2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studying Economic Value of Landscape through Psychological Experiments
Project/Area Number |
19H01490
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
田島 夏与 立教大学, 経済学部, 教授 (50434197)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横澤 一彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20311649)
浅野 倫子 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (40553607)
一ノ瀬 大輔 立教大学, 経済学部, 准教授 (80458926)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 景観 / 認知心理学 / VR(仮想現実) / 環境評価 / 表明選好法 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林・海岸や緑地といった環境の価値を評価するにあたって、アンケートを用いて非市場的な価値への支払い意思額を評価する表明選好法が開発されてきたが、その妥当性については未だに議論が多い。特に、評価対象に関する情報を如何に正確にアンケート回答者に提示するかという点は表明選好法を用いる際の大きな課題となっている。本研究においては実験参加者が評価の対象となる環境を三次元で疑似体験することを通じて環境財の持つ価値を定量的に評価する手法を考案し、これが二次元で情報提示する場合と比較して妥当性が高い評価を可能にするのかを明らかにするため、3つの軸にしたがって研究を進めた。 第一に、経済学チームが主導して森林や海岸などの自然景観や都市の屋外空間の経済的な価値の評価手法についての広範な検討を行ったうえで、表明選好法を用いて屋外空間の環境保全に対する支払い意思額を定量的に評価するための指標及び評価手法の開発を行った。また、Lopez-Mosquera and Sanchez (2012)を参考に計画行動理論に基づいて支払い意思額を説明するための心理指標と評価手法についても心理学チームと共同して開発を進めた。 第二に、心理学チームの主導により、画像などの視覚情報が価値の評価にあたって重要な役割を果たす環境財について、これまで二次元の画像で提示されるのが常であった評価対象についての情報をVR技術によって三次元化し、実験参加者が能動的に評価対象に関する情報を得る環境を構築する手法を開発し、その環境と自己の身体との関係をどのようにとらえているのかを明らかにした。 第三に、考案した評価手法の妥当性を検証するための実験参加者を対象とした実証研究の実施に向け、各種素材(実験刺激とするVR映像等)の作成、設備・機器の準備やプログラミングを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の軸において、良好な屋外環境を保全する必要性やその経済価値評価の枠組みについて整理するとともに、顕示選好と表明選好を含むその評価方法についてこれまでの研究動向を整理した。特に表明選好の既存の研究においては情報が二次元の静止画または動画で提示されていることに着目し、本研究においては実験参加者が視点が固定された2次元の画像を与えられたときと、3次元情報を持った画像が与えられて実験参加者がその3次元空間内から能動的に情報を取得したときでは環境に対する評価にどのような違いが生じるのかに着目して研究を進めることとし、このために必要な評価指標と質問紙等の評価方法の開発を行った。屋外環境の経済評価の枠組みについては日本不動産学会誌に論説として発表した。 第二の軸については、屋外空間の映像をVR技術によって三次元化し実験参加者に提示する設備・環境を整備するとともに、仮想空間の中で実験参加者が自己の身体の状態(視点の高さや身体の大きさ)をどのように認知しているのかを明らかにする研究を行った。この研究成果は日本基礎心理学会(優秀発表賞を受賞)と国際会議で報告を行った。これらの内容をまとめた論文は2020年3月末時点で国際学術誌に投稿、審査中である。 第三の軸は、第一の軸で開発した手法を用いて実験参加者を対象とした実証研究を行い、環境に対する支払い意思額の評価がより妥当性の高いものとなっているかを検証するための実装プロセスである。概ね準備を整えることができたが、実際に実験参加者を対象としたデータ取得を行うには至らなかったため、進捗状況として(2)おおむね順調に進展していると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
屋外空間の景観など、環境に関する情報の一部を視覚情報として与え、その価値を定量的に評価する手法をこれまでの研究で開発したが、今後はこの手法の妥当性を検討する実験と、そこで取得したデータの分析に本格的に取り組む。今後の研究は下記の2つの問題意識を中心に進める。 (1)従来の表明選好法の手法では、評価対象となる環境等の2次元画像を見せ、アンケートを用いて非市場的な価値への支払い意思額を評価するという手続きがとられる。このような手法の妥当性を検討するため、視点が固定された2次元の画像を与えられたときと、3次元情報を持った画像が与えられ、実験参加者がその3次元空間内から能動的に情報を取得した場合では環境に対する評価にどのような違いが生じるのかを、支払い意思額と心理的な評価指標の両面から検証する。 (2)3次元で疑似環境を体験することが、現実に対象となる環境を経験する場合の代替になり得るか、という問題意識を設定する。現実の環境の空間内に身を置く条件と、同じ空間を360度カメラを用いて撮影し、その画像をVRゴーグルを用いて参加者に見せて仮想的に環境を経験させる条件下とで、環境に対する支払い意思額や心理的な評価がどのように変わるかを検討する。実験参加者が評価対象となる環境を三次元で疑似体験し、それを通じて環境財の持つ価値を定量的に評価するという手法の妥当性を検討する。 2020年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大とその対策のため、実験室実験を行うにあたって様々な困難が予想される。そのため上記の(1)は、スマートフォンやPC上に3次元画像を表示できるアプリケーションなどの比較的簡便な設備を用いてオンライン調査の形で実施する等の工夫をする必要があると考えている。最終年度となる2021年度に向け、研究成果を順次研究会・学会等で報告し、学術論文としてまとめ、公刊する。
|
Research Products
(3 results)