、モデルのインプットとして活用している。
第二のテーマである、高齢化社会における人的資本形成と労働参加を内生化したモデルによる社会保障制度改革と中長期的な生産性の分析に関しては、先行研究に基づき数量計算で用いるモデルの構築を進めている。Heckman, Lochner and Taber (1999,RED)やKitao, Ljungqvist and Sargent (2019)などと同様、ライフサイクルにおける人的資本形成を内生的に組み込んだモデルをベースとし、日本の労働市場において観察される雇用形態・年齢・性別などによって異なる賃金構造と労働参加を取り入れたモデルの検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に沿って動学的マクロモデルの構築を進め、数量分析に必要なカリブレーションの作業を行っている。医療費データに関しては、既存研究に加えて詳細なミクロデータでの分析を行うことに時間を要しているが、より精緻な分析を行うことが可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一のテーマについては、医療費のミクロデータのとりまとめを進める。介護費用についても介護給付費等実態統計などの集計データに基づいた分析を行う。ベースラインとなるモデルを構築・カリブレートした後、シミュレーションを行って政策の変更や様々な感度分析を行う段階に進めたい。研究の主な概要と暫定的な分析結果を入手次第、カンファレンスやセミナーでの発表を積極的に行い、論文の改訂に活かしたい。 第二のテーマについては、人的資本投資を組み込んだ世代重複型一般均衡モデルのカリブレーションを進め、政策の変更によるマクロ経済全体の生産性や厚生に与える影響を分析する。
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