2019 Fiscal Year Annual Research Report
競売法制改正による権利配分と取引費用の変化:執行妨害と落札価額への影響の実証分析
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19H01501
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
井出 多加子 成蹊大学, 経済学部, 教授 (30245930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 修平 公益社団法人都市住宅学会(都市住宅研究センター), 都市住宅研究センター, 研究員 (00727852)
福井 秀夫 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60251633)
森岡 拓郎 政策研究大学院大学, 政策研究科, 講師 (80725507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不動産競売 / 占有者保護 / 価格設定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、不動産競売に関する制度と運用の課題を検証するため、データの収集と整理、ならびに実務家と関連団体に対するインタビューを実施した。
国内データの収集については、これまでの研究を踏まえて、東京地方裁判所および大阪地方裁判所で公開されたマンション物件のデータを収集するとともに、東京都内の類似物件の一般取引に関するデータも併せて整備に取り組んだ。国内の実務家と関連団体に対するインタビューからは、過去の制度改正の影響と現状での課題を中心に意見を交換した。日本では過去の複数回の制度改正によって占有者の権限が整理され、取引リスクは軽減したものの、依然取引のリスクは高く競売市場の物件数は持続的に減少している。また、関連団体とのインタビューでは、事前内覧が極めて限定的なため、裁判所から提出される複数の現場写真などで内装について一定の情報は得られるものの、構造に関する重要な情報は写真から推察できず、取引には依然として大きなリスクが伴うとの意見が示された。一般不動産取引ではデューデリジェンス制度が始まったため、この制度を不動産競売にも広げていくことが必要と思われる。関連団体では、取引希望者のために、リスクを軽減する方法や市場動向に関する情報の提供がわかりやすく提供されており、購入者の立場から不動産取引の情報提供について重要な示唆が得られた。
海外での制度と運用に関する調査研究であるが、マレーシアの弁護士事務所と国税庁を訪問し、現地での不動産競売等に関する制度と実施件数などについてインタビューを実施した。占有者保護が強いことや事前内覧ができないことなどの点で日本の制度との類似点がいくつか見られたが、裁判所と債権者の役割などの重要な相違点がみられた。以上から、今後の分析の方向性と政策提言に関して重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マレーシアの調査では、現地で不動産競売やマクロ経済環境に関する時系列データをさらに収集する予定であった。また他国においても、制度と現状を調査する計画であったが、新型コロナウイルス拡大で海外調査が実施できなくなったため、予定より研究がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、引き続き不動産競売に関する国内データの収集、整理ならびに分析を実施する。諸外国での現地調査については、新型コロナウイルス拡大が収束し、海外渡航制限が緩和されたのちに、研究計画に沿って行う予定ではあるが、現段階で調査がいつごろからどの程度の規模で実施できるか不明であるため、海外データの収集や一部の調査についてはインターネットでの情報収集なども活用していきたい。
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