2020 Fiscal Year Annual Research Report
Re-examination of Macroeconomic Policies: The Case of Heterogeneous Agents
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19H01493
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三野 和雄 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (00116675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒渡 良 同志社大学, 経済学部, 准教授 (20547335)
堀 健夫 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80547513)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 企業の異質性 / 経済成長 / 政府規模 / 政府債務 / 借り入れ制約 / 資本移動 / 金融ショックと実物ショック |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)企業の異質性が存在するもとでの政府規模と経済成長の関係:公共投資と企業のR&Dを含む内生的成長モデルを設定し、政府規模と長期的な経済成長率との関係を調べた。その結果、企業が同質のときは政府規模と成長率の間には通常の逆U字型の関係が得られるが、企業に異質性があれば、政府規模と成長率の関係は政府支出がGDPに占める割合が現実的な値をとる範囲の大半においてほぼ無関係になることを解析的かつ数量的に確認した。この結果は、これまでの実証研究が統一的な見解を示せていないことの理論的な根拠になり得る。研究結果は論文にまとめ、現在投稿・審査中である。 (2)借り入れ制約と企業の異質性を含む2国モデル:企業が生産効率の面で異質性があり、投資資金の借り入れに制約を受けるような2国モデルを設定し、資本移動があるもとで両国間の資産と資本がどのように分配されるかを検討した。借り入れの担保が企業家の純資産であるという仮定の下では、各国の全要素生産性は、生産技術だけではなく、両国間の資産の分配状態にも依存する。この場合、外国で生じた金融ショックと実物ショックが本国の生産活動にどのような影響を与えるかは、同質企業と金融市場の完全性を仮定した標準的な2国モデルとは大きく異なる。この研究では、主要な差異とその経済的意味づけを詳細に分析した。主要な結果は論文にまとめ、現在投稿・審査中である。 (3)借り入れ制約と企業の異質性が存在するもとでの政府債務と経済成長の関係:国債が企業家の純資産に含まれる場合、政府債務の増大は借り入れ制約を緩め企業の投資を促進するクラウド・イン効果を持つ。この設定のもとで、政府債務・GDP比率と長期的経済成長率の関係を解析的かつ数量的に調べた。そして両者の関係は、政府が財政規律を守るか否かによって大きく異なることを示した。研究結果は論文にまとめ、現在投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの蔓延防止の規制により、海外で開かれる学会や研究集会へのリアルでの参加、海外の研究協力者の短期招聘、研究分担者と国内の研究協力者との対面での共同研究や打ち合わせがこの2年間まったく実施できなかった。オンラインでの海外の学会やセミナーへの参加は可能であったが、海外の研究者たちと直接話し合ったり、知己を得る機会がなかったことは研究を遂行する上でかなりの制約になった。 それでも既に骨格ができあがった論文の作成は海外の研究協力者も含めオンラインの打ち合わせによりほぼ順調に進んだが、新しいテーマに関するアイデアの交換や細かい議論は、オンラインでは対面でホワイトボードに直接数式を書きながら相談するような訳にはいかなかった。そのため、研究計画の後半で研究を予定していたテーマである家計の異質性が存在する場合の財政・金融政策の効果の分析と経済主体の異質性が存在する場合の最適政策の検討が、当初の計画よりは遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染は収束していないが、現在中国以外の多くの国がコロナとの共存を前提に規制の緩和や撤廃を行いつつあるから、これまでの制約は今後緩まると予想される。その機会をとらえ、やや遅れている残りの研究テーマについても、実質的な成果があがるように研究を進めたい。具体的には以下のように計画をしている。 (1)家計の異質性を前提とした2国モデルの分析:家計の異質性を前提とした動学的ヘクシャー・オーリン型モデルを用いて、国際貿易が2国間の資本の分配と各国における家計間の所得と資産の分配にどのような影響を与えるかを検討する。その際、家計が非相似型の効用関数をもち外生的なショックがないモデルと、家計の効用関数は相似型であるが家計固有の外生的ショックを受けるモデルの両方を分析する。前者については基本的な計算はほぼ終わっているが、経済的な解釈や政策的な意味づけはこれから研究する予定である。後者のモデルにつては、モデルの設定がほぼ終わった段階であり、今後さらに研究を進める。 (2)企業の異質性と資本移動を考慮した2国モデルの分析:Melitz型の国際貿易モデルと国際マクロ経済学の基本的なフレームワークを融合し、国際間の貸借があるもとでの異質企業を含む貿易モデルを検討する。基本モデルの設定はほぼ終わっているが、詳細な分析はこれからである。 (3)財政政策と金融政策の相互関連を考慮した異質企業を含む成長モデルの分析:これまでの研究した政府債務と経済成長の関連を扱うモデルを拡張し、財政支出の一部がマネーファイナンスされる場合を分析する。これは最近の日本銀行の国債保有残高の急増を考えると、現実的な視点からも検討されるべき問題である。モデルの設定と分析するべき問題について現在検討中であるが、残された研究期間中に政策上有意味な分析結果を得ることを目指す。
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Research Products
(8 results)